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山内さんが思う「水族館のあり方」を教えてください!(ゲスト : 山内將生さん第1回)

PLAZMA TALK #10|UDS株式会社 事業企画部 執行役員 山内將生氏

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Treasure Dataでエバンジェリストを務める若原強が各界注目のゲストを招いて対談するシリーズ「PLAZMA TALK」。

今回のゲストは、すみだ水族館の元館長、UDS株式会社 事業企画部 執行役員の山内將生さんです。

今回は、水族館 × デジタルについて考えていきます。

本対談は2回に分けて配信いたします。
水族館大国である日本の最前線を穏やかな語り口で説明される山内さん。今回は、誰しも知っている「気になっている」水族館の新しい魅力を開くトークとなっております。 初回は、山内さんが思う「水族館のあり方」をお届けします。

Topics

水族館大国、日本/水族館の数は100以上/はじまりは上野動物園/研究とサーカス/ビルトイン型とテーマパーク型/10年サイクルのトレンド/景勝地から都心へ/「わざわざ」ではなく「ついでに」行く場所/年間パスポートで普段使い/並べられた椅子/魚は見ていない?/居心地のいい場所/水族館の再定義/クリエイターとのフラットな関係/音楽、アロマ、色温度/「飼育員もクリエイター」/ベルガモットの匂い/五感のセッション/「ペンギンのために歌う」/クリエイターとの共感形成/ペンギンのため、顧客のため/「特別ではない場所」

Masao Yamauchi : Corporate Officer, Business Planning Department, UDS Ltd.
Tsuyoshi Wakahara: Evangelist, Treasure Data
Recording: 2020/04/15

※収録はオンラインにて行っています。一部背景に環境音が入っている箇所あります。ご了承ください。

若原 皆さんこんにちは。トレジャーデータの若原です。様々なゲストをお招きしてデータ活用などについてお話をするTreasure Dataの「PLAZMA TALK」。今日の素敵なゲストは、UDS株式会社事業企画部執行役員の山内將生さんをお招きしています。山内さん、よろしくお願いします。

山内 よろしくお願いします。

若原 山内さんは水族館にまつわるお仕事もたくさんされていて、東京スカイツリーにある、すみだ水族館の館長も過去にされていたこともあるわけですが、今日は山内さんの思う水族館のあり方や、少し未来も見据えて、水族館のデータ活用が進むとどんな世界が生まれるのか、という話をいろいろ聞いていきたいなと思います。

水族館大国、日本 / 水族館の数は100以上

若原 最初に、水族館自体は皆さんご存知の施設であると思うんですけど、改めて水族館っていつ頃から日本にあるものなのかとか、その辺の基礎知識的なところをご紹介いただけないかなと思うんですが、お願いできますか?

山内 はい。まず日本は「水族館大国」というふうに言われています。100以上の水族館があると言われていて、世界で水族館密度が一番高いと言われています。確か、水族館がない県は二つですね。

はじまりは上野動物園 / 研究とサーカス

山内 歴史的なお話をさせていただくと、もともと1882年、明治15年にいまの上野動物園の中に小さな水槽が展示されたというのが水族館のはじまりと言われています。

若原 明治時代なんですね。

山内 そうなんです。それから、大学を中心に、研究として水族館が全国に広がっていきました。もう一つは、サーカスの延長線上で、例えば浅草や温泉地、鳥羽など人が集まる行楽の場所で水族館が作られていきました。あとは、当時万博みたいなものがたくさん開催された流れでエンターテイメントとしての水族館みたいなものも、どんどん作られていきました。そんな流れで、気づいてみたら21世紀の現代では全国で100館以上あると言われてます。

若原 水族館大国になっていたということなんですね。そんな水族館大国で、日本で今でも数は増えている感じなんですか?

山内 そうですね。今年もまた2館、今、COVID-19の影響で当初予定していたタイミングから延びましたが、四国と沖縄で1館ずつ開業しました。今は、年に1館ぐらいずつはずっとできています。

若原 最近できる水族館で、山内さんが感じられている特長やトレンドはありますか?

