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企業がデジタルトランスフォーメーションに失敗する理由5選 (ゲスト: 大宮拓さん第1回)

PLAZMA PARTNERS #6|Speee PAAM事業部 事業責任者 大宮 拓氏 × トレジャーデータ株式会社 若原 強

PLAZMAに参画するソリューションパートナーを紹介する、「PLAZMA PARTNERS」シリーズ。
今回は、デジタルマーケティングおよびデジタルトランスフォーメーションの推進をサポートし続けているSpeee株式会社のご紹介です。
株式会社Speee PAAM事業部 事業責任者の大宮 拓さんをお迎えし、これまでの経験からまとめられた「DXが失敗する理由5選」について詳しく伺います。
聞き手は、トレジャーデータのエバンジェリスト若原です。若原の前職、働き方研究家時代の秘蔵ネタも飛び出し、前後編を通して社内調整に悩むDX担当者必聴の内容をお届けします。

 

Topics

マーケティングにおけるデータ活用/DXがうまくいかない5つのポイント/①あいまいな目的に/導入自体が目的に/一人歩きするキーワード/ふわっと始まるとふわっと終わってしまう/目的を整理し直す/想起とバズワード/②データ活用への過度な期待/課題はいきなり解決されない/職人芸にデータで勝つ/何年もかけて回すPDCA/アカウンタビリティ/社内を説得する方法/イノベーション疲れと社内コミュニケーション/③必要な体制がわからない/スキルセットの解像度/意識を変えるだけでは変わらない/採用すべき人材の条件/④データへの理解不足/構造化データ、非構造化データ/部署間の理解水準/「データ」という言葉の広さ/⑤推進者の不在/壁を突破していく人物が必要/担当者の思いや熱量/ジョブローテーションの功罪/ドキュメントの上手な残し方/誰も得しない「丸投げ」/正しい協業のあり方

 

Taku Omiya: Predictive Analytics And Marketing Div. Business manager, Speee Inc.
Tsuyoshi Wakahara: Evangelist, Treasure Data
Recording: 2020/04/16

※収録はオンラインにて行っています。一部背景に環境音が入っていますがご了承ください。

若原 皆さん、こんにちは。トレジャーデータの若原です。様々なゲストをお招きしてデータ活用などについてお話をするTreasure Dataの「PLAZMA PARTNERS」。今日の素敵なゲストは、株式会社Speee PAAM事業部事業責任者の大宮拓さんをお招きしています。大宮さん、よろしくお願いします。

大宮 よろしくお願いします。

マーケティングにおけるデータ活用

若原 Speeeさんは様々な企業さんに対してデジタルマーケティングであるとか、デジタルトランスフォーメーションの推進を様々な面でサポートされていると思うんですが、今日はそういったことを進める上でポイントになるようなことを一つテーマにしてお話できたらなと思っています。事前に会話させていただいたとき、そういうポイントに対してお互い持ちネタあるじゃん、みたいなことがありまして。なのでお互いの持ちネタを紹介しながら、意見交換していくみたいな時間にできたらなと思っています。よろしくお願いします。

大宮 はい、よろしくお願いします。

若原 では最初に、簡単に大宮さんの自己紹介をお願いします?

大宮 はい、ありがとうございます。改めて、株式会社Speee PAAM事業部 事業責任者の大宮と申します。私は、2012年にSpeeeに入社しまして、Speeeではデジタルマーケティング支援を、大手クライアント様を中心に最初担当しています。その後、アドテク事業の立ち上げとネイティブアドプラットフォーム事業の立ち上げを担当して、2018年からPAAM事業という、マーケティングにおけるデータ活用支援のサービスを提供する事業の事業責任者をやらせていただいています。トレジャーデータさんとは、このPAAM事業という事業立ち上げのときからいろいろプロジェクトをご一緒させていただいております。

若原 はい、大変お世話になってます。ありがとうございます。

大宮 いえいえ。で、私もPAAM事業では横浜・F・マリノスさんの支援を担当させていただいたりとか、BtoB企業なんですけど、リンクアンドモチベーションさんという企業さんのモチベーションクラウドというサービスのお手伝いをさせてもらったりとかしているんですけど、そういったプロジェクトを担当する中で、実際にトレジャーデータさんを活用させてもらっています。

若原 ありがとうございます。ご経歴を伺っただけでも本当に様々なご経験をされてきたんだろうなと改めて思いますが、これまで大宮さんが、いわゆるデジタルトランスフォーメーションを企業が推進する上でのポイントを5つにまとめられているというお話を伺いました。そのポイントのまとめ方も、失敗してしまう理由という切り口でまとめられているのは非常に興味深いなと思いますので、それをご紹介いただきながら、いろいろお話ができたらなと思います。

大宮 はい、ありがとうございます。世の中的には成功事例というか、上手く行った話を基本的には中心にされていることが多いかなと思います。皆さんの興味もそっちのほうが大きいかなとは思うんですけど、我々もサービスを作っていく過程で、むしろ上手く行かない事例をちゃんとまとめていて。その理由を明らかにしてサービスに還元していくということをやったほうがいいのではという考えを結構持っているんですよね。それはSpeeeという会社の特徴かもしれません。

若原 確かに、失敗ということが日本だとネガティブに捉えられがちみたいな局面も少なくないと思うんですけど、失敗って見方を変えるとすごく大事な学びの機会というふうにも言えると思います。そういう意味だと、失敗するポイント5つというのは、要は学べるポイント5つがまとまっているというに捉えられるかもしれないですよね。

大宮 失敗理由は5つぐらいにまとめられるんではないかなと我々は考えています。これはどういうところからこの発案になっていったかというと、我々もサービスをスタートして2年ちょっと経ちまして、おかげさまでトレジャーデータさんからご紹介いただいたり、もしくは我々が、もともと担当させていただいているクライアントさんからご相談をいただいたりとか、複数のケースでお引き合いをいただいています。がご相談いただくときには、「上手く行ってない」「これから上手く行かせたい」とか、そういったお話が多いわけなんです。その理由と、あとは実際に我々が支援している中で、なかなかうまく行かないと我々自体も課題を感じていることもあったりするので、その辺りを体系的に整理していくと、おおよそ5つぐらいに分類できるんじゃないかなと考え「失敗の理由 5選」としてまとめている内容になっています。

失敗の理由5選まとめ


DXがうまくいかない5つのポイント①

あいまいな目的に/導入自体が目的に/一人歩きするキーワード/ふわっと始まるとふわっと終わってしまう/目的を整理し直す/想起とバズワード

あいまいな目的に/導入自体が目的に

大宮 一つずつ解説していきます。まずとても大きい要因の1つ目として「目的が曖昧である」ことが失敗する理由の大きな要因になっているなと思っております。これは、キーワードが先行している感があると思っていまして。

失敗の理由5選①
若原 そのキーワードで表されているものを導入する目的があるというよりかは、導入自体が目的になっちゃう的な話ということですね。

大宮 はい、そうですね。

一人歩きするキーワード

大宮 例えば、今世の中的には「DX」というキーワードが非常に大きいテーマになっています。DXというそのものが、ある意味「手段」だと思うんですね。ですが、それが目的化してしまっていたりとか、DXをやるのは決まっているんだけど、実際それで何をやるのが決まっていない、とかってあると思うんですよね。それってほかのキーワードだと、例えば「AI」や、さらに最近流行っているキーワードで言うと「DtoC」とかそうかもしれないなと思っていまして、割とキーワード先行型で進めることが多いかなと思うんです。

