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「デジタルトランスフォーメーションの源泉は中国にある」|PLAZMA Roppongi トークセッション

人口14億人を抱える巨大市場・中国。同じ東アジアの国でありながらその実態は日本で広く知られていない部分も多く、特にビジネス面では日本企業の参入が難しいという情勢も聞かれます。「特殊な国」。日本にいる多くの人にとっては、そのようなレッテルのもと、中国で今何が起きているのか、正しく知ろうとしていないだけかもしれません。

現実には、中国では巨大なマーケットに、デジタルトランスフォーメーションのヒントが詰まっています。2018年7月18日に開催した「TREASURE DATA “PLAZMA” Roppongi」では、現代中国のビジネスに精通した2人、ユーザーエクスペリエンスのコンサルティングを手掛ける株式会社ビービット エグゼクティブマネージャ・エバンジェリストの宮坂 祐 氏と、トランスコスモス株式会社 海外事業統括DEC事業戦略部エグゼクティブビジネスディベロップメントマネジャーの畠山 導人 氏を交えて、中国のデジタルトランスフォーメーションの現状について、トークセッションを行いました。今回はその様子をお伝えします。聞き手はトレジャーデータの堀内 健后です。

日本企業が中国で成功できない、政治的要因以外の理由とは

なぜ、日本企業は中国で成功するのが難しいのでしょうか。よく言われるのは、政治的要因による規制ですが、宮坂氏によれば、「原因はそれだけでは無い」。

「中国企業の進化は驚くべき勢いで進んでいます。おそらく、日本で一般の方々が持つイメージを遥かに凌駕するスピードで進化していますね。そのため、中国企業と日本企業の間ではすでに大きなギャップが生まれています。結果として、両者の感覚が合わず、ビジネスが成り立たないのではないでしょうか」

アリババ、テンセントなどのユニコーン企業を中心に、中国でイノベーションが起こっていることを私たちはニュースなどで頻繁に耳にするようになりました。しかし、現地をよく知る宮坂氏のコメントからは、その進化が私たちの想像を超えていることがうかがえます。

「これから、中国で当たり前のように使われているものが日本で導入されるという流れがどんどん起こるでしょう。QR決済は日本でもようやく注目されるようになってきましたが、中国ではテンセントのWeChatPayが先行しています。しかし、テンセントは、WeChatPayをただの決済手段としてだけでなく、そこから得られた決済データを活用して、ユーザーエクスペリエンスをよりリッチにしようとしています。その一例が、シェアサイクルのMobikeです。テンセントはMobikeに出資していますが、これはWeChatPayの利用シーンを増やし、決済サービスとしての価値を上げると同時に、ユーザーの移動ログを収集してビッグデータを得ようとしています。このあたりのエコシステムを作るのが非常にうまいですね」

都市部ではスマートフォンの普及が急速に進んでおり、これも中国のデジタルトランスフォーメーションを支えている一因となっているようです。畠山氏によると「中国の都市部には8億人が住んでいますが、そのうち98%がスマートフォンを所有しており、その前提でインフラが構築されています。多くの日本人が知らない間に、中国はスマートフォンをベースにした社会を作り上げてしまったのです」

中国平安保険に見るデータ活用の秀逸さ

データの活用が進んでいるのは、テンセントだけではありません。宮坂氏は、中国の4大保険会社のひとつ、時価総額26兆円を誇る中国平安保険を例に挙げました。

「中国平安保険は、金融商品だけでなく、データを活用した周辺サービスが非常に充実しています。顧客のお困りごとを解決するために、20個以上のアプリをリリースしていますが、それを1つの共通IDで利用できるようにして、高いユーザビリティを実現しています。その中でも特に利用されているのが『グッドドクターアプリ』です。およそ2億人が利用しているこのサービスは、中国平安保険が選定した信頼できる医師にチャットで相談することができ、必要ならそこで時間を指定して実際に診療を受けに行くことも可能です。中国は病院も満員になることもあり、診察を受けるのも一苦労という状況がありますが、このアプリを利用して予約するとスムーズに診療が受けられます。