ビルトイン型とテーマパーク型 / 10年サイクルのトレンド

山内 最近は、小さなコンパクトタイプの水族館が主流になっています。「小さな」というのは、室内で商業施設に併設されたタイプの水族館が主流になってきています。

若原 水族館という建物の中で水族館だけあるという状況ではなく、ビルトインされた水族館というか、複合的に要素の一つとして組み込まれている水族館というのが増えてきている感じなんですかね?

山内 そうですね。10年ごとに変化してきていると言われています。

若原 10年サイクル的な話ですか。

山内 そうです。1990年代では、レジャー開発の中で大規模な水族館が作られていきました。

景勝地から都心へ

山内 テーマパーク的な発想で、横浜の「八景島シーパラダイス」がまさにそういう感じで、遊園地と併設されて作られています。2000年頃にでき始めたのが、少し小さくて、八景島シーパラダイスの半分ぐらいの大きさのものが、観光名所の近くに作られ始めました。そこから2010年代になると、今言ったコンパクト型のビルトインの水族館ができ始めていまして、どう違うかというと、だんだん都心に近づいてきています。

1990年代に作られたものは郊外で、そこ自体が目的のテーマパークだったのが、2000年頃には、海が近い観光地の中、名所、景勝地で水族館が作られるようになり、2010年代になってからは、海とは関係ない完全に都心の商業施設の中に作られるようになってきていると。そんな違いがありますかね。

若原 訪問する側にとってみると目的が違う感じでしょうか?

「わざわざ」ではなく「ついでに」行く場所

山内 そうですね、もともとテーマパーク的な発想で、遊園地と同じような感じで大規模に作られてきたものが、最近のコンパクト型は商業施設内にあったりします。買い物ついでとか、30分ぐらいで行けて、ご飯もレストランで食べて、映画を見るような感覚で水族館に行くというような。1日費やしてわざわざ水族館に行くというところから、少し消費者のスタイルが変わってきている感じがしますね。

若原 いい意味で、特別ではなく日常的なものになってきているというか、より一般の方々の日常生活に馴染むものになってきているというか、そういう見方もできるかもしれないですね。

年間パスポートで普段使い

山内 まさにそうなんです。そこで同時に「年間パスポート」が各水族館で始まって、都心の水族館であればあるほど年間パスポートはたくさんの方が加入いただけるわけです。だから、オフィス帰り、あとは幼稚園から子どもが帰ってきたあと、ママと子供が毎日のように公園に来るように水族館に来たりとか、そんなニーズがすみだ水族館では見られました。

若原 山内さんが新人研修で紹介するときに、質問をいくつか投げかけていたというエピソードがすごく面白いなと思ったんです。そこを切り口としながら「すみだ水族館」のことをご紹介いただけますか。

並べられた椅子

若原 山内さんがすみだ水族館の館長でいらっしゃったときに新人研修で投げかけた一つ目の質問は、

“昔「大水槽の前に椅子をたくさん並べなさい」という指示を出したことがあります。この指示を出したのは、なぜでしょう?”

というものですよね。これは、ちなみになぜですか?というところを伺いつつ、すみだ水族館の一つの特長みたいなところをお伺いできればなと思います。

山内 ちなみにこれは、新人は誰もわからないんです。

若原 そうですよね。僕もこれ、事前にお話があったのでなるほどと思ったんですけど、確かにわからないですよね。全く想像つかないというか。

魚は見ていない? / 居心地のいい場所

山内 水族館というのは、水槽があって魚を見る場所と、一般的に動機づけとして定義されていると思うんです。ですが、お客様を見る限りは、そんなに集中して水槽を見ているという印象は僕にはなかったんですね、水族館を開業してから。夏休みの自由研究をやらされている子どもぐらいです、真剣に見ているのは。なので、魚の名前の質問がある人なんて、まずいない。でも、皆さん楽しそうに過ごされている。そこでひらめいたのが、水のある空間というのが居心地がいいのかなと。暗くて、ブルーライトで。だったら、その「居心地」のところに商品を乗せていったほうがいいんじゃないかと思ったんです。すみだ水族館は、開業してから200脚椅子を買って、水槽の前に徐々に椅子を並べていった。そうしたら、見事水槽前に皆さん座って、ずっと、ぼーっとしているという、そういう光景が現れたんですね。順繰りに展示を見るんじゃなくて。やっぱりそこにいたいんだな、というニーズを見出して、見事に応えられたと僕は思っているんですけど。居場所を作ってあげられたかなと。

若原 すみだ水族館の一番大きい水槽ですかね。

山内 そうですね。高さ6メートルの。

若原 一番大きい水槽の前に大空間が広がっていて、そこに気軽に腰掛けられるような、背もたれのないソファがたくさん並べられている風景ですね。ここで、さっきおっしゃられていたように、魚を見ている人もいれば、水槽のほうを向かずに何か他のことをしているかもしれないんだけど、この空間で気持ちよく過ごしているシーンが見かけられるんでしょうか?

