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サッポロビールがデータドリブンで挑む「顧客理解」の取り組みとは?

CASE STUDY|サッポロビール株式会社
コミュニケーション開発部 マーケティングリサーチグループ
アシスタントマネージャー
堀内 亜依氏

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消費者行動の変化や、気候変動、COVID-19といった不確実な環境への変化を背景に、データドリブンなマーケティングにより、「信頼できるブランド」を構築しようとしているサッポロビール株式会社(以下、サッポロビール)。そのために重要だと考えているのが、「顧客理解」すなわち「ファン度の可視化」です。

「PLAZMA13」に登壇した同社 コミュニケーション開発部 マーケティングリサーチグループ アシスタントマネージャーの堀内 亜依氏と、株式会社UNCOVER TRUTH 代表取締役 石川 敬三氏が、トレジャーデータが提供するカスタマーデータプラットフォーム「Treasure Data CDP」を活用した取り組みの詳細を語ります。
聞き手は株式会社Legoliss データソリューション事業部 事業部長 小林 範子氏です。

 

  • 堀内 亜依
    堀内 亜依

    サッポロビール株式会社
    コミュニケーション開発部 マーケティングリサーチグループ
    アシスタントマネージャー

  • 石川 敬三
    石川 敬三

    株式会社UNCOVER TRUTH / 代表取締役

  • 小林 範子
    小林 範子

    株式会社Legoliss / データソリューション事業部 事業部長

顧客一人ひとりを深く理解するために導入したCDP

「これまでは購買で重視される点として『広告で見た』『店頭で目立つ』『価格が安い』ということがあったと思うのですが今は『自分に合っている』ですとか『共感・信頼ができる』にシフトしてきている」(サッポロビール 堀内氏)。

ビールはマスプロダクトではあるが、マスなアプローチだけでは消費者の支持を得られなくなっていると感じていた。そのため、顧客一人ひとりの価値観やオケージョンに応じた訴求を行うなど「One to One」的なアプローチが必要だと考えたという。

また外部環境の変化として、従来の知見が通用しにくい不確実性が増してきている。たとえばビールの販売は天候に左右されやすく、昨今は気候変動の幅も大きくなってきている上に、COVID-19のような劇的な変化も起こりうる。そういった環境変化に対応していくためにも、データドリブンなマーケティング基盤が必要だったのだ。

そこで、同社はパートナーとしてUNCOVER TRUTH株式会社(以下、UNCOVER TRUTH)と株式会社Legoliss(以下、Legoliss)の支援を得て、Treasure Data CDPを導入。顧客理解、One to Oneでの施策の実行、そして顧客との相互コミュニケーションを通じたファン化の促進に取り組んでいる。最も重視するのは顧客理解だ。

「我々はBtoBtoCのビジネスですので、最終消費者であるお客様と直接のつながりがあまりありません。そういったつながりがないので理解が不足していました。CDPをはじめとしたテクノロジーを活用して、最終消費者のお客様と直接つながり、そして理解を深めていきたいのです」(堀内氏)

堀内氏によると、CDPをはじめとするテクノロジーを活用することで目指したのは、顧客と直接つながり、理解することで、One to Oneマーケティングを実現し、ファンを増やすことだ。顧客に寄り添ったコミュニケーションを行うことが、相互コミュニケーションとなり、ファン化が促進される

「顧客データがない」から「データを作り育てる」アプローチへ

食品メーカーは飲食店や小売店を介して商品を販売するBtoBtoCビジネスであり、最終消費者のデータの入手が非常に困難だ。また、低単価商材がゆえに、オンラインの行動量が少なく、有用なデータが自社に残りにくいという問題を抱えていた。

有用な購買データや行動データが残りにくいため、リサーチデータで情報を補足することになるが、それにも限界を感じていたという。理由としては、「聞かれて答えることと自分が無意識で行動することとの間にはギャップがある」と堀内氏は話す。例えば、「どのビールが好きですか?」と聞かれて「一番好きなビールはエビスビール」と答えた人が実際に購入したものを調べると、ビールではなく新ジャンルの他社製品だったことがあるという。リサーチに限界があることを示した格好だ。

そのため、同社は顧客を理解するために、むしろ「データを作り育てる」アプローチをとったのだ。データの受け皿として必要になったのがCDPだ。

Treasure Data CDPでファン度を可視化し、分析に活用

サッポロビールにはエンジニアがいないため、Treasure Data CDPが備える豊富なコネクタは大きな利点だったという。また、共通キーの存在も大きいと語る。導入を担当したUNCOVER TRUTHの石川氏も、「共通キーがあることで、正確に可視化できるデータが取得でき、大きなメリット」と語る。

サッポロCDPにおいて、今最も注力しているのは 「ブランドエンゲージ別ランク構築」(※図のNo.5)だ。ブランドごとのファン度を可視化し、分析に活用しているという。

ブランドエンゲージ別ランクが可視化できるようになったことは非常に大きな一歩であると堀内氏は語る。ロイヤリティの高い顧客がどの程度存在し、どんな行動をしているのか、ロイヤリティが高くない顧客とどの程度の差があるのかが見えるようになったのだ。

また、「データを作り育てる」アプローチの結果、会員のオンライン上での行動量が増えたこともわかった。こうして有用なデータが集まりはじめ、データドリブンに顧客に価値を提供していくための準備が整いつつあると堀内氏は語る。さらに、直接的な効果ではないものの、CDPで統合したデータから見えてきたことを可視化して、情報発信を積み重ねた結果、社内における取り組みへの理解も加速しているという。

「顧客を可視化したい」という思いに応えるパートナーを選択

Treasure Data CDPを選択した理由に加えて、堀内氏はパートナーを選んだ理由も述べた。それは、UNCOVER TRUTHは「コンバージョンよりも、まずは顧客を可視化したい」というサッポロビールの思いを理解していた点だ。

「わが社には有用なデータがほとんどありませんでした。また、ビールは数百円の商品であるため、購入の際に企業ホームページで商品を比較検討する人もあまりいません。そのため、CDPで先行しているEC企業や自動車メーカー、金融商材などのパターンは通用しないと考えました。それを前提に、何をKPIとするのかを理解してもらえるパートナーを探していました」(堀内氏)

最終的には、CDP運用後の世界をサッポロビール社内で検討したところ、「広告よりはCRMに力を入れたい」という点で合意した。つまり方向性としては、顧客を理解し、関係を構築し、コンテンツマーケティングにも力を入れるということだ。そこで「こうした分野に強みを持つUNCOVER TRUTHをパートナーとして選択しました」と堀内氏は述べている。

また、開発パートナーとしてのLegolissに関しては、目的を意識して、提案からしっかり行ってくれる点や、開発のスケジュールの前後など、要因をしっかりと提示して進めてくれるため安心感も大きいと述べた。

これから導入する人に伝えたいこと「データ収集は1日でも早く」

CDPの導入のスタート当初に「苦しかったこと」としてあげたのは、自社内に使えるデータがほとんどなかったことだ。

「例えばITの観点から収集したデータは、マーケティングにはあまり使えないものでした。一方、マーケティングや販促部門では、データの収集や蓄積にコストがかかるため、キャンペーンの応募で得たデータなども捨てていたのです。データへの意識が低かったためで、思想や戦略が必要だと実感しました。
1st Partyデータは企業にとっての資産です。正しく使えるデータを蓄積するには、Treasure Data CDPのようなハード面での環境を整えることと、全社で意識を調整するといったソフト面での環境を整えることの両方の取り組みが必要だと感じています」(堀内氏)

石川氏も、導入の際にサッポロビールが持っていたデータを見て驚いたと明かす。会員データには100以上の項目があったものの、ほとんどデータは入っておらず、使えるデータは一桁という状況だったという。

「CDPの導入を検討している企業は、まず自社のデータを調べてみてください。データはあると思っていても、捨てていたり、使えなかったりというケースが意外と多いものです」と石川氏。堀内氏も、「1日でも早くデータ収集してください」と述べた。

