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ダッシュボードの要件定義

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カスタマーコンサルティングチーム データアナリストの池田 俊介です。
私の記事では、私がアナリストとしてご契約企業様の方々に対しダッシュボード構築支援を行う過程で学んだことや、ダッシュボード構築時に意識していることなどを何回かに分けてお伝えできればと思います。

前回の記事では、第1回目としてダッシュボード構築のプロセスについて解説させていただきました。

第2回目の今回は、その中の「1.ダッシュボードのゴールイメージ策定」および「2.要件設計」の前半部分の作業(以降これらをまとめて要件定義と呼ぶことにします。)とそのためのステークホルダーへのヒアリングについてより詳細に解説いたします。

要件定義の抽象度とヒアリング

具体的な定義すべき要件の解説の前に、要件定義時に要件の抽象度について意識することの意義について軽く解説いたします。

ダッシュボードの設計は第1回の記事で説明させていただいたとおり、設計すべき領域がビジネス領域からエンジニアリング領域まで多岐に渡ります。

そのため、はじめから設計すべき項目を思いつく限り一気に整理しようとすると、ダッシュボードに組み込みたいチャート、KPIの計算ロジック、データソースのテーブル構造とその接続方法…などといった細かい話題に終始してしまい、議論の収集がつかなくなる可能性があります。

これを防ぐため、要件定義のステップとしてダッシュボード構築の目的や閲覧するユーザーについて等、より抽象度の高い要件からトップダウンで整理していくことをお勧めいたします。また、抽象度の高い要件は経営層や組織のリーダーに、抽象度の低い要件は現場の人間にと、要件の抽象度を意識することはどの要件を誰にヒアリング行うべきかの判断にも役立ちます。

以降、上記の「1.ダッシュボードのゴールイメージ策定」および「2.要件設計」のステップで整理すると良い項目について解説いたします。

抽象度の高い要件

  1. 何のためのダッシュボードか、求めるビジネス価値を定める
  2. 誰のためのダッシュボードか、利用するユーザーを定める
  3. 重要指標(KGI・KPI)を整理
  4. プロジェクトのマイルストーン

1. 何のためのダッシュボードか、求めるビジネス価値を定める
ダッシュボードの目的が明確になることで構築するダッシュボードの全体像を捉えることが出来るため、まずはダッシュボード構築の目的を最優先に整理することをお勧めいたします。加えて、ダッシュボードを閲覧するユーザーや必要となるデータソースの種類など、その後の要件のあたりをつけることが可能になるためヒアリング時の負荷を下げることにもつながります。

ダッシュボードの目的は「経営層が各部門への投資金額の意思決定をデータを元にスピーディーに行えるようになる」「マーケティング担当者が過去の広告施策の成果をみて、より効果的な施策を選ぶことができるようになる」など、**構築したダッシュボードを活用することでその組織やユーザーがどのような状態に変化するか**を意識して整理すると良いでしょう。

2. 誰のためのダッシュボードか、利用するユーザーを定める
ダッシュボードを閲覧する中心となるユーザーが誰であるのかもダッシュボードをデザインする上で重要な情報です。

この場合の「誰」というのはユーザーの名前のことではなく以下のようなユーザープロファイルのことを指します。

  • 組織内のどういった役割のチームに所属しているか
  • チーム内での立場(マネージャーか現場の人間か、その両方か)
  • チームのビジネス上の目標は何か
  • すでにデータを何かに活用していたり、データ分析をしている状態か
  • データ分析への理解はどれほどか
  • ダッシュボードで表現可能チャートや機能についての理解はどれほどか

可能であれば中心となるユーザーだけでなくダッシュボードを見る可能性のある他のチームのユーザーや、広告代理店などの社外のパートナーについてもヒアリングしましょう。

また、後続の重要指標の整理につながるためダッシュボードの目的と一致することもありますが、ユーザーがダッシュボードを使って何の意思決定を行なうのかについても同時に整理します。