山内 そうですね。水槽に背中を向けたりしている人も普通にいますし、水槽を見ている人もいる。でも結構友人同士でお話をされたりしてて、話の内容は魚の話じゃない。だけど、なぜか一等地に座りたがるんです。ここには何か違う商品性があるなと。

若原 おっしゃる通りですね。これは、もちろん「魚を見る」という目的で、この空間を楽しんでも勿論いいわけだと思うんです。ある意味、そういう魚の話をしない方たちにとっても、もうめちゃくちゃ贅沢で豪華な内装という言い方がいいのかわかりませんけど、何か別の目的で過ごす上での非常に贅沢な環境として、その場所を好きになって、来ていただいてる。そういう新たな見方ができるというのは非常に面白いですね。

山内 そうですね。

水族館の再定義

山内 心を開放して、年間パスポートもたくさん売りたかったというのもあったんですが、サードプレイス的なものが大切みたいに言われてますけど、水族館はそういう場所の一つになるんじゃないかと実感できましたね。

若原 魚を見に来る場所でもあるけれども、思い思いにその場所の良さを感じながら過ごす場所として水族館を再定義されたというか、そういった作り方が、「すみだ水族館」の大きな特徴の一つなのかなと改めて思いました。

山内 ありがとうございます。都会行くと、乾いているからかもしれないですね。潤いを求めるというか。

若原 確かに、癒やしみたいな言葉もだいぶ前からありますけど、まさに「癒やしの空間」ですよね、こういうふうに写真を拝見すると(※トップ画像をご参照ください)。

山内 そうですね。

若原 ありがとうございます。

クリエイターとのフラットな関係

若原 先程の新人研修のお話に戻ると、研修で投げかけられていた質問で、もう一つ面白いなと思ったのが、

”すみだ水族館を作って運営していく上で、たくさんのクリエイターの方々が集って協力してくれています。なぜこんなに多くのクリエイターの方々が集ってきたのでしょうか?四角の中を埋めてください。”

という質問があって、

“問題:すみだ水族館=▢▢できる場所”

という形で投げかけられているんですよね?。

これは、実は山内さんには事前に色々なお話を伺ってはいたんですが、コレに関しては僕は今も答えがわからないんです。こちらはどんな答えになるんでしょうか?

山内 水族館というのは、従来は飼育係出身の方が、予件を出して、設計会社とゼネコンで作ると出来上がるというものだったんですけど、すみだ水族館では、クリエイターのアイデアをたくさん使って作ってみようということで、デザインがいい、かっこいい水族館を作ろうみたいなことで始まったんです。ところが予想外のことが起きまして。彼らの働き方と感覚を見ると、水槽の形、デザイン、色や魚、そういうこと以上に、水族館をやっているということに、とてもシンパシーを感じてくれていて、クリエイターたちとフラットな関係がつくれたんですね、受注者・発注者じゃなくて。そういう中で、「すみだ水族館は〇〇できる場所」というのは、お客様も含めてなんですけど、いろんな方が表現をできる場所というか、そういう表現のディテールの集積で、何か違う付加価値みたいなものがどんどん生まれていく場所なのかなというふうに定義づけをしたというのが、問題の解答です。

若原 集まってくださったクリエイターの方々、様々なクリエイターがいらっしゃると思うんですけど、その方々、それぞれにとっての表現の場であると。自分が今までクリエイターとしてやってきた仕事を、水族館でどういう表現ができるのか、ある種チャレンジができる場所と捉えられていただいて、共感していただいた。そんな感じなんでしょうか?

