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データクリーンルームの可能性と活用法

電通・電通デジタル × トレジャーデータ CROSS TALK|
トレジャーデータと電通が駆動させる、DXのエンジン #8

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「Cookieフリー時代」に企業はこれからどう対峙していくのか、マーケティングやデジタル広告はどう変わっていくのか。

企業にCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を提供するトレジャーデータと電通グループが、企業のDXについて情報発信する本連載。

今回のテーマはプライバシー保護とマーケティング課題の解決を両立すべく生まれたソリューション、「データクリーンルーム」です。

※データクリーンルーム(Data Clean Room)とは?
https://dentsu-ho.com/articles/7936#DataCleanRoom

前回に続き、データクリーンルームの現在地を電通の前川駿氏が深掘りしていきます。

前川 駿

前川 駿 氏

株式会社 電通

データ・テクノロジーセンター

<目次>

 

“人単位”のアプローチを進化させる「データクリーンルーム」

──前回は、前川さんに「個人情報とプライバシー保護の新たな潮流」を整理していただきました。今回は、データクリーンルームについて詳しいお話を伺えればと思います。

前川:私が前回紹介したCookieフリー時代の3つのアプローチ、

1. 「そもそも人単位でない方法を採用する」
2. 「集団単位を対象とした手法を開発する」
3. 「適切な同意許諾に基づき、人単位の方法を維持する」

があります。電通グループとしては特に最後の「人単位」のアプローチを維持していくことに力を入れています。ポイントになるのは「ユーザーからのデータ活用の許諾」です。

サードパーティクッキーは、広告表示時に取得することで大規模にデータを収集できたわけですが、ともすると事前のデータ活用許諾が曖昧なまま流通し得たのも事実です。そして、これまでのデジタルマーケティング施策は、そのサードパーティクッキーに依存していました。

しかしCookieフリー時代においては、ユーザーに対して、わかりやすく「どう活用されるのか」を説明の上、事前に許諾を得たIDに連携するデータだけが活用されるようになっていくと思います。

マーケティングで有効活用できるIDの条件は、「個人に連絡可能で、かつさまざまな外部と接続できる状態である」ことです。つまりメールアドレス、電話番号や広告識別子と連携する形で許諾を得られるかどうか、が大事になってきます。

──連絡可能なIDと連携して、ユーザーの許諾を得ることが何よりも重要なんですね。そうしたIDはどんな場所に集まるのでしょうか?

前川:ユーザーが企業にメールアドレスや電話番号を預けるからには、「納得感」と、マーケティング利用の代わりに得られる「ユーザーメリット」が重要です。この2点を満たし、「マーケティング活用できる多くのID」を所有するのは、いわゆるプラットフォーム企業が多いですね。

携帯キャリアはもちろんのこと、配送、返品など問い合わせ対応が必要となる購買、EC、決済/ポイントに関わるアプリやサービスも該当します。さらにSNS、検索ポータルなどのデジタルプラットフォームがあります。こうしたサービスは友人同士の連絡に使われたり、ソーシャルログインやパーソナライズによってより快適なリアルライフを支援しているため、メールアドレスや電話番号を預ける納得感が高く、なおかつユーザーメリットも還元されます。

━━「許諾済みのID」は、どのように扱うことができるのでしょうか?

前川:ユーザーからどんな範囲や内容の許諾を得られるかは、企業がどんなデータを何にどう使うか、それに見合ったメリットやサービス対価の設計次第です。また、ユーザーによっても異なります。

例えば「ポイントがもらえるなら、ターゲティング対象になってもいい」「自分のお気に入りのサービスが使えるなら、分析に使ってもいい」「興味のない広告が減るなら、外部にデータを提供してもいい」など、いろいろな形があり得ます。

なお、許諾“済み”というと、一度許諾を取ってしまえば自由に使えるようにも聞こえますが、データ所有の主体は常にユーザーにあり、企業はあくまでも「お預かりしている」立場です。企業には、ユーザーに対し、データを預けるメリットを継続的に還元し続けることが求められます。同時にユーザーが「自分のデータがどう活用されているか」を意識する機会も今後は増えていくと思います。

その意味では、広告を含めた企業からユーザーへのコミュニケーションもまた、個々のユーザーに対して「ジャスト・ライト・オファー」であること、つまり歓迎される内容、歓迎されるタイミングで行う必要性が高くなります。個々のユーザーの反応に耳を傾け、理解し、改善し続ける、対話のようなプロセスがますます重要になるでしょう。

対話のプロセスを重ねていくには、顧客がテレビやデジタルを介して商品・サービスを知る、理解/共感するという地点、実際に商品やサービスを購入・契約する地点、などさまざまなタッチポイントのデータを統合する必要があります。