意思決定の整理の内容については「経営状況の把握(特定指標モニタリングによるトレンド把握と異常状況の検知による対応策の実施)」「CRMでターゲットとすべきユーザーのセグメンテーション(複数の選択肢からの選択)」「運用中の広告施策の配信停止の判断(開始・停止・継続などの判断)」「来年度の社内トレーニングにかける予算の裁定(リソースの配分や拡大・縮小)」などが例として挙げられます。

3. 重要指標(KGI・KPI)を整理
ダッシュボードを閲覧するユーザーが所属するチームのビジネス上のKGI・KPIと定義されている指標や、意思決定の際に用いる指標のうち、ダッシュボードの目的に合致した指標を整理します。KGI・KPIが整理されていない場合は、ここまでの情報をもとに見るべき指標をリストとしてまとめます。

この段階では指標の計測可否や現状のデータベースの状況などは考慮せずに、本来見るべき指標(見れると良い指標)を優先度の高いものから列挙することを心がけてください。また、各指標の関係性への理解が深まるため、余裕があればKPIツリーや指標のカテゴリー分けなどを行い、指標群を整理出来ると理想的です。

また、閲覧ユーザーの所属するチームの四半期・年間目標値など具体的なKGI/KPIの目標値がある場合は、指標の実数値だけでなく目標値も合わせてダッシュボードに描画するべきかについても確認しておきましょう。

4. プロジェクトのマイルストーン
組織やビジネス上の都合で、ダッシュボード構築依頼を受けた時点でダッシュボード完成目標時期があらかじめ決まっている場合は、ダッシュボード構築プロジェクトのおおまかなマイルストーンも定義しておきます。

抽象度の低い要件

  1. ダッシュボードを閲覧するタイミング
  2. ダッシュボードを閲覧する頻度
  3. ダッシュボードを閲覧するデバイス
  4. 重要指標(KGI/KPI)に関連するサブ指標
  5. 各指標の比較軸

1,2,3. ダッシュボードを閲覧するタイミング,頻度,デバイス
ユーザーがダッシュボードを閲覧する状況を整理します。閲覧タイミング・閲覧頻度・閲覧デバイスの3種の情報をまとめることで、ダッシュボードを見る具体的なシチュエーションが思い浮かびやすい情報として、言語化することが出来ます。

例えば「毎日出勤時に自身のデスクで15分ほどKPIの変動をチェック」「毎週のチーム会に会議室のプロジェクターで投影しメンバーの目標達成状況確認」「取引先へ向かう電車での移動中にスマートフォンで過去の取引実績をチェック」のように整理します。

ダッシュボードの閲覧頻度に加えて、ダッシュボードに描画されるデータの鮮度についても要件を確認しておくとよいでしょう。ダッシュボードの目的や組織のビジネス内容によって、前日のデータが描画されれば良いのか、ダッシュボード閲覧直前までの文字通りリアルタイムでなければいけないのかが決まります。また、データソースを手入力で作成する必要があるケースでは週1でのデータ更新や月1でのデータ更新の場合もあります。

この際注意したいのが、むやみにリアルタイムであることに固執しないことです。リアルタイムのデータをダッシュボードに描画することは技術的には可能ですが、データの鮮度の要件を厳しくなるためデータウェアハウスにかかるインフラのコストなどは日次データ更新のものよりも大きくなりがちです。

多くの場合は、前日までのデータを描画する要件でダッシュボードの目的を達成することが出来ます。データの鮮度についてはコストとトレードオフであることを念頭において、必要十分な要件を定義しましょう。

閲覧デバイスについてはダッシュボードのレイアウトに関係してきます。そのため、可能であれば具体的なディスプレイのサイズまで整理しておけるとダッシュボードデザインの際に手戻りが無くなるため、お勧めいたします。

ダッシュボード閲覧に使用する端末の情報は、アクションフィルターなどダッシュボードのインタラクティブ要素を入れるかどうかの判断にも役に立ちます。PCなどのマウスクリック可能な端末での閲覧か、スマートフォンや壁掛けディスプレイなどのクリックが出来ないもしくは苦手である端末であるかによってダッシュボードのUIは大きく変わります。デバイスのサイズと合わせてユーザーにヒアリングしましょう。

