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先進事例から学ぶデータ活用戦略(Wechat / Tencent)

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カスタマーコンサルティングチームの由川 優です。
今回も海外の先進的なDX推進事例をご紹介いたします。

過去2回は「平安グループが実践する保険販売機会を創出するデータ活用戦略」「Royal Bank of Canadaのオートローンを中心に自動車の買替需要を創出するデータ活用戦略」を紹介してきました。

今回は、Tencent(中国)が展開し全世界で10億人以上に利用されているモバイルアプリ“Wechat”をご紹介します。

“Wechat”は、メッセージングやソーシャルメディアを中心としたアプリで、チャットや通話することに加え、ゲームやニュース、公式アカウントやミニプログラムによる各種サービスの利用、WeChat Payでのモバイル決済など、様々な機能があります。

アプリを展開するTencentは、ゲーム、ニュースなどのコンテンツ配信、決済サービスを展開しており、日々の生活で利用するあらゆるサービスを”Wechat”で提供することを目指しています。

オンライン端末を操作している時間は1日6時間、うち33%の時間はメッセージングやソーシャルメディアアプリを利用している

2019年にマッキンゼー・ア⁠ン⁠ド・カ⁠ン⁠パ⁠ニ⁠ーが実施した中国消費者への調査では、オンライン端末を操作している時間は1日6時間、うち33%がメッセージング・ソーシャルアプリの利用と最も多く、19%が動画視聴、9%がニュース、8%がゲームとなっています。(2021年の同調査ではCOVID-19の影響もあり1日のオンライン端末操作時間が7.3時間まで増えたと報告されています。)

Tencentは、今後TikTokのような短編動画配信サービスに投資していくことを公表しており、ゲーム、ニュース配信に加えて日々多くの時間利用されるサービスの提供を目指していることが伺えます。

また、“Wechat”にはミニプログラムという機能があり、他事業者が提供するサービスを”Wechat”の中で利用できるため、より多くの時間”Wechat”を利用することになります。Tencentの狙いはより多くの時間で顧客接点を持ち、顧客に関するあらゆるデータを収集して顧客像を明確にすることであり、自社サービスの提供機会を探索しつつ、広告価値の向上にも活用していると考えられます。

”Wechat”ミニプログラムは利用者・サービス提供事業者の双方にメリットがある

”Wechat”ミニプログラムは、ダウンロード不要・アカウント登録不要で利用できます。モバイルアプリはストアからダウンロードし、アカウント登録を完了してから利用できるものも多いですが、ミニプログラムでは同手順は不要です。

例えばカフェを探している時、”Wechat”で「付近で利用可能なミニプログラム」を検索すれば、特定カフェチェーンのアプリをダウンロード・アカウント登録していなくても、最寄り店舗の検索・利用可能なクーポンの確認、モバイル決済(Wechat Pay)が利用できるため、利便性は高いといえます。

利用者の利便性だけでなく、サービス提供事業者からしても、新たな顧客を店に呼び込むことができるため、ミニプログラムの展開にはメリットがあるといえるでしょう。

オンラインだけ商品選定・購買を意思決定する消費者は8%と限定的

アパレル商材の商品選定・購買において、「8%」の消費者がオンラインだけで選定・購買を意思決定するとの調査結果があります。(2019年にマッキンゼー・ア⁠ン⁠ド・カ⁠ン⁠パ⁠ニ⁠ーが実施した中国消費者への調査より)同調査では「85%」の消費者はオンラインとオフラインを組み合わせて商品選定・購買を決定するとしており、アパレル商材においてはオフラインの影響も大きいといえます。

商材やサービスの内容にもよりますが、オンライン(=デジタル接点)だけに注力したマーケティングやカスタマージャーニーの設計では顧客の利用実態を捉えきれず、オンライン・オフラインの組み合わせで考えることが重要だといえるでしょう。

顧客とのコミュニケーションを最適化するため、オンライン・オフライン問わずデータを収集する

”Wechat”はユーザー数が多く、あらゆる場面で操作されるアプリであり、サービス提供事業者はミニプログラムを展開することで新たな顧客と接点を持つことができることを説明してきましたが、購買に至るカスタマージャーニーはオンラインだけでは完結していないケースが大半です。

本稿では”Wechat”を中心に中国における消費者行動について記載しましたが、日本国内でもLINEを中心に同様の消費者行動が進むと考えられます。新たな顧客接点を作ることだけに焦点を当てるのではなく、オンライン・オフラインの両面でいかに顧客とのコミュニケーションを最適化するかが重要となるため、オンライン・オフライン問わずデータを収集し、活用可能な形式で保持する仕組み=CDPを中心としたシステム面の整備が重要になると考えます。

ご検討の際は是非とも弊社メンバーへお声掛けください。

出典

Tencent:Tencent CORPORATE OVERVIEW (May 20, 2021)
McKinsey & Company:China consumer report 2021 ”Understanding Chinese Consumers: Growth Engine of the World”
McKinsey & Company:China digital consumer trends 2019 “Discovering the next wave of growth”
Fintech Journal:アプリはもう古い? WeChat「ミニプログラム」はなぜここまで広がったのか(連載:中国イノベーション事情)

由川 優

Customer Consultingチーム

2007年にアクセンチュアへ入社し、銀行、証券、オートリースへのコンサルティングを経験。大規模システム開発のプロジェクトマネジメントを得意とし、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナルとしての国際資格)を有する。その後ガートナーへ転職し、ITテクノロジーのトレンドやグローバル先進企業の事業戦略について知見を深め、デロイトへ移籍。新たな保険会社の設立や、データ活用に特化した金融グループ子会社の設立を支援する中で、デジタル戦略の立案、計画策定、施策実行を経験。データ活用による既存業務効率化や、新サービス創出の知見を有する。金融業界を中心に先進技術の導入事例を調査・研究する職務にも従事。2020年にトレジャーデータへ参画。データ活用の施策立案やデータ価値を最大化するためのシステム全体像策定などを担う。

得意領域 : デジタル戦略立案、先進事例の調査・探索、プロジェクトマネジメント、コンサルティング

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