若原 確かにそうですね。いわゆるバズワードと言われるくくりに結果的になってしまう言葉って、結局こういうことになることがきっと多いんでしょうね。

大宮 そうですね。で、DXを中心に、テクノロジーやデータというのは存在していると思うんですけど、そのデータ自体も、データを使ったらなんとかなるというか、データ使って何かできないの?という起点で物事が始まっていることが多いなと思います。それは目的というよりは、「一旦、やってみましょう」で始まっていることがすごく多いなと思うんですけど、結果的にそれで進めていくと、なかなか目的に達していかないというか…。最終的には企業活動、事業が伸びていくということにデータを使っていきたいはずです。それをやっていくにあたって、例えば新規のお客様を獲得したり、既存のお客様のロイヤリティをもっと向上させていきたいなど、いろんな切り口があると思うんですけど、切り口を改めて整理してみると、「今のデータ収集方法だと全然できなくない?」とか、「今の貯まっているデータだと、そもそもその目的に達せないよね」というようなことが、後から発覚するケースって結構あるなと思っているんですよね。

ふわっと始まるとふわっと終わってしまう

大宮 目的が曖昧で始まっているプロジェクトって、これはデータ活用だけじゃないですよね。ふわっと始まると、大体ふわっとして終わってしまうことってあると思うんです。この5つの理由の中の一つの大きな理由として、目的が曖昧だということがあるんではないかなと思っております。

若原 これは確かにいろいろなところで起こってそうですね。テーマも然り、企業の業界、業種も然り。これはちなみに、大宮さんがこういう場面に直面されたとき、どんなふうに対応されているというか、これまでのご経験からポイントはありますか?

目的を整理し直す

大宮 すごい当たり前の話かもしれないんですけど、やっぱり目的を整理し直しましょうということをお伝えするのが基本かなと思っております。

若原 確かにそうですね。それ自体、意識できていないということですもんね。

大宮 そうですね。ある意味我々のサービス提供のスタンスかもしれないんですけど、請け負っているというよりは、パートナーとして一緒にやっていきたいという思いが強くありますので、そうするとクライアント様の課題を解決するとか、事業がそもそも伸びていくということに主眼を置いたプロジェクト支援をしたいなと思っていて。

なので、目的が曖昧で、かつそれが達成しにくい場合は、「このままじゃダメですよね」ということをちゃんと伝える義務がパートナーにはあると思っていて。なので、ご相談いただいたときには、必ず目的を整理するということはやりますね。

想起とバズワード

若原 あとは、そもそもバズワードになっている状態って、もしかしたら、僕らみたいな立場の側にも改善の余地がある、やれることがあるというか。DXにしろMAにしろ、言葉として想起してもらえているということはある意味ありがたいことでもあったりするじゃないですか。想起してもらいたくても、もらえない分野もある中で想起してもらえているというのはありがたい状況のような気もするので、「曖昧な状態で話を進めちゃダメなんだよ」ということをいかに啓蒙していけるかは、僕らとしてももっと意識を持って活動していけると、より良くなるんじゃないかなというのは改めて思いました。自戒も込めて。

大宮 若原さんのおっしゃる通りで、日本国内においては「CDP」というキーワードは、恐らくトレジャーデータさんで普及させてきているということは間違いないと思いますので、それがどういう風に使われていくべきかというところの、目的に立ち返ることもやっていく必要があるかなとは思いますね。

若原 確かにこれはまず、ここが整わないとそもそも話がとっ散らかっちゃうというのは本当にそうだなと思います。

大宮 はい。

DXがうまくいかない5つのポイント②

データ活用への過度な期待/課題はいきなり解決されない/職人芸にデータで勝つ/何年もかけて回すPDCA/アカウンタビリティ/社内を説得する方法/イノベーション疲れと社内コミュニケーション

データ活用への過度な期待/課題はいきなり解決されない

大宮 2つ目です。これもよく出くわす事例なんですがけど、データ活用への過度な期待というのがあります。

失敗の理由5選②

大宮 これはデータを使えば課題が解決されるということに一足飛びに行けると思っている節があるなと思っていまして。データもテクノロジーもそうなんですけど、それを使ったからといっていきなり課題が解決されるということはないと思うんですよね。なんとなく先入観が先行しているかもしれないんですけど、自分たちがなかなか想像できないがゆえにものすごく期待が高まっていて、導入してみたものの、半年後とかでなかなか結果がでなくて、このプロジェクトどうなっているのか? みたいになってきて、最初の期待値とそのあとの結果が擦り合ってなくて、プロジェクト自体がシュリンクしていくことってあるなと思っているんですよね。