その際には、ユーザーとの許諾はもちろん、セキュアに、プライバシーが保全された環境でデータ統合することが重要な論点となります。

━━プラットフォームの持つデータと、各クライアント企業が持つ自社保有データを掛け合わせることができるデータクリーンルームですね。その概要を改めて教えてください。

前川:データクリーンルームとは、プラットフォームから提供される、「プラットフォームデータとプラットフォーム以外のデータとを統合し、分析できるプライバシーが保全されたクラウド環境」のことです。

具体的には、プラットフォームの保有するインプレッションデータや属性データと、クライアント企業や広告会社が保有する各種データとを統合することで、継続的なマーケティングPDCAを実行できる基盤です。(図1)

図1

図1_データクリーンルームの定義

 

なお、データクリーンルームそのものはあくまでも各プラットフォームが所有し、外部に提供しているもので、それを電通を含む広告会社や、クライアント企業が契約して利用する形になります。

━━クライアント企業にとって、データクリーンルームを使うメリットは?

前川:プラットフォームによってできることは異なりますが、Cookieを基盤とする従来型のサードパーティDMPと比べると、大きくは以下の特徴があります。(図2)

図2:

図2_データクリーンルームのいいところ

ひとつめは、時間とともにデータが消失しないことです。

ニューノーマルと言われる時代を迎え、ユーザーにモノを売って終わるのではなく、長期的にファンになってもらうことがますます重要になっています。「ブランドのファンになる」というのは、突然にファンになるのではなく、多くは日々の地道なコミュニケーションの先に、「気づけばブランドの世界観を含めて好きになっていた」ということかと思います。

しかし、実は長期的なコミュニケーションの積み重ねの効果を、従来のサードパーティDMPでは分析できませんでした。クッキーデータは3カ月ほどで消失してしまうからです。

その点、データを長期的に見ることができるデータクリーンルームなら、「最終的にブランドのファンになってくれたユーザーは、どのようなコミュニケーションを経てファンになっているのか」を紐解くことができます。それを元に、よりユーザーに喜ばれるコミュニケーションや、ファンを作るための知見をためていくことも可能です。

もちろん、IDが変わらないからといって、データを目的なく蓄積したり、個人を特定することがないように、多くのデータクリーンルームではある程度の期間でデータを自動削除したり、サンプルサイズの少ない計算はエラーになるなど、プライバシーに配慮した機能や運用が準備されています。

データクリーンルームのもうひとつのメリットは、IDの「連携」ができること。クライアント企業によっては「アプリの購買データ」「ブラウザの購買データ」「店舗からの購買データ」などが社内でバラバラに管理されています。せっかくさまざまなデータを保有していても、それらを統合できないため、チャネルを横断したユーザー分析や、メディア施策の評価もできません。

データクリーンルーム内では、さまざまなデータをひとつのIDに集約できます。社内のデータだけでなく、外部のIDとも連携可能です。

例えばデータクリーンルームでは、メールアドレスや電話番号にひもづいたIDを保持する外部の共通ポイントカードと連携することで、コンビニエンスストアやドラッグストアでの商材を中心に「いつ、誰が、どのような経路で購入に至ったか」について約数千万ID規模で分析できることが強みのひとつです。購買などのデータを自社では集めきれない企業には、大きなメリットになり得るでしょう。

データクリーンルームの活用で、Cookieフリーに対応した高度なマーケティングが可能に

━━クッキーを使わないことで、従来のような精度のターゲティングや効果測定ができなくなると考えるクライアントも多いですが、むしろより高度なデジタルマーケティングができるようになるのですね。

前川:はい。電通グループでは、データクリーンルームという基盤を活用したマーケティングがますます重要になると考えています。私たちは、データ連携の許諾の取れているデータの範囲について、「経済圏」という言い方をしています。そして顧客構造の把握、打ち手の出し分け、検証、改善というプロセスをデータクリーンルーム内で行い、経済圏ごとにプラットフォームのIDで垂直統合して、企業のマーケティング変革を推進しています。

──データクリーンルーム導入の際に、電通グループがクライアントに貢献できることは何でしょうか?