音楽、アロマ、色温度 / 「飼育員もクリエイター」

山内 そうですね。なので、椅子を置く意味といった話は、こっちからはインプットしますが、例えば、照明の色、温度、音楽の音色やアロマの匂いとか、そういうものに対してこちらからは与件を出さないわけです。で、彼らとは何度もミーティングして、彼らの表現が僕らがやりたいことを明らかにしてくれるというか、そんなプロセスで進んでいきましたね。

若原 かなりいろいろなやり取りがなされた上で、だんだん答えが見えてくるみたいな、結構エキサイティングなプロセスだったんじゃないかなって。どうでしょうか?

山内 そうですね。感動の嵐でしたね。すごいなクリエイター、って思いましたね。水族館で強いのは、飼育員というクリエイターがいるので、いろいろなジャンルのクリエイターたちと対応におつきあいをさせていただくことができました。

若原 なるほど、飼育員もクリエイターであると。

山内 そうなんですよ。

ベルガモットの匂い

山内 この魚の匂いは、空間で嗅いだらこんな感じというのが共有されるんですよね。例えば、オレンジ色の魚がいたとして、「魚の匂い」というのは魚の匂いなんですけど、それを例えば、「ベルガモットの匂いだよね」という提案があったとき、「そうそう!そんな感じ」というのがだんだんみんなで共有がされるようになってくる。もうほとんどトリップしている状態ですけど。

若原 それはすごいですね!魚のことをよく知っているからこそ、言語化できて、誰でもがわかりやすい例えができるみたいな、そういうことなんだと思うんです。そういうコミュニケーションが縦横無尽になされていく状態って、いい意味で非日常というか、すごく面白い感じありますね。

山内 そうですね。ほかの水族館の人は誰もわからないんですよ、話しても。

若原 そういったコミュニケーションを経た上で、クリエイターの方々の表現が水族館の環境であるとか、内装などに落ちていった具体例っていくつかご紹介いただくことはできますか?

五感のセッション

山内 例えば、一番新しいと当時言われたのは、水族館の中に「アロマ」を入れたことですかね。これは季節とか、昼と夜で匂いが変わるんです。さらに、それに合わせてアクティビティを作っていく。ワークショップをやったりとか。

若原 「季節に応じて」というのは、例えば、ある季節をとったとき、どんな香りにするのかということと、そこで行われるワークショップ的なイベントのテーマを上手くリンクさせるというイメージでしょうか?

山内 そうです。例えば、夏は集客期なので、夏にイベントをやろうというとき、金魚の展示を企画展でやりますと。そのゾーンに、まず「音」「光」「照明」「アロマ」などを入れるんです。
アロマの話をすると、すみだ水族館というのは下町でもあるし、金魚ってちょっと懐かしいですよね、みたいなところから、アロマの会社から出てきた提案が、「りんご飴の匂い」なんですね。言われてみると、りんご飴の匂いなんですけど、共通しているのは、懐かしいというテーマが共通しているわけです。「視覚」も懐かしく作るんですけど、「嗅覚」も懐かしく作る。ちなみに「音」でいうと、少し切ない音が出てきたんですね、Eマイナーの。確かに、気持ちは上がるんですけど、少し切なさがどこかあるような音が出てきて。それを相乗させていって。それまでは個別にミーティングをやって、最後に空間でセッションするので、大変なんです。一人のクリエイターが、「いや、それじゃない」と言うとやり直しになってしまうのですが、五感のセッションをするのは面白かったです。

若原 一つの目的に対していろいろな感覚を刺激するという話の中にアロマがあったり、音楽があるんですね。

山内 やっぱり目で見ているわけじゃないんです、水槽って。

若原 来場する方って、匂いがこうだな、音がこうだなとか、個別の認識は、もしかしたらしていないかもしれないんですが、総合的に受け取る感覚としては、何もないときよりも確実にその目的に合った感覚を何かしら・・。

山内 そうですね、立体的な体験が提供できている気がしてました。

「ペンギンのために歌う」

山内 他には、音楽のイベントをやっていました。いわゆる「ナイトライブ」です。有名な歌手の方が来て、夜の水族館でナイトライブをするんです。広場があって、広場にはペンギンの大きな水槽があります。オープンな水槽というか、水槽の上が開いていて、空気がペンギンと共有できている空間なんですね。なんとなく集客イベントで始めた音楽だったんですが、季節ごとに、まずアロマが入り、飲食のメニューがデザインされ、ということがあったんです。最大の特長は、音楽を実際に奏でる、歌を歌うアーティストが「ペンギンのために歌う」というテーマにしたんですね。なぜなら、ペンギンはもう17時には寝るんです。水族館は、21時までやっているんですけど。なので、ペンギンがびっくりしない音でライブをやるということで。