職人芸にデータで勝つ/何年もかけて回すPDCA

大宮 いま行っている横浜マリノスさんの事例をお話します。そこでは、「集客予測」「来場予測」みたいなものがあって、スポーツ畑は長らくその辺りを職人芸で皆さんやってきてらっしゃるんですね。それをデータを使って機械学習をやって、その職人芸に勝っていきたいという話がよく出るんですが、そう簡単には行かなくて。半年や1年とかで結果が出るものではなくて、最終的には何回もPDCAを回して、そこにたどり着いていくということをしていかないといけないということがあると思うんです。ですが、皆さんはそういうステップがあることを忘れている、もしくは想像ができなくて、「導入したらなんとかなる」とか、「データさえ溜めればなんとかなる」と思っている節があると思っているんですね。なので、プロジェクトのゴールに対する期待値があまりにも過度だと、それが裏切られた瞬間に、投資をやめていきましょうみたいなことが起こり得るなと思っているという感じですね。

若原 なるほど。これって、もうちょっと解像度を上げて考えると、期待感の中に、できる内容に対する過度さということと、できるスピード感に対する過度さみたいなこととか、いろいろありそうな気がするんですけど、大宮さんがご覧になってきた中で、特にこういう過度な期待って多かったな、ということってあったりしますか?

大宮 どちらかというと「スピード」じゃないですかね。割とすぐできると思っていらっしゃる節が皆さんあって。でも成功事例とか聞いていても、例えば、トレジャーデータさんの中だと、SUBARUさんとかよく出てくると思うんですね。ですが、SUBARUさんとかは、もう長らくやってらっしゃった中の結果じゃないですか。数年PDCA回してきているので、それが半年とか1年で実現するってなかなか難しいと思うんです。

若原 確かにそうですね。それは、めちゃくちゃ共感します。私も今はトレジャーデータで5社目なんですけど、前々職の、3社目、2社目は、いわゆるコンサルティングファームに勤めていたこともありました。そうなると、年間計画の中で成果が出る、みたいなことのほうがどうしても優先度が上がったり、注目度が上がったりする中で、本質的に何年かかけて、さっきまさに大宮さんおっしゃられていたような、PDCAを回していかないとがらないみたいな話もあったりしました。なかなかそっちが理解が進まなかったり、共感を得られなかったりしましたね。ただ、毎年事業計画立てている中で、そのゴールを達成するという目的の下で活動していると、そこはしょうがないところなのかなと思いつつ、ここはかなりもどかしいところですよね。

大宮 そうですね。難しいところはありますよね。

若原 この辺って、とはいえ「時間がかかるものですよ」っていうのを説明していくことを一つの解決策になっていくんですかね?

大宮 そうですね。

アカウンタビリティ

大宮 社内調整において一番皆さんが困るのって、アカウンタビリティというか、説明責任みたいなことを全うしていくということかなと思うんです。ですが、なんでそんなに時間がかかるのか?、時間をかけることによってどうなっていくか?とか、その辺りが、社内でも伝えやすくしないといけないと思いますし、意思決定者に対して特に伝えて行く必要があるかなと思うんです。その辺りをどうわかりやすくするかというのは重要なポイントじゃないかなと思いますね。

若原 なるほど。重要なポイントですし、まさにSpeeeさんがサポートしてくださるようなポイントでもあるわけですよね。

大宮 そうですね。

社内を説得する方法

大宮 なので、よくクライアント様から、「社内でどう説明していくべきですか?」「社内を説得するのにどういう説明をすると良さそうですか?」とご相談いただくんです。それも、我々の重要な機能だと思っています。例えば、ドキュメントを作ったほうがいいのか、我々が勉強会形式で、今どういう風に進めていますよ、というのを社内にお伝えするとかですね。あとは、プロジェクトによっては関係者にワークショップを開催させてもらって理解を高めていただくとか、そういった創意工夫はできると思っていて、実際にやっていますね。