前川:繰り返しですが、データクリーンルームはクラウドの基盤です。そこで高度な分析ができるように、そして分析結果がクライアント課題/マーケティング課題の解決に活かせるように、連携データ、ツール、分析体制、ロジックなどを整備しています。

ツール面でいうと、データクリーンルームは自由度が高い半面、運用の難易度は高くなります。管理画面も汎用的なものではないし、実施したい分析に合わせて「クエリ」と呼ばれるコーディングを開発する必要もあります。この手間のかかる部分を、電通グループは大きく支援できます。

また、分析/体制面では、電通グループにはデータクリーンルームを扱えるデータサイエンティストも多数所属しています。データクリーンルームは個人特定がなされないシステム制御があるものの、当然ながら「その範囲では何でもやってよい」ということはありません、今後、データサイエンティストはプライバシー保護について業界で議論されているポイントや、4月から施行予定の改正個人情報保護法について、正しく理解する必要があります。もちろん「分析結果に基づいた広告や販促施策が、本当にユーザーの体験をよいものにするか?」という考慮も必須です。

このような背景を踏まえ、電通グループでは、データクリーンルームに携わるデータサイエンティストに対して特化した研修・育成プログラムを作り、クライアント企業がデータクリーンルームをより安心して、スピードをもって導入・活用できる体制を整えています。

ロジックの開発も重要です。私たちは2017年頃からグローバルエージェンシーとしての優位性を生かして、データクリーンルームに取り組んできた世界でも最初の企業のひとつです。そこで培ったクエリを体系化し、統計的にバイアス補正を行うロジックや、回帰モデルを用いた予測/推計モデルの構築を進めてきました。

図3:

図3_電通グループとデータクリーンルーム

データクリーンルームという基盤から見るのでなく、マーケティングというクライアント企業の課題を解決するソリューション全体から捉えると、データクリーンルームはあくまでひとつの(重要な)パーツです。

キッチンという基盤があり、そこに材料、調理器具、シェフ、レシピが揃ってカレーができるように、データクリーンルームという基盤の上で、連携データ、ツール、分析体制、ロジックが揃ってCookieフリーに対応した新たなマーケティングを実践できるということになります。

Cookieフリー時代の新たなマーケティングモデル

 

デジタル販促の課題である「スケールとコストのバランス」への解決策とは?

━━現時点でのデータクリーンルームの活用事例について教えてください。

前川:いろいろありますが、デジタル販促の事例を紹介します。デジタル販促の魅力のひとつは「ユーザーの自然な買物体験の中で取得できる購買証明」です。例えば「商品を買ってくれたらポイントを差し上げます」というキャンペーンを考えてみましょう。

“買ってくれた”ことの証明には、「商品についたシールを集める」「QRコードを読み込んでシリアル番号を入れる」「レシートを撮影して送る」などがあります。これらは比較的、ユーザーには手間のかかる購買証明です。こうした方法でも数十万人が応募するキャンペーンはありますが、数百万のオーダーになってくるとなかなか到達しない。

そこでキャンペーンのさらなるスケールのため、「普段の買物行動の中で自然に購買証明を取れる方法」が求められていました。そのひとつの解がキャッシュレス決済で、「ユーザーがアプリで決済をする」ことで購買証明が取れるソリューションが出始めています。

しかし、そうした自然な購買証明では、そもそもキャンペーンであることに気づいてもらえず、「たまたま購買したらポイントがもらえていた」ということになりかねません。これではマーケティングの狙いからは遠ざかってしまいます。

多くのマーケターは、買う予定のなかった顧客の背中を押して、実際に商品を買ってもらい、使ってもらって、その積み重ねでファンになってもらうことに関心があると思います。その意味では「自然な購買証明」とセットで、売場を起点にキャンペーン告知をしっかりと行う「動線設計」のノウハウがとても大事です。

そこで、データクリーンルーム内で「流入経路」「定着するパターン」「購入者の属性」などのデータを用いて分析を行い、キャンペーンに役立てています。さまざまな分析の結果、「ユーザーに購入してもらうためは、店舗から250m以内のデジタルOOHが有効である」「テレビCM出稿タイミングに合わせ、決済データを用いたデジタル広告で告知するとクリック率が1.8倍になる」といった検証ができています。

図4:データクリーンルームの分析アウトプット例

図4:データクリーンルームの分析アウトプット例-1
図4:データクリーンルームの分析アウトプット例-2

──データクリーンルームの有効性が、すでにある程度検証できているのですね。次回はそういった結果も踏まえ、トレジャーデータの山森康平さん、LINEの徳重航さんも交えて、より具体的な活用ケースや、想定される課題についてお話しを聞いていきたいと思います。

 

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トレジャーデータと電通・電通デジタルが協業し提供するソリューションついて、ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

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https://www.treasuredata.co.jp/dx-engine-contact-us-td/
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<プロフィール>

前川 駿

前川 駿

株式会社 電通

データ・テクノロジーセンター

これまで、データアナリストとして、テレビ×デジタルの統合プランニング・効果計測を推進の後、2015年にテレビCMとデジタル広告の統合マーケティングプラットフォーム STADIAの開発を担当し、プロジェクトを牽引。現在、Cookieフリー時代の新たなデータ基盤 Data Clean Roomの開発支援と広告や販促領域における導入を中心に活動。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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