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顧客接点統合マネジメント組織への変革

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企業のビジネスモデルのトレンドは、「売切り事業」から商品やサービスを長く使ってもらう「コト売り事業」へ移りつつあります。事業の増加・多様化により、顧客接点や事業組織の乱立という過渡期ならでは課題も生まれました。

乱立を解消し、全社一貫した提供価値のマネジメントやKPI設計、投資判断を行うにはどうしたらよいのか。株式会社電通デジタルが提供する「顧客接点統合マネジメント支援」を、同社ビジネストランスフォーメーション部門・部門長補佐の魚住高志氏が紹介します。聞き手はトレジャーデータ株式会社の小林広紀が務めました。

※本記事はトレジャーデータ株式会社が主催した「PLAZMA20」(2021年10月開催)のセッションをもとに編集しました。

魚住 高志

魚住 高志 氏

株式会社電通デジタル

ビジネストランスフォーメーション部門 部門長補佐

電通に入社後、一貫してデジタルマーケティング支援に従事。「ビッグデータ」と「クラウド」の可能性に早期から着目。それらを活用したソリューション開発や事業変革のコンサルティング、それらをテーマとした記事執筆や講演も多数。現在は、自動車や保険やエネルギー業界、B2B企業を中心に「顧客との関係を維持し続ける仕組みづくり」のコンサルティングやソリューション提供を中心に活動中。

<目次>

「顧客接点統合」の必要性が出てきた背景

魚住:これまでの企業のなりわいは、モノを買っていただく売り切り型のビジネスモデルがメインでした。「モノ」には保険や金融等の無形商材も含みます。企業の中には宣伝部や営業部のようなプロダクトを売るための組織(下図の「組織A」)が存在し、各企業がデジタルを使った新しいチャネルで新しい価値を提供するために日々活動してきました。

乱立する顧客接点(組織)

昨今ではいわゆるコト売りの事業、長く使ってもらう活動がメインになってきました。売り切り型とは目的もKPIも異なります。そのため、これまであった組織とは別に、且つデジタル人材を踏まえた上でCRM部やコンタクトセンターのような新しい組織(下図の「組織B」)を立ち上げることになり、企業の中では2種類の事業と組織が並行して存在する状態です。

上図のように顧客接点や組織が乱立する現在は、ビジネスモデルが移り変わる過渡期にあたります。この状態を解消するため、「顧客接点統合マネジメント」の必要が出てきました。

<顧客接点乱立の具体例>

例えば自動車会社では、これまで売り切り事業という形で車やアフターメンテを販売する活動をメインにしてきました。しかし昨今では車と自動車会社をネットワーク経由でつなげる「コネクティッドサービス」等のコト売り事業、つまり販売した車を長く愛用してもらうためのサービスが次々に生まれ、それをマネジメントする組織もまた新しく立ち上がっています。

その結果、顧客接点と組織が乱立してしまい、それらの統合的なマネジメントが課題となるのです。

顧客接点乱立の具体例_自動車会社-1
顧客接点乱立の具体例_自動車会社-2

 

企業は顧客接点にまつわるこんな課題を抱えている

魚住:弊社に寄せられる声を基に、各企業の意思決定者や経営層がどんなことを課題に思っているかを以下にまとめました。

頂戴する課題の声

自動車会社幹部の方は、顧客接点をコントロールする組織が複数でき始めた中で、これまで顧客接点の中心を担ってきた宣伝部の組織機能はこのままでよいのだろうかという点を課題に挙げています。さまざまなデジタルサービスを提供する通信会社の幹部の方は、各サービスで顧客接点がサイロ化してしまうこと、各組織への予算振り分けの参考にするための全社KPI策定の必要性を挙げました。

エネルギー会社幹部の方は顧客接点が乱立し始めたことで、そこから得られるデータもサイロ化し始めていることを挙げており、やはり顧客接点乱立にまつわる課題を抱える企業は多いのだと感じています。

食品会社の幹部の声

通販事業を展開している食品会社では、新規客の60%以上が1年以内に契約解除してしまうという課題を抱えていました。これは宣伝組織とCRM組織の分断により起こる「ギャップ」が原因なのではないかと推測します。

宣伝組織は新規のお客さんをどれだけ連れてくれるかがKPIです。一方CRM組織は長く使っていただくための組織です。すこし乱暴な言い方をすると、宣伝組織は期待を煽ってとにかく入ってもらえればそれでゴールですが、CRM組織はその煽った期待を叶えなければなりません。

ここで顧客に提供している「満足価値」にギャップが生まれ、顧客ロイヤリティが下がっているのではないかという結論に至りました。

顧客接点マネジメントにおける2つの潮流

魚住:乱立する顧客接点をマネジメントして上記の課題を解決するには、大きく分けて2つの潮流があります。1つ目は「顧客接点組織の統合」です。ただし全ての組織が統合できるわけではないので、2つ目の「全社のKPI構造設計」、つまり乱立している組織のKPIを全社レベルで構造化することを求める企業が最近非常に増えています。