イノベーション疲れと社内コミュニケーション

若原 確かに、なかなか難しいところだなと思います。いわゆる「イノベーション疲れ」という言葉、あるじゃないですか。イノベーション疲れって結局何なんだ?というのを分類する取り組みをやったことがあって。そこの中でも、結局疲れる原因の大半は、社内のコミュニケーションから出てくるみたいな話もあって。新しいイノベーションの種として何を見つけるのか?とか、そういうことに悩んでいる人はあまりいなくて、「見つけた種を社内でどう理解を得る?」とか、「どうお金を投資してもらうか?」ということに皆さん苦労しているんだな、ということがよくわかりますので、今の話、めちゃくちゃ共感できます。

大宮 ありがとうございます。イノベーション疲れの分類みたいな話も非常に興味深いですね。

若原 ありがとうございます。またこのテーマとは別の機会にぜひお話できたらなと。

 

DXがうまくいかない5つのポイント③

必要な体制がわからない/スキルセットの解像度/意識を変えるだけでは変わらない/採用すべき人材の条件

必要な体制がわからない/スキルセットの解像度

失敗の理由5選③

大宮 3つ目は、必要な体制がわからないというのがあると思っています。

若原 これはプロジェクトの体制とかっていうことですね。

大宮 はい。よくあるのは、「スキルセット」ですよね。どのようなスキルセットがそもそも求められていて、どういう体制でプロジェクトを進めないといけないのか、ということの解像度が粗いので、それがプロジェクトがスタックしてしまう理由の一つになっているということはあるなと思うんですね。

若原 デジタルと名のつくようなプロジェクトって、専任の担当者がいない組織もあったりしますし、何が出来たらこれが出来るのか、というのがまず明確じゃないところってよくありますもんね。

大宮 そうですね。社内で簡単にできると思っているという、ある種、楽観的に捉えている企業さんもあったりしますしね。それは、良くも悪くもだと思うんですけど、経験さえしていけば出来るようになっていくという考えを持っている企業さんも当然おありですので。出来るということってものすごく個人差があると思うんですね。若原さんは元コンサルで、コンサルティングのフレームワークを活用するという、その活用も相当程度があるじゃないですか。

若原 そうですね。

大宮 それが、アソシエイトレベルなのか?、シニアディレクターレベルなのか?とか、いろいろあると思うんです。ですが、これってどのプロジェクトにおいてもスキルセットのレベル感ってあると思っているんですね。企業さんによっては、その尺度みたいなものがわかりにくいものなので、過去に1回でも触れたことがあるとそれが出来ると思う企業さんももちろんあります。それで出来ることもあるんですけど、ものによっては出来ないということもあるので、その辺り、何のスキルが必要なのかと、どのぐらいのレベル感のものが必要かを整理する必要があるなと思っているんですね。

若原 すごく共感できます。特に初めて目にするスキルや初めて目にする分野って、どちらかというと、やっているか・やっていないか、みたいな二元論になりがちだったなと、僕も過去を振り返るとすごく思います。やっている人の中でも、上手くできているか?、まだ余地があるか?みたいなところの評価まで、そもそもなかなか至らないなというのは、すごく実感としてありますね。

大宮 そうですね。そのプロジェクトにおいて、どの人がキーマンになるか?という要素はいくつかあるかなとは思うんです。そもそも、どういうスキルセットが必要で、それがどのぐらいの水準で、何人ぐらい必要なのか?という整理が曖昧なままで、若原さんがおっしゃった通りで、当然なんですが兼務になることが多かったりして、そうすると尚の事リソースも使えない。スキルが足りなくて、リソースも足りないとなるとプロジェクトが進んでいかなくなってしまいます。なので、失敗していく要素の一つに、体制が不十分である、必要な体制がわからない、というのはあるかなと思いますね。

意識を変えるだけでは変わらない

若原 ③必要な体制がわからない については、①目的が曖昧である。②データ活用に過度な期待がある とは違う難しさがありますね。どちらかというと意識を変えることでも大きく進歩するポイントなのかなと思うんですけど、3つ目はもしかしたら、意識を変えるだけだと不十分な部分がいろいろあるかもしれないですよね。そこに関して、例えば大宮さんがこれまでのご経験で、このポイントに対する解決策・対応策というか、こういったところは上手く行ったな、みたいなお話をもう少しお聞かせいただけませんでしょうか?

