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「クリエイティブ」の意味の変化|VIVA TECHONOGY 2018レポート

HEART CATCH 西村 真里子

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世界最大級の広告代理店Publicis(ピュブリシス)は、2017年、慣習化している『カンヌライオンズ』への賞エントリー参加を2018年は取りやめると発表した。カンヌライオンズへ費やしていた費用を人工知能活用HR/コラボレーション・プラットフォーム開発に当てるために、だ。実際のところカンヌライオンズ2018にピュブリシスはセッション参加し、賞もエントリーしている。ただ、セッションで発表していたのは2017年に宣言した通りの人工知能プラットフォーム「Marcel(マルセル)」について紹介するものだった。

その「歴史的な広告クリエイティブの祭典」であるカンヌライオンズでのピュブリシスでの存在とは違い、「まだ3年目のオープンイノベーション、テクノロジー、スタートアップの祭典」である『VIVA TECHNOLOGY』ではピュブリシスは非常に大きな存在を示していた。仏経済誌Les Echos(レゼコー)と共に主催を務め、スーパーバイザー会長(※)のモーリス・レヴィはFacebookマーク・ザッカーバーグやAlphabetエリック・シュミットとのトークショーをモデレートする。テーマは GDPRや人工知能について、である。それは、あたかもピュブリシスは広告クリエイティブ企業からITテクノロジー企業へシフトしていることをアピールするかのようでもあった。デジタルトランスフォーメーションを積極的に活用することがクリエイティブであるともモーリス・レヴィの態度から受け取れる。

(※)モーリス・レヴィのタイトルはCHAIRMAN OF THE SUPERVISORY BOARD PUBLICIS GROUPE としてVIVA TECHNOLOGYで紹介されていた。

しかも、モーリス・レヴィ、さすがは広告代理店のCEOを30年勤め上げただけある。セッションのモデレートの仕方も非常に上手である。エリック・シュミットのセッションでは人工知能の進化について対談するものだったのだが、そこで人工知能慎重派として有名な イーロン・マスクについて「イーロン・マスクは間違っている」とエリック・シュミットに壇上で言わせたのである。元Google/現Alphabetのエリック・シュミットがテスラ/SpaceXのイーロン・マスクを批判した、というニュースはすぐにメディアで話題になった。壇上に立つだけではなく、ニュース性のある発言をさせメディア化までもっていくところもさすがは広告代理店の会長の手腕である、と会場席から思わず唸ってしまった。

<エリック・シュミット(左)とのセッションを仕切るピュブリシス会長モーリス・レヴィ(右)>

さて、カンヌライオンズの賞エントリーに費やしていた予算を活用して開発すると宣言されていた人工知能プラットフォーム「Marcel(マルセル)」とはどのようなものだったのか?
VIVA TECHNOLOGY 2018初日である5月24日にお披露目になったマルセルだが、その内容は 8万人の従業員を結びつけ、自分たちと顧客のために仕事のやり方を完全に改革するものであると発表された。具体的にはある案件が発生した時に世界中にいる8万人の従業員のなかから最適なメンバーをチーム化していくのである。いままでの「部署」という単位を壊し、クライアントのニーズにあった提案を組めるチームを8万人から選び出していける最高のHRシステムなのである。機能詳細はこのYouTubeビデオを見るとイメージが掴めるだろう。

昨年 VIVA TECHNOLOGY 2017に登壇したTreasure Data堀内氏からこの「Marcel(マルセル)」の構想を聞いた時に「広告代理店の未来の形が見えるかもしれない!」と、非常に驚いたことをいまでも覚えている。そのため、VIVA TECHNOLOGY 2018で要チェック項目としてリストしていたのはピュブリシスブースにマルセルを見に行くことであった。マルセルは人工知能プラットフォームなので、マルセルの操作画面が展示されているブースを期待してピュブリシスブースに遊びに行ってみた。
そこでさらなる衝撃を受けたのであった。

なんと、マルセルのデモ展示が全く無いのである。マルセル発表ブースとしてピュブリシスの社員が紹介してくれたところは、まるでおもちゃ箱のようなカジュアルな場所であった。バーカウンターと、ゲームが並んでいてみんなが楽しそうに過ごしている。

しかも「Marcel(マルセル)」を全面に押し出すのではなく、コードネーム的な「ARTHUR(アルチュール)」という名前を前面に押し出している。
多分たくさんの伏線があるのだろうが、全部理解はできなかった。ただ、ディスプレイ上に存在する人工知能プラットフォーム「マルセル」を期待してブースに行った人間としては、大きく肩透かしをくらった気持ちになったことだけは理解してもらいたい。

さて、気を取り直してこのブースではどのような展示があるのか?改めてスタッフに聞いてみた。そこでは、ハッシュタグ付でソーシャルメディア投稿を
するとそのブースで有効な”ライオニウム・コイン”がもらえるというキャンペーンを実施していた。ライオニウムという(カンヌ)ライオンにかけたコイン名で人工知能プラットフォームについてソーシャルメディアに投稿すると、ライオニウム・コインがもらえるのだ。

しかも、その景品というのが皮肉なことに、カンヌライオンズの金獅子なのである。

世界中の広告クリエイティブに関わる人間が年に一度のカンヌライオンズ・クリエイティブ賞を目指しているその傍ら、その金獅子をソーシャルメディアキャンペーンのプレゼントとして いるというのだ。

皮肉であると同時に、強い衝撃を受けた。

イノベーションは継続的な過去からの延長上にはなく、ダイナミックな舵取りをして興すべきであるとピュブリシスの態度からヒシヒシと感じる。同時に、クリエイティブの意味も変化してきていることを実感した。ストーリーテリングで人々の感動から購買欲求を促すだけではなく、新しい価値を提案する強気のサービスや商品で生活者の「価値観」そのものを変更することが新たなクリエイティブなのではないか?優しい生活者への寄り添いよりも、激しく半ば強引な「意味性」を提案できる企業やチームこそ現在の「クリエイティブ企業・チーム」なのではないか?

VIVA TECHNOLOGY主催のピュブリシスのデジタルトランスフォーメーションへの覚悟は、慣習からの脱却を行い次世代に向けてアップデートする一つの大きな事例であると考える。ピュブリシスに倣うだけではなく、次の大きなジャンプをするのはどの業種のどの企業なのか?世界中の事例にさらなるアンテナを向けていたい。


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