弊社はこれらを行おうとする企業に対し、「顧客接点統合マネジメント支援」という形で提案をしています。

顧客接点統合マネジメント支援

潮流1「顧客接点組織の統合」の事例

魚住:先ほどの食品会社様での事例をご紹介します。宣伝とCRMの組織が分断されており、顧客の期待と満足がリンクしないのが課題でした。

この企業では宣伝・CS組織の再編成を行い、契約1年目の顧客と2年目以降の顧客の担当部署を分けました。1年目の顧客を担当する部署のマネジメントは、宣伝部署を管轄する幹部が兼務します。「宣伝部が期待を煽った分、ちゃんと満足させてくださいね」ということです。

潮流1「顧客接点組織の統合」の事例_食品会社

珍しいパターンですが、動かしやすくわかりやすい形かと思います。

続いて、保険業界様の事例です。成約後の顧客フォローを怠ってしまい、つながりが断たれたまま契約の更新のタイミングやライフステージの変化のタイミングで売り込みに行くことになるため、顧客ロイヤルティが低下してしまうという課題がありました。

潮流1「顧客接点組織の統合」の事例_保険会社

そこで上図の空白の期間を埋める新しい組織「カスタマーセンター」を設立しました。カスタマーセンターが顧客の日常の中に入り込み、安心安全をサポートする組織という形で運営しています。

この事例ではコールセンターを担当していた人員がカスタマーセンターを運用することになりました。コールセンターの主務はトラブル解決です。しかしカスタマーセンターではそれだけでなく、「自分からお客様の安心安全のために働きかけていいんだ」というのがモチベーションになっているといいます。自ら動くことが顧客ロイヤルティの上昇につながるのを肌で感じられると、仕事の自信や誇りも生まれます。

潮流2「全社のKPI構造設計」の事例

魚住:すべての顧客接点を統合するのはなかなか難しいものです。そこで、乱立した組織間の指標を構造化し、どこにフォーカスを当てるべきかのルールを作りたいという企業も最近非常に多い印象です。

次の図は耐久財メーカー様の事例です。販売前・販売店体験・保有体験・利用体験という顧客のフェーズごとに組織が分断されており、組織ごとの個別KPIと全社の統合KPIが設定されています。

潮流2「全社のKPI構造設計」の事例_耐久財メーカー

各組織が何らかの施策を実行すると個別KPIが変動します。その変動が最終的に統合KPIにどう影響を与えているのかをすべて数式的にモデル化しようという取り組みを行っています。

財務指標に影響が高く、且つすべての組織が腹落ちする総合指標を真ん中に作るのが取り組みの目的です。KPIという視点を通して、下は施策の効果検証のレイヤーから一番上のレイヤーは投資意志決定のレイヤーまで、一気通貫でマネジメントできるルール作りをしています。

電通デジタルが提供する顧客接点統合マネジメント支援

魚住:弊社ではトレジャーデータの協力のもと、ここまで紹介してきたような取り組みを支援するプロセス、コンサルティングワークを提供しています。

新しい顧客統合組織を作るための構想策定や、全社KPIの策定をはじめ、策定後の実務支援として、マネジメント基盤の開発や業務の設計、人材の統合的なマネジメントやスキル定義、育成支援も行っています。

顧客接点統合マネジメント支援プロセス

ただし大企業になればなるほど、改革に懐疑的な声も多くあがりいただいています。以下は実際にいただいた生の声です。

大企業で取り組むにあたり実際に寄せられた生の声

そこで2019年に、「カスタマーサクセス・プロトタイピング」というサービスをローンチいたしました。いきなり組織全体を変えるのではなく、まずは小さく始めてみる取り組みの支援をするものです。トレジャーデータをはじめ、多くのパートナーさんの協力を得て提供しています。

「カスタマーサクセス・プロトタイピング」サービス

実顧客のモニター群を作り、その顧客に対してだけ顧客接点を統合して新しいKPIを設定し、各指標の動きを検証して成果を証明するものです。全顧客に展開するか、全事業で組織化をしていくかの意思決定を行う判断材料になります。

まずは組織を超えた小さなチームを作るのが、顧客接点統合組織の第一歩です。顧客接点をマネジメントしながら顧客ロイヤリティを高め、最終的に業績にプラスの影響を与えて成果を上げるまで、一歩踏み出すための支援をさせていただいています。


本記事はトレジャーデータ株式会社が主催した「PLAZMA20 」(2021年10月開催)のセッションをもとに編集しました。
さらに詳しい情報をお知りになりたい方はこちらまでお問い合わせください。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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