大宮 はい、ありがとうございます。

採用すべき人材の条件

大宮 一つは、そもそもどういう体制を組むべきかというレコメンデーションを正しくするということだと思うんですね。この「正しく」というところがポイントかなと思っています。理論上、こういう人員がいて、こういう体制があればいい、ということは言えるかなと思うんですが、経験上という話は、また別かなと思っていて。それを見極めていく一つの要素として、採用要件を作れるかどうかというのがあると思うんですね。

例えば、社内でDXプロジェクトを上手く行かせたいとした場合、どういうスキルセットを持っている人を、そもそも採用するとしたら採用すべきか?という観点があると思うんです。それは、そのときに採用要件を作れるかというのが結構ポイントだなと思っていて。でも、普通は経験がないから作れないので、我々はそういうサポートもさせていただく。採用のレジュメまできっちり作る、ということは滅多にないんですが、ものによってはもちろんお手伝いをさせていただきます。ですが、基本的には、こういう体制が理想的であって、その必要としているロールに、こういうスキルセットをお持ちの方をアサインしてくださいというのも、我々がクライアント様の資料として提供させていただいています。それを社内のどこから調達してくるのか?、もしくは外部から調達してくるのか?、採用するのか?、みたいなところをプロジェクト開始前に一緒に整理していく、ということはやっていますね。

若原 確かにそう考えていくと、募集要項をちゃんと書けるということを実現しようとすると、ほかのポイントの理解も結構絡んでくるのかもしれないですよね。なので、先程既にご紹介いただいた1つ目、2つ目のポイント、あとはこれからご紹介いただくポイントもそうかもしれないですけど、条件がわかるということは、「何をするか」もわからないといけないし、その「何をするか」がどうこなされるべきなのか?というのもわからないといけない。ということになると、結構いろいろなところに波及していく大事なポイントかもしれないですね。

DXがうまくいかない5つのポイント④

データへの理解不足/構造化データ、非構造化データ/部署間の理解水準/「データ」という言葉の広さ

大宮 4つ目は、2つ目でご紹介した、データ活用への過度な期待とも少し近しい話ではあるんですけども、データへの理解不足というのがあると思っています。

データへの理解不足

失敗の理由5選④

大宮 これはプロジェクトメンバー、もしくはプロジェクトを承認する意思決定者の皆さんに関わる話かなと思うんです。「データ」ってものすごくファジーなキーワードで、経営やマネージメントというレイヤーと同じぐらい、データっていろいろ言えると思うんですね。エクセルにまとめているものもデータだと思いますし、皆さんの記憶の中に留まっているものもデータだと思うので。そもそも、このプロジェクトで取り扱うデータって何のことを指していて、どういう粒度感のものがあるか、どれぐらい幅があるものなのか?ということの整理をそもそもする必要があると、そういうデータの違いがあるということをちゃんと理解しておかないといけないと思うんですね。

構造化データ、非構造化データ/部署間の理解水準

大宮 よくある話としては、「構造化データ」「非構造化データ」みたいなものがあると思うんです。その辺りの区分は、経験がある方は出来るんですけど、経験がない方からするとその差もなかなかわからなかったりすると。

で、これはとあるプロジェクトであった話なんですが、「データあります」と言われていたんですが、蓋を開けてみたら、全部紙のデータで。

確かに、データなんですけど、それを電子化していくのにものすごく時間がかかったということがあったんです。なので、部署間によってもデータに対する認識が違ったり、レイヤー間によっても違うことがあるなと思っていますので、その水準を揃えたり、基準を揃えていくことをやらないと、そもそもどういうデータがどこで使われていって、何が必要なのか?という整理がつかないままプロジェクトが進んでいく、ということってあるなと思っていて。