中国平安保険の取り組みは、ただ便利なサービスを提供して終わりではありません。グッドドクターを利用したというデータがすぐに反映され、担当している営業マンが保険の適用について紹介したりします。こうして、顧客満足度を向上させ、利用者を増やそうとしているのです。こういう取り組みは、日本の保険会社も参考になるのではないでしょうか。

また、ポイントを付与することで、日々の行動をアプリに提供してもらえるようにしています。こうすることで、データを着実に収集し、さらに顧客満足度を向上しようとするのです。顧客に寄り添う仕組みも構築して、高品質なサービスを提供しています」

中国に過去の私たちが抱いていたような「安かろう悪かろう」というステレオタイプのイメージ。しかし、これはデータの活用により急速に払拭しつつあるようです。

圧倒的な「スピード」と「試行錯誤の数」が変革の源泉に

このような取り組みが進んでいる背景には、中国を取り巻く環境が大きいと畠山氏は指摘します。「保険に限らず、中国では同業のプレイヤーが数多くいます。競争原理も日本以上に働いているため、生き残るにはスピード感を持って良質なサービスをどんどん提供することが求められますね。」

また、データを活用することの影響は、中国社会自体への変化にも繋がっていると宮坂氏はいいます。「個人の行動歴を収集した与信データベース、芝麻信用(ジーマ信用)が普及することで、その点数が高いことによる恩恵を受けられるようになります。そのため、信用を上げるために良い行いをしようという動きが出てきています。かつて、上海も交通マナーが悪くひどかったですが、今では追い越しや無駄なクラクションが鳴ることもありませんね。これも、交通マナーを守ることでベネフィットを享受できることが大きいです」

また、宮坂氏は中国の決済事情についても言及しました。「スマートフォンを用いたキャッシュレス化が実現しているので、現金が必要ありません。ATMなど現金を管理するコストが削減しているので、社会が効率化しています」

中国に精通している宮坂氏のコメントからは、その変化がいかに大きいかがうかがえます。畠山氏はそれに加味する視点として、中国は壮大な社会実験を行なっていると見ています。

「毎月のようにイノベーションとともに大きな変化が起こっています。もちろん、それだけの急速なスピードで物事の変化が進んでいるので、問題も発生します。最近だと、シェアサイクルサービスで利用されている自転車が放棄されている様子がニュースで取り上げられていました。ただ、こういった問題も、国全体で解決しようという姿勢が見えます。前向きなチャレンジをして発生した問題については中国政府も寛容で、問題が発生したらすぐに対応します」

 

デジタルトランスフォーメーションの種は中国に眠っている

中国の先進的な状況に直接触れることで、日本企業の経営者にも心境の変化が生まれているようです。宮坂氏は日本企業の経営層を対象に現地旅行を開催。その時の様子をこのように語ります。

「まず、デジタルトランスフォーメーションの概念が大きく変わりますね。もともとあるサービスをデジタルに置き換えればいいと考えている方も、中国の現状を見ると驚愕します」

このような状況を踏まえ、宮坂氏は「中国が日本を凌駕している分野は想像以上に多い」と指摘した上でこのようなエピソードを紹介しました。「日本の出版社に中国の現状について取り上げる書籍の提案をしても、「売れないから」という理由で度々却下されます。見たくないものから目を背けている感がありますね」。

また、畠山氏は「中国の現状は知った方が良いです。デジタルトランスフォーメーションのヒントもありますし、自らの知見を広げるチャンスです」と中国の現状を知るメリットを強調しました。


中国で今何が起きているのか。「TREASURE DATA “PLAMZA” Shibuya」で5日間に渡って行うセッションの2日目のテーマは「China Day」。連続的なイノベーションが渦を巻く中国ビジネスの現状を、「Digital x Business」の切り口からご紹介します。

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