若原 ナイトライブだから、ペンギンが寝たあとに行われるライブということですね。

山内 そうなんです。割と暗めの空間にして。どうするかというと、アーティストは結構キーが高い方で、何度も事前に足を運んで音合わせをして、飼育係にジャッジをしてもらうんです。この楽器を使っていいかな?とか。

若原 ペンギンにとって大丈夫ですか、と。

山内 そうなんです。それで、どうなるかというと、すみだ水族館のペンギンと一緒にいる空間でしかできない、アコースティックな音とのライブができる。歌手は、普通この楽器の環境じゃ歌わないよ、という環境で歌ってくれました。途中からお願いもしたんですけど、結果、ペンギンに対するメッセージを勝手にMCで話すアーティストが多くて。

若原 いろいろな方が、ペンギンに対するメッセージをMCでをされたと。

山内 そうなんです。それに、水族館側で応えたというのも大きかったです。ペンギンに興味があるなと思ったら、ペンギンの生態や、飼育係がどんなふうに働いてエサをあげたりしているのかというのを、バックヤードを1時間、2時間一緒に巡ったりして、共感を高める作業を一緒にしました。、「ペンギンのためにメッセージしたい」というのは我々も望むところです、というのをお伝えしました。

クリエイターとの共感形成

若原 クリエイターの方と協業するというと、インプット側も真剣じゃないと、応えてくださるクリエイターの方もなかなか本気になれない。中途半端な感じで、いい感じによろしくやってよ、みたいな感じだと、結果もどうしても中途半端なものになることも少なくないのかなと思うんです。でも、水族館側もちゃんと真剣に応えたことで、いい意味で相乗効果が生まれて、そういった素敵なアウトプットがいろいろ出てきたというのは、すごく素敵な話だなと思いました。

山内 そうですね。僕、上手くいくと感動して泣いていましたよ。

若原 よくマーケティングの世界だと、「顧客を中心に考えましょう」という話はよくありますけど、その話は、水族館の顧客を飛び越えて「ペンギンを中心に考えましょう」みたいな、そういうスタンスもまた新しいですよね。

山内 そうなんです。

ペンギンのため、顧客のため / 「特別ではない場所」

山内 最初に、集客のために始めたといいましたが、集客のためにペンギン水槽の横の広場で音楽をやることが、顧客のためになっていないことに気づいたんですね。

若原 それはどういうことなんですか?

山内 お客様から一貫して「こんな大きな音でペンギン大丈夫なんですか?」という問い合わせがずっとあったんです。これも最初はクリエイターからのアイデアだったんですけど、お客様もペンギンのためにやっているほうが楽しいんです。お客様は水族館にもてなされている感じがして、どうなるかというと、ステージ周りはちょっと混みますが、アーティストのほうを見ないで、水槽を眺めながらライブに参加する。さっきの水槽を見ているわけじゃないという話と一緒で、音楽を聞きに来ているわけじゃないという状態を作ることができましたね。

若原 そういう意味だと、ライブのときのお客様の振る舞い方も含めて、多様な目的、多様な使い方を受け入れる場として、水族館を基本的に考えられているというのは面白い話だなと改めて思います。

山内 ありがとうございます。なので、地元の墨田区民は、定番の夜祭みたいに子ども連れですごく来てました。屋台、夜店に行く感じで来てましたね。おばあさんと手をつないで来ていました。

若原 それも冒頭にお話ありました、いい意味で特別感がないというか、ふらっといつもの感じで行けるという、そういう場所に慣れているということの表れかもしれないですね。

山内 そうですね。

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最後までお読みいただきありがとうございます。
第1回は以上です。いかがでしたか?
山内さんとの対談は最終回 魚たちの「パーソナライズ」もデータで実現できる? (ゲスト : 山内將生さん第2回)へ続きます。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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