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CDPのこれまでと、これから -トレジャーデータ共同創業者・太田一樹が語る

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現在、全世界で500社近くの企業にご利用いただいている「Treasure Data CDP」。その始まりは2011年、芳川裕誠、太田一樹、古橋貞之の3人が米国シリコンバレーで創業したことに遡ります。データマーケティングやデジタルトランスフォーメーションがまだ日本でