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データ価値の考察(1) – データに価値はあるのか?その試算方法は?-

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カスタマーオンボーディングチームの小暮 和基です。
私はこれまでのキャリアの中でマーケティング調査会社に在籍していた時期があります。協力パネルから取得したデータを企業様に提供したり、アドホックなマーケティングリサーチを企画提案するなどを行っていました。今振り返るとその当時からずっと抱えているテーマなのですが、「データ自体に価値はあるのか?あるとすれば、それはどのように算出されるべきものか?」ということをトレジャーデータ社に入ってからも度々考えます。

例えば、「私の個人情報データを提供する対価としていくら支払いますか?」と様々な企業に投げかけるとします(個人情報データにどのような項目が含まれるかは事前にお伝えすることとします)。すると恐らく、私の個人情報データに対して様々な値段が付けられることでしょう。もちろん値付けにはその時の市場性や企業の経営状況・方針など様々な変数があるので、企業により多少の差異は当然起こりうるものです。

しかし私がマーケティング調査会社に在籍していた際に、同じ企業の同じような立場にある方であっても、データに対する価値評価が大きく異なることがたびたび露見していました。提供するデータ内容は寸分違わず同一で、検討における背景状況や環境も同じなのに、一方では積極的に対価を払ってでも欲しいと言い、もう一方ではなんの肥やしにもならないから不要だと言う。そのときに、データにどのような価値を見出すかは個々人の感性に委ねられているように強く感じたのです。

このことが私がこのテーマに関心を持つ最初のきっかけとなり、自分たちが取り扱うデータ自体について(担当者個人の感性に頼らず)何かしら統一的な価値算出ができないだろうかと考えるようになりました。

少し前段が長くなりましたが、本稿でお伝えしたいポイントは以下の3点です。

  • データそのものに価値は内包されている
  • データに内包されている価値は顕在化しないこともある
  • 企業が保有するデータ資産を評価算出する動きはこれまでもあったが、データ自体に焦点を当てたアプローチではなかった

そもそもデータそのものに価値はあるのか?

「データの価値」について触れるに当たり、総務省が平成30年版として発行した情報通信白書の中に同じタイトルの項がありますので紹介させていただきます。そこには以下の記述があります。

このような世界では、データは「21世紀の石油」とも言われるように、その利活用が国のあり方とその発展に大きな影響を与えることとなる。ただし、データを多く集めること自体には必ずしも価値はなく、そこから取り出される様々な意味や知見にこそ価値がある。

ここで書かれているように、ほとんどの場合、データは保有しているだけで経済効果を生むものではありません。またデータからの考察や解釈、分析を通じて得られた示唆に重要な価値があることにも議論の余地はありません。しかしながら総務省のこの記述は「データそのものには価値がない」いう立場であるように汲み取れてしまうため、私なりに以下の2点を補足させて頂きたいと思います。

  • もともとデータそのものに価値(=様々な意味や知見)は内包されている
  • データに内包された価値は顕在化しないこともある

総務省の文面で「取り出される」という記述に表れているように、様々な意味や知見はデータにすでに含まれているという考え方です。ただし内包されている意味や知見を取り出せるかどうかは別の問題で、取り出されずに顕在化されない価値も無数にあるのです。このように考えると、データが内包する潜在価値を顕在化させることが非常に重要であることに思い至りますが、それは次回にでも紹介させていただければと思います。

これまでのデータ価値の評価方法

「データそのものに価値はある(もしくは内包されている)」ことを前提として、データが持つ経済価値を評価するための試みはこれまでも様々なアプローチで行われています。本日はその中から以下の2点を紹介させていただきます。

  • 企業資産価値としてのデータ価値評価
  • 情報漏洩時の補償としてのデータ価値評価

企業資産価値としてのデータ価値評価

インフォノミクス(情報の経済化)という概念が徐々に広がり始めていますが、これがデータ価値評価を試みる起点の一つとなっています。現在の会計規則上、データは資産計上することができないルールになっている一方で、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、フェイスブックなど、企業時価総額ランキングの最上位に名を連ねる企業の多くが収集したデータを活用することにより直接的または間接的に収益を上げています。

企業が保有するデータ資産をどう見積もるかは投資家の間でも重要なテーマなのです。以下は主だった手法として3つほどリストアップしていますが、データの項目や内容という粒度の評価ではなく、企業価値評価の一環であるがゆえに市場取引や活動を結び付けて企業保有データ全体を評価算出するものとなっています。

  • キャッシュフローアプローチ
  • データプロバイダーが保有するデータと、それを他社提供することで上げている収益を元に、保有データに対する収益性を算出する方法

