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ダッシュボード画面設計のための7ステップ – 前編 –

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はじめに

カスタマーコンサルティングチーム データアナリストの池田 俊介です。
私の記事では、私がアナリストとしてご契約企業様の方々に対しダッシュボード構築支援を行う過程で学んだことや、ダッシュボード構築時に意識していることなどを何回かに分けてお伝えできればと思います。前回の記事では、第2回目としてダッシュボード構築の要件について解説させていただきました。

第3回目の今回はダッシュボードの要件をもとに具体的なダッシュボードのデザインを行う、画面設計の作業工程について解説させていただきます。画面設計の方法論についてはまだ王道といったものは確立されておらず、設計者によってその方法論はさまざまです。そのため、あくまで私の個人的にやりやすいと実感している方法論として参考にしていただければ幸いです。

画面設計のための7ステップ

まず画面設計の7ステップをご紹介いたします。

  1. 要件再整理:要件をダッシュボード利用目的単位、KPI単位で整理
  2. 全体構造設計:ダッシュボードの全体構造をデザイン
  3. 分析観点言語化:ダッシュボードごとに分析観点を言語化
  4. ワイヤーフレーム設計:分析観点をもとにダッシュボードのワイヤーフレームを設計
  5. デザインプロトタイプ作成:分析観点に対応したチャートのイメージを作成
  6. デザインのレビュー会実施:画面設計イメージのすりあわせのためにレビュー会を行う
  7. デザインフィードバックの反映:追加機能の要望などのデザインへの反映

ダッシュボード構築を何度か経験し、画面設計に慣れてきた場合はステップを分けずに一気にダッシュボードの完成イメージの作成を行っても問題ありません。ですが、経験が浅い場合や扱うデータソースが慣れ親しんだものではない場合はこれらのステップを経由した方がクオリティの高いデザインになりやすいのでお勧めします。

7つのステップのうち前半3ステップ(1-3)はダッシュボードの要件をデザインの要件に落とし込んでいくものになっています。後半4ステップ(4-7)は具体的なデザインを書き起こし、ユーザーへのデザインの確認を行い、ブラッシュアップする作業工程となります。

一足飛びにデザイン設計作業から始めない理由

ダッシュボードの要件については前回の記事で以下のように整理しました。

抽象度の高い要件

  1. 何のためのダッシュボードか、求めるビジネス価値を定める
  2. 誰のためのダッシュボードか、利用するユーザーを定める
  3. 重要指標(KGI・KPI)を整理
  4. プロジェクトのマイルストーン

抽象度の低い要件

  1. .ダッシュボードを閲覧するタイミング
  2. ダッシュボードを閲覧する頻度
  3. ダッシュボードを閲覧するデバイス
  4. 重要指標(KGI/KPI)に関連するサブ指標
  5. 各指標の比較軸

これらを整理していく過程で、ダッシュボード構築の目的や期待する効果は利用ユーザーによって異なること、ユーザーによってダッシュボードを利用するシーンやチェックするKPIの種類やその優先度が異なることが明らかになることが多いです。読者の方の中にはダッシュボードのプロジェクトが立ち上がったときには1つのダッシュボードを構築すれば十分だと認識していたものが、実際にユーザーにヒヤリングしたところ当初の想定よりも要件やデータソースが多岐にわたる壮大なプロジェクトになってしまったというご経験もあるのではないでしょうか。

1つのダッシュボードを構築するために十数時間〜数十時間は作業時間に要するため、要件で出てきたすべてのユーザーのためのダッシュボードを一度に構築するのは現実的ではありません。そのため、まずは重要なダッシュボードや簡易に構築可能なダッシュボードを部分的に構築をしてみることでダッシュボードの効用を見てその他のダッシュボードを構築するか判断することになることが多いです。

ダッシュボードの画面設計のファーストステップは、構築すべきダッシュボードを具体化し全体構造を明らかにし、それらの優先順位を立てる作業から始めます。またその過程で、「どのユーザーのための、どんなダッシュボードが重要であるか。またその構築の難易度はどれくらいか」を判断するために、要件設計の過程で出てきた意見をユーザーごと、データソース(KPI)ごとの粒度で整理します。

1. 要件再整理:要件を利用目的単位、KPI単位で整理

利用目的単位で要件を整理する

ダッシュボードの利用目的ごとに、ダッシュボード利用ユーザー・利用シーン・重要KPIなどを整理します。

構築するダッシュボードの具体的内容・仕様がプロジェクト発足時点で明確になっており、要件のヒアリングを行った際に利用目的ごとに整理された情報が得られている場合はこのステップの作業は必要ありません。逆に構築すべきダッシュボードの具体的な要件が定まっていない状態でのヒヤリングとなった場合は、ヒアリングを行ったユーザーによって必要とするダッシュボードのイメージが異なることがあるためこのステップを経て組織にとって必要なダッシュボードが何なのか、ダッシュボードの具体的な目的とビジネス価値は何であるのかを明確にした方がよいでしょう。

要件整理を行った際にユーザー個人個人で複数のダッシュボード利用目的を持っていた場合は、適切な粒度の利用目的ごとに統合して整理していきます。また、利用目的を同じとするユーザーについてはユーザー郡としてまとめてユーザーのおおよその規模感も記載します。

ユーザー郡のまとめ方には自由です。要件として列挙された利用目的の量や分析の内容によって丁度良い粒度に統合・整理しましょう。

例えば、「経営層」「マネージャー」「マーケター」といった役職での整理や、「全社売上進捗状況確認」「新規顧客獲得施策」「Web広告最適化」「CRM」といった実際に実務上のチームでユーザーを統合することも出来ます。「自社」「パートナーA社」「パートナーB社」のように会社名でまとめることも可能ですが、この場合は利用目的の部分が会社ごとにきれいに分かれていることが少ないため、うまくユーザー郡として利用目的を統合できない場合もあるので注意してください。

利用目的単位での整理することで、よりビジネス上の課題がクリティカルに解決できそうなもの、ダッシュボードの恩恵を受けることができるユーザーが多く存在しているものなどが可視化され、優先度の高いダッシュボードであると判断できるます。これは構築するダッシュボードの重要度を判断するのに役立ちます。


KPI単位で指標ごとの情報を整理する

重要KPI、KPIに関連するサブ指標、KPIを分析する際の比較軸を整理します。こちらは構築するダッシュボードの難易度を判断するのに役立ちます。

まず、重要KPIを列挙したのち、それらに対応するサブ指標、KPIを分析する際の比較軸・集計データ抽出のフィルターに使用するとよい指標などを追記していきます。各データ項目には「Webログ」「広告実績」「EC実績」「メール配信実績(MA)」「営業売上進捗(SFA)」「基幹システム(顧客情報)」などの想定されるデータソースのカテゴリーや、データソースの更新頻度なども記載しておきましょう。また、データマート作成の際にエンジニアと連携しやすくするために各指標についてデータマート側で用意する指標なのか・BIツール側で関数などを用いて計算する指標なのかの区分と、計算が必要な場合は集計方法(計算ロジック)も載せておくと良いでしょう。

データエンジニアによってデータソースの調査が進んでいれば、データソースごとのデータ量のボリューム感や月間レコード増加数などの情報や、データ項目ごとの計測可否状況やデータマート作成における課題点などの情報も書き加えていきます。

2. 全体構造設計:ダッシュボードの全体構成をデザイン

利用目的単位の要件の整理、KPI単位の情報整理が完了した後はダッシュボードのデザインを行うフェーズに入っていきます。ダッシュボードのデザインではまず、ダッシュボードの全体構造のデザインから行います。このステップの目的は詳細に整理されたスプレッドシートでは、プロジェクトメンバー同士での認識のすり合わせ度合いに差異が出てきてしまうため、一度情報を集約してダッシュボードを主語にした場合の要件の要約を行うことです。

加えて

  1. どのユーザーのための、どんなダッシュボードが重要であるか。またその構築の難易度はどれくらいかの整理する
  2. 分析目的別にダッシュボードを整理することで、構築すべきダッシュボードの全体像を把握する
  3. 個々のダッシュボード間の関係性を明確にする

などの目的を果たします。

ダッシュボードの全体像が整理できればどのような整理の形式でも基本的に問題ないですが、一例として「 テーマ × シーン 」「 ツリー形式 」「 重要度 × 工数マトリクス 」での整理方法について解説します。

テーマ x シーン でダッシュボード全体構造を整理する

ダッシュボードのテーマと分析のシーンを縦軸・横軸に置き、ダッシュボードの構造を整理します。



シーンには分析のフェーズ( 全体俯瞰・KPIモニタリング → 個別分析・施策評価 → 運用 )や、ダッシュボードの閲覧頻度(月次・週次・日次)で整理します。テーマはダッシュボード利用目的、顧客のカテゴリ、ダッシュボード利用ユーザー群など、ダッシュボードの特性を適切に区分することができる軸を選択します。各ダッシュボードにはテーマに応じたわかりやすいダッシュボードの名称をつけます。このように全体構造で整理することで、「誰が・どんなときに・どんな目的で・どんなデータを使って」ダッシュボードを利用するのかの全体像を整理することができます。

ツリー形式でダッシュボードの関係性を整理する

テーマ × シーン でのダッシュボード構造整理作業の過程で名付けたダッシュボードをツリー形式でまとめ、データソースやKPIを書き加えて整理します。

複数のダッシュボードを統合した統合ダッシュボードを最上段に配置し、統合ダッシュボードに含まれるデータソースをさらに詳細に分析するダッシュボードをを配下に配置します。統合ダッシュボードは必ず1つにまとめる必要はありません。KPIモニタリングを行う上で、同時にデータを確認したほうが意義のあるデータソースは統合し、そうでなければ別の統合ダッシュボードとして作成しましょう。

重要度 × 工数 (構築の作業量・難易度・課題感)で整理する

ダッシュボードのバリエーションがおおければ、ダッシュボードごとの重要度と構築にかかる工数を縦軸・横軸としたマトリックス図で整理します。重要度はより多くのユーザーが閲覧するものや、事業における注力領域や重要領域などのデータ分析の必要性の高いものをより重要なものとして扱います。工数はダッシュボード構築にかかる見込み工数の大小や、データ処理プロセス構築における現状の課題の数から相対的に設定しましょう。

複数のダッシュボードを分ける意義

ダッシュボードの作例の中には航空機の計器盤のような、1つのダッシュボードに多数のチャートを所狭しと詰め込んだデザインのものも見かけます。
BIツールの機能としては、そのような情報量の多い巨大なダッシュボードを構築することも可能です。しかし、人間の処理能力には限りがあるため、あまりにも多くのチャートや、あまりに煩雑な導線が含まれるダッシュボードデザインはユーザーにとってはかえってノイズになってしまいます。
そのため、知りたい情報をただただ詰め込むのではなく、ユーザーの目的にあわせた必要十分な情報量に調整してダッシュボードのデザインを考えていく必要があります。ダッシュボードをユーザーや目的によって複数に分けそれらの構造や関係性をあらかじめ整理しておくことで、自ずと情報量の調整を行うことができるため、最終的なチャートのデザインも洗練されたものになりやすいです。

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次ステップに進む前に

ダッシュボードの全体構造の整理が完了したら、次ステップでは個々のダッシュボードの内容を考えていくステップ、具体的にはKPIとKPIを左右する要素への仮説出しを行い、分析軸のアイディアを膨らませていく作業になります。このとき、データが取得される状況(顧客の行動ログであればどんなアクションをとったときにデータが取得されているのか、そのアクションに影響をあたえる要素にはどんなものが考えられるか など)への一定の理解が必要になります。

ダッシュボードプロジェクトの参加メンバーの分析経験が浅い場合は、テーブル構造をみただけではそのようなデータへの理解が難しい場合もあると思います。特に、プロジェクトを推進するリーダーやアナリストがデータへの理解が足りていない場合においては具体的なダッシュボードのデザインを落としていく過程で苦労することになるでしょう。データへの理解が不十分である場合は、一旦ダッシュボードのデザインから離れて、ダッシュボードのテーマを主題にあつかった分析レポート作成をテスト的に行い、データへの理解・顧客行動への理解を深めることを推奨しています。

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3. 分析観点言語化:ダッシュボードごとに分析観点を言語化

このステップでは、各ダッシュボードに含める分析観点(分析軸)の洗い出しを行います。具体的なダッシュボードの画面設計に入る前段階の作業としてあらかじめ分析観点を整理しておくことで、ダッシュボードに含まれる要素の全体感を捉えることができるため、その後の画面設計のステップに進んだ時に手戻りし辛くなり、スムーズにデザイン作業を進めやすくなります。

データ分析やダッシュボード構築の経験値が十分にあり、分析設計が容易であるアナリストがダッシュボードの画面設計を行う場合はこのステップを経由する必要はないため次ステップのワイヤーフレームデザインに進んでしまっても良いでしょう。

具体的な作業としては以下になります。

  1. ダッシュボードの目的、KPIから思いつく分析観点を列挙する
  2. 列挙した分析観点を参考に、ダッシュボードの目的を細分化する
  3. 分析観点を細分化した目的ごとにラベリングする
  4. ダッシュボードの目的別に重要度の高い分析観点順に並べかえる
  5. 整理した分析観点を目的ごとに分け、重要度順に表に整理

これらの作業は、ダッシュボード全体構造のステップで整理した個々のダッシュボードごとに作業を行なっていきます。分析観点のアイディア出しは、ここまでのステップで作成した、ダッシュボード利用目的別要件表やKPI整理表を参考に進めてください。1~5の工程は、解説上わかりやすいように細分化させていますが、これら1つ1つ段階的に行っても良いですし、一気に5つのステップを行っても問題ありません。作業者のやりやすい粒度感で作業を行ってください。

1.ダッシュボードの目的、KPIから思いつく分析観点を列挙する

この工程では、「売上の時系列トレンドに変化はないか?」「よく売れている商品は何か?」「購入価格〇〇円以上のロイヤリティユーザーの人数は?」「ロイヤリティユーザーの特性は?(獲得チャネル・接触ページ・施策・属性..etc)」「ロイヤリティユーザーとそれ他のユーザーでは購買行動特性は異なるか?(購入商品・購買単価・購買頻度…etc)」など、ダッシュボードの目的に対応した疑問点や仮説を言語化します。またその際、分析する際の具体的なチャートイメージや分析軸の掛け算が浮かんだ場合はラフなスケッチも書き加えておきます。

2.列挙した分析観点を参考に、ダッシュボードの目的を細分化する

分析観点を網羅できたら、分析観点を参考にダッシュボードの目的を分析の目的レベルに細分化します。前述の分析観点であれば、ダッシュボードの目的「顧客の自社ECにおける購買行動特性を把握し、ECの最適な運用を行う」と定義する場合、細分化された分析目的は「購買トレンド理解」「ロイヤリティユーザー特性の把握」などに細分化することができます。

3.分析観点を細分化した目的ごとにラベリングする

細分化させた分析目的に近しい分析観点をラベリングしていきます。複数の目的に横断しそうな分析観点がある場合はそのどちらのラベルもつけます。

4.分析目的別に重要度の高い分析観点順に並べかえる

ユーザーが閲覧しやすいレイアウトで画面をデザインするという前提において、棚卸した分析観点のすべてをダッシュボードに入れ込むことは難しいことが多く、どの分析観点をチャートとして採用するかどうかを取捨選択する必要があり、その前作業として分析観点を重要度順に並び替えるの作業を行ないます。

まず、分析目的をダッシュボードの目的と照らし合わせた際により重要な分析目的はどれであるのかを整理し、重要な分析目的の順番に並べ替えます。そして、分析目的に対応する分析観点についても分析目的にとって重要度の高い分析観点の順に並べ替えます。

5.整理した分析観点を目的ごとに分け、重要度順に表に整理

整理した分析目的、分析観点を表にまとめます。
この作業工程は、以降のステップで情報を確認しやすいようにドキュメント化する意味合いが強いため、必要なければ省略してもかまいません。



紙とペンでラフに作業を進める

分析観点を次々と書き起こし整理する作業は、どちらかといえばブレインストーミングのような発散的な思考作業になります。1〜4の作業過程では、自由に発想しアイディアを次々に発想するために、慣れないうちは紙とペンをつかっての作業をお勧めします。PCなどのデジタルデバイスを使う場合どうしてもソフトウェアの仕様に思考が制限されてしまうだけでなく、きれいに図示することに気を取られてアイディア出しに集中できない事態を防ぐことにもつながります。また、このステップは多くのメンバーと意見を交わしながら行うほうが満遍なく分析観点を整理することができます。そういった面でも、複数人での共同しやすい紙とペンでの作業が向いているとステップと言えます。

おわりに

記事が長くなってきたため、今回の記事での解説はここまでにさせていただこうと思います。
次回の記事では画面設計の後半のステップの解説をさせていただきますのでご期待いただければ幸いです。

池田 俊介

Customer Consultingチーム

2014年にデジタル特化の大手広告代理店に入社。 飲料、食品、家電、アパレル、住宅、タバコ、医薬品、自動車、重機、情報通信、ITサービス、スポーツなど、さまざまな業種の企業に対してデータを軸にマーケティング活動支援を行いながら、データ分析の真髄を学ぶ。 より多くのデータに対する分析技術を学ぶため、2019年にトレジャーデータに入社。データ分析、ダッシュボード構築を中心に、Treasure Data CDP導入企業のデータ利活用の支援に従事。

得意領域 : デジタルマーケティング、データ分析(Web・Appログ、広告、アンケート、POS、CRM)、ダッシュボード構築(Google Data Portal、tableau、PowerBI、DOMO)、KPI設計、SQL、ETL、アクセス解析(Google Analytics、Adobe Analytics)、タグマネジメント、javascript

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