 そうすると、部門を跨ぐことって日本企業の場合だと多かったりするので、例えばマーケがIT部に連携とかってあると思うんですが、そのときデータっていう質問の仕方をすると、ITの方達からすると、「それって何のテーブルで、何のカラムですか?指定してください」、という話になるんです。でもマーケからすると、「テーブルって何?」「カラムって何?」ってなったりするかなと思うので、どういうレベル感でデータを取り扱いしているかという水準を合わせるということが、プロジェクト進行上非常に重要なポイントになるかなと思いますね。

「データ」という言葉の広さ

若原 さっき大宮さんがおっしゃられていたように、データという言葉ってすごく高次の言葉で、理解の度合いもあると思いますし、解釈の仕方も多様性が広い言葉ですもんね。だから、まさにおっしゃられていたように、部署間で異なり理解をしている場合は、「データ」という言葉で会話していても全く会話成り立たないとか、あるかもしれないですね。

大宮 これは支援している我々の社内の中でも全然起こり得る話で。データって、それ何のことを指しているの?っていう認識を先に確認しないといけないというのは、すごく思いますね。

若原 今、コンサル担当をやっていたことを思い出しまして。初めてのクライアントとミーティングをして、まずいろいろクライアントの現状を伺うとき、彼らが「知っている」とか「やっている」ということはいったん疑ってかかれ、という話はあったなと思って。それは理解不足を疑っているというよりは、どちらかというと言葉の使い方とかいろいろあるので、自分たちの思っているような受け取られ方をして答えてもらえているのか、というのはちゃんと確認しなさい、みたいな話だったんです。そこは確かに、特にプロジェクトを始める時点で非常に大事かもしれないですね。

大宮 そうですね。そう思います。

DXがうまくいかない5つのポイント⑤

推進者の不在/壁を突破していく人物が必要/担当者の思いや熱量/ジョブローテーションの功罪/ドキュメントの上手な残し方/誰も得しない「丸投げ」/正しい協業のあり方

大宮 5つ目のポイントとしては、推進者の不在というのを挙げさせていただいています。

推進者の不在/壁を突破していく人物が必要

失敗の理由5選⑤

大宮 これも、どのプロジェクトでも共通していることかなと思うんですが、特に新しく始めていくようなプロジェクトの場合、プロジェクトがなかなかスムーズに進まないことって往々にしてあると思いますので、その壁を突破していく必要があると思っているんですね。で、その壁を突破していく推進者が必要だなと思っていて。この推進者が曖昧になっていると、自分が責任を負いたくなかったりして、責任の所在が曖昧になってしまって、至るところでプロジェクトがスタックしてしまって進まなくてなっていく、ということはあるなと思っているんですね。これは経営者とかそういう話というよりは、このプロジェクトにすごく「思い」を持っていて、他部署連携とかもよくあるものなので、その辺りの社内調整とかも上手くやりながら、プロジェクトを前に進めていけるという人が必須なんじゃないかなと思うんですよね。

担当者の思いや熱量

若原 今、最後に「思い」っておっしゃられましたけど、こういう話って思いや熱量とか、すごく大事ですよね。「大変だけど、やるんだ!」「なぜならやりたいから!」みたいな、そういう思いってすごく大事だと思いますし、逆に言うと、担当者が引き継ぎが起こった場合とかって大変ですよね。前任者がやっていたことを引き継がされても、もともと自分で始めたことじゃないし、みたいな。そうなると、理不尽なことを突破する熱量に限界があったりして、確かに大変そうなポイントですね、これは。

大宮 そうですね。

ジョブローテーションの功罪

大宮 もしかしたら若原さんのほうがご経験お持ちかもしれないんですけど、いわゆるジョブローテーションという考え方があるじゃないですか。あれはいろんな思想があって始まっているものだと思うので、あれ自体を否定するつもりはないんですけど、日本企業さんはジョブローテーションが多いので。そうすると、このプロジェクトに思いを持って立ち上げていたり、推進していた人が「4月から異動になります」ということがあるので、引き継いだ方に「思い」まで引き継げない場合もあって。そうすると、そのプロジェクト自体の優先度が上がっていかない、みたいなことがあるなと思うんですよね。