4,5. 重要指標(KGI/KPI)に関連するサブ指標 / 各指標の比較軸
工数に余裕があれば、KGI/KPIに関連性の強い他の指標や、各指標の比較軸として用いる要素についても整理します。

KGI/KPIに関連性の強い他の指標とは、KPIの値と共に変動する傾向のある相関性の高い指標のことを指します。その指標の中でも、KPIよりも先に数値変動する傾向にある指標を先行指標と呼びます。先行指標をKPIをセットで整理することは後のダッシュボードデザインに非常に役立ちます。

先行指標の例として、「KPI : 自社ECの注文数」に対しての「サイト訪問ユーザー数」「商品詳細ページ閲覧者数」「カート追加数」などが挙げられます。KPIだけでなく先行指標もダッシュボードで描画することはKPIモニタリングダッシュボードなどの状況確認系のダッシュボードにおいて、正確な状況確認を行い意思決定を行うことにつながるため事前に整理しておくことをお勧めします。

各指標をリストアップする際に、分析軸として起用するとよい比較要素(ディメンション)候補についても仮説を立てて明記しておくと具体的なダッシュボードのチャートを考える際に役立ちます。比較要素とは日付のような時系列情報や、顧客のマーケティング上のセグメンテーショングループなどのプロファイル情報、販売商品カテゴリーなどの商品マスター情報など多岐に渡ります。既存の分析レポートで使っている比較軸を参照したり、ダッシュボードの目的やビジネス内容から重要度の高いと期待できる比較軸をピックアップしていきましょう。

要件定義を行う際の注意点

ここまで解説したすべての要件項目を依頼者へのヒアリングのみで整理しようとすると、要件定義が非常に困難になります。依頼者がこれらの情報をすべて把握していることは稀です。ヒアリングは依頼者に限定せず、質問項目に合致したステークホルダーに実施してください。ステークホルダーに直接ヒアリング出来ない事情の場合は、依頼者を介して質問表への回答を依頼します。

また、ダッシュボード依頼のタイミングでは依頼者やステークホルダーが構築するダッシュボードの内容まで考えられていない場合もあり、ヒアリングしても期待した回答が出てこないことも多いです。そのような場合は、ダッシュボード構築者が過去に作成した分析レポートの内容やビジネス内容から仮説を立て、各要件をまとめることも検討します。

「データドリブン文化の醸成」が目的の場合

ダッシュボード構築の目的が「データドリブン文化の醸成」である場合、単にダッシュボードを構築するだけでこの目標を達成することは非常に難しいと言えます。

データドリブン文化の醸成のためには、ダッシュボード利用者増加のための社内サポートチーム運営や社内勉強会の実施、データが活用しやすいデータウェアハウス・インフラの整備、データ活用推進のための社員評価制度への変更、データ活用に精力的なチームの表彰や事例の周知など、複数の取り組みを並行して実施していく必要があることを依頼者に伝え長期的な計画を立ててプロジェクトを推進することをお勧めいたします。

おわりに

この記事では、ダッシュボードの要件定義の際に整理した方がよい項目の解説と、意識するポイントについて解説させていただきました。記事をお読みになった方々のダッシュボード構築プロジェクトの推進にお役に立てますと幸いです。

池田 俊介

Customer Consultingチーム

2014年にデジタル特化の大手広告代理店に入社。 飲料、食品、家電、アパレル、住宅、タバコ、医薬品、自動車、重機、情報通信、ITサービス、スポーツなど、さまざまな業種の企業に対してデータを軸にマーケティング活動支援を行いながら、データ分析の真髄を学ぶ。 より多くのデータに対する分析技術を学ぶため、2019年にトレジャーデータに入社。データ分析、ダッシュボード構築を中心に、Treasure Data CDP導入企業のデータ利活用の支援に従事。

得意領域 : デジタルマーケティング、データ分析(Web・Appログ、広告、アンケート、POS、CRM)、ダッシュボード構築(Google Data Portal、tableau、PowerBI、DOMO)、KPI設計、SQL、ETL、アクセス解析(Google Analytics、Adobe Analytics)、タグマネジメント、javascript

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