  • コストアプローチ
  • 企業がデータを活用するために掛かっているコストを、データが持つ最低限の価値であると仮定して評価する方法

  • マーケットアプローチ
  • 企業の合併・買収などの市場取引額に基づきデータの価値を評価する方法

情報漏洩時の補償としてのデータ価値評価

続いてご紹介するアプローチは、情報漏洩時の補償をいくらにすべきかという判例や事例をもとに、データ価値評価の参考とするものです。近年、情報漏洩に関する記事はかなり高い頻度で目にするようになりました。個人情報の取り扱いがより厳格化を増す一方で、漏洩に対する妥当な補償額についても実例とともに議論が少しずつ深まってきたことが背景となっています。

弁護士法人みずほ中央法律事務所のホームページ(http://www.mc-law.jp/kigyohomu/9055/)では、このテーマに関する情報がまとめて掲載されています。特に個人情報の漏洩・流出における被害者への民事的賠償額について「不本意ながら賠償額の相場の形成が進みつつあります」とコメントした上でその相場感を紹介してくださっています。ただしこちらはあくまでも個人情報を対象とし、かつ漏洩による被害を見積もった際の補償額という意味合いになるため、データ価値の評価方法としては全体のうちの一つの側面であると捉える必要があります。

  • 秘匿性=『低』レベル→500円〜1000円
    • 住所・氏名など
    • 特殊事情はない
  • 秘匿性=『中』レベル→1万円
    • クレジットカード情報
    • 収入・職業に関する情報
  • 秘匿性=『高』レベル→3万円
    • スリーサイズ
    • エステの施術コース

今回はデータ価値評価アプローチ、中でも従来からある主たるものとして「企業資産価値としての算出アプローチ」と「情報漏洩時の補償における算出アプローチ」を紹介させていただきましたが、いずれもデータ自体に焦点を当てたアプローチではないため、残念ながら自社で保有するデータの価値評価には使い勝手が悪いかもしれません。まさか価値評価のために個人情報を漏洩してみるわけにもいきませんし。。。

他方、最近では情報銀行やPDS(パーソナルデータストア)の取り組みが国内でも始まっています。個人的には改正個人情報保護法やITPにより情報の取り扱いが厳格化され、それに伴いデータ活用のエコシステムが変革を余儀なくされている状況の中、データ流通の在り方に対する議論は少し停滞しているようにも感じます。が、いずれは「Aのデータを、Bの目的で使うときは〇〇円」といった具体的な市場感が形成されると良いなと思いを馳せています。

まとめと終わりに

はじめにの項の再掲ですが、本稿でお伝えしたいポイントは以下の3点です。

  • データそのものに価値は内包されている
  • データに内包されている価値は顕在化しないこともある
  • 企業が保有するデータ資産を評価算出する動きはこれまでもあったが、データ自体に焦点を当てたアプローチではなかった

3点目のポイントは、データの市場価値評価がいかに難しいかを物語っていますが、それはあくまでも”市場からの価値評価”についてです。個人的には各企業が保有するデータが自社にとってどのような意味や価値があるかという観点での”自己評価”については、もっと様々なアプローチがあっても良いはずと考えています。それがあれば、特にデータ利活用を推進する企業にとってその推進度合を測る指標になりますし、最終的なビジネスKPIに現れるのを待つことなく取組効果を社内外に訴えることができるようになります。

まだまだ漠然としたイメージですが、、
「取り組み開始当初、我が社のデータ資産総額は推定〇〇円で、収益寄与率はx0.5であった。現時点ではデータ資産総額は同△△円で、収益寄与率はx0.8まで上がっている」
などの表現ができるようになれば、データ推進に関わる意思決定で今まで難儀していたことの多くがスムーズに事を運べるように思うのです。

次回記事を書く機会があれば、どのようにデータが持つ価値を試算するかを論じるには至りませんが、データ価値を向上させるための考え方やポイントについて私なりの考察をお伝えできればと思います。本日はこの辺りで失礼します。

小暮 和基

Customer Onboardingチーム

インターネット広告の大手メディアレップにてWebメディアへの広告コンサルやadTechツールの導入を数多く手掛けた後、博報堂DYメディアパートナーズに出向。マスメディアのアセットを活用したデジタル事業開発やクロスメディアプロモーションを推進する専任担当として活動。その後、デジタル以外に領域を拡げるべく籍を移した外資系マーケティング会社では企業のマーケティング・ブランド戦略、プロモーション効果計測、マーケットリサーチなどに携わる。前職ではIoT製品を開発・販売するスタートアップ企業のマーケティング担当として、戦略立案から施策実行、自社メディアの運用や販売チャネル分析など幅広く担当(人がいないから全部やる)。2019年にトレジャーデータに参画。カスタマーコンサルティングチームを経て、2020年からはカスタマーオンボーディングチームに所属。

得意領域 : IoT、ペルソナ分析、ジャーニーに合わせた情報設計、効果検証

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