若原 ありますよね。私も個人的な経験ですけど、自分が引っ張っていたプロジェクトの担当を自分が引き剥がされちゃって、どうしてもこれ続けたいなと思って、最初は「兼務でもいいから、やらしてくれ」みたいな感じでやっていたんです。それでも物理的にも仕事が多くなってしまうというところが限界を迎えてしまって、泣く泣く、そのもともと手掛けていったプロジェクトを少しずつ手放す、みたいなことがあったりしたんです。全体最適で見るとしょうがなく起こることなのかもしれないんですけど、その担当レベルで見ると、やっぱりああいう仕事はきついなと思いますよね。

 ちなみにこういう状況って、完全に解決することは難しいかもしれませんが、大宮さんなりの対処策ってありますか?

ドキュメントの上手な残し方

大宮 はい。一つは、思いを完全に引き継ぎすることは難しいとはいえ、そのプロジェクトを立ち上げが目的が存在しているはずなので、その目的と、今までやってきた過程をちゃんとドキュメントで残しておくということだと思います。なので、ドキュメンテーションの重要性みたいなことはどのプロジェクトでもお伝えしていまして、我々も思考の過程とか、その辺が抜け落ちていくと、一足飛びでそこまで行っているという感じがするんですが、そんなことはなくて、確実にプロセスがあるので、その辺りもドキュメンテーションとしてちゃんと残していきましょうというようなお手伝いをさせていただいております。

若原 この話はもしかすると、さっきの3つ目のお話、スキルのお話と絡む気もして。上手いドキュメントの残し方と、そうでないドキュメントの残し方って恐らくあるんですよね。ドキュメントに残すか残さないかというレベルをいったん越えると、「上手い残し方」「そうじゃない残し方」というのが恐らくあるような気がして。そこもSpeeeさんにサポートしていただけると、上手い残し方をいろいろサポートしていただける、みたいなところなのかなと改めて思いました。

誰も得しない「丸投げ」/正しい協業のあり方

大宮 あとは、「推進者の不在」みたいなところで、我々のパートナーシップというか、パートナーとしてのスタンスみたいなものがあるという話をさせていただいたんですが、視点を正しくお伝えするというか、特にマネージメントレイヤー、意思決定レイヤーに、今このプロジェクトが推進していない理由が「推進者が不在」であることが理由ですよ、ということをちゃんとエスカレーションすることって大事だと思っていて。ともすると、「いや、あなたたちのプロジェクトマネジメント責任でしょ?」ってなり兼ねないんですね。それはそれだと思うんですが、一方で、カウンターパートになる人が推進者の方でいないと、なかなか進まないということがあり得ますので。それを事象でいくつか正しくお伝えしていくということもやる必要があるなと。

若原 それ、ありますね。これ、日本企業だけなのかわからないですけど、少なくとも僕の経験で言うと、協業ってもっと上手くできるんじゃないかなって思いますよね。

大宮 そうですね、そう思います。

若原 「丸投げ」っていう言葉がいいかどうかわかりませんけど、世間的にはよく言われるじゃないですか。で、丸投げって、一見投げるほうからすると楽なように見えますけど、あれは実は誰も得していないというか、あの状況ってもっと良くなるといいのにな、とか、個人的には思いますね。

大宮 そう思います。もしかすると、古くから伝わってきているというか、商習慣の一種なのかもしれないんですけど、クライアントさん側からすると丸投げしたいし、企業さんからすると、丸投げしてもらったほうがサービスとしての粘着性って高くなるので、サービスが継続しやすくなると。そういう商習慣は、もしかしたらあるのかなと思っていて。でもそれは「プロジェクトを成功させる」という観点とはちょっと違う観点かなと思いますので、プロジェクトを成功させると考えると、正しい協業のあり方を考えて行きたいなとは思いますね。

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最後までお読みいただきありがとうございます。
第1回は以上です。いかがでしたか?続きは、組織はなぜ変化に抵抗するのか (ゲスト: 大宮拓さん第2回)を御覧ください。

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