また、メーカーであるためコンバージョンがないところでの分析の難しさを石川氏は挙げた。明確な意思表示となる行動や、購入のデータがあれば、アトリビューションを分析することで、CRMにおける最適なタイミングでのオファーを導き出すことはできる。しかしそれらのデータが全く無かったため、顧客を定義することから行う必要があった。

「顧客が誰なのか、その顧客がいくらお金を使ってくれて、何杯飲んでいるのかというのが全くわからないがゆえに、CDPを活用して可視化するというところが、非常に大きなポイントになりました」(UNCOVER TRUTH 石川氏)

その結果できあがったのが、ブランドエンゲージメントランクだ。そこで定義したユーザーのセグメントに対して、どういうオファーを行えばよりファンになってくれるのかが、データドリブンできるようになるのではないかと石川氏は述べた。

CDP導入を検討する企業が押さえるべき3つのポイント

最後に、数多くのCDP導入プロジェクトを成功に導いてきたLegolissの小林氏が押さえるべきポイントを紹介した。

1つ目に挙げたのは、「アウトプットを明確にする」ということだ。アウトプットが曖昧な状態でプロジェクトがスタートするというケースは非常に多いというが、データを統合することは目的ではなく手段である。料理のプロセスのように、どんな料理を作って、どういう状態を作りたいのかといったゴールを設けて、そのためには何の食材と調味料を使い、どのような調理方法をとるのかを検討する必要がある。CDPも料理と同様だ。プロジェクトの最初の段階で、要件をきちんと定義して、そのためにはどんなデータが必要か。今どんなデータを持っているのか、無いのかを把握しなくてはならない。

そして、2つ目は、「CDPは魔法の箱ではない ことを理解する」という点だ。MAやAIといったテクノロジーも、導入すれば万事OKではない。実際にサイロ化したデータを統合するということは、非常に手間がかかる。統合が進むにつれて、施策の検討や実行は行いやすくなるとはいえ、CDPを導入すれば勝手に統合されるものではない。統合したうえで、顧客を深く理解し、顧客体験を変えていく、選ばれるサービス・プロダクトを作るという強い意志が必要なのは言うまでもない。

最後に3つ目のポイントは、組織の「横の連携」だ。マーケティング部門、システム部門、情報セキュリティ部門の連携がマストだ。CDPプロジェクトは、マーケティング部門が主導するケースと、システム部門が主導するケースがあるという。どちらが主導した場合でも、横の連携は欠かせないと小林氏は述べる。

CDPは顧客データを統合するための基盤であり、個人情報の取り扱いに関するエキスパートである情報セキュリティ部門とも強力な関係を築く必要がある。CDPに個人情報を保管するのかどうかといった話を、プロジェクトが開始する前に方針として固めておくことが大事だと説明した。

CDP導入プロジェクトの初期構築はスタートの第一歩目であり、初期構築の段階で完璧な基盤を構築しようとすると、ゴールが見えにくくなり息切れをおこしてしまうことにもなりかねない。全体のゴールを見据えて、細かくフェーズ分けを行い、今あるデータを統合、可視化し、それを活用して施策を実行するといった一連の流れを、小さくてよいので始めることが重要だと小林氏は語った。

データドリブンを全社に浸透させる第一歩がスタート

CDPの初期構築が完了したサッポロビールでは、顧客を理解しようと全力を尽くしている段階だ。そして、これはCDPで統合したデータを全社的に活用していくための第一歩であると考えている。そのためにも小さな成功事例を積み重ね、社内を巻き込んでいくと堀内氏は述べる。ゴールはCDPチームだけでは作れない。ゴールはブランドにあり、ブランドがどうデータをインフラとして活用していくか、そしてその先に信頼できるブランドと顧客の関係を構築していくかがこれからの肝となる。サッポロビールの挑戦はまさに始まったばかりだ。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
https://www.treasuredata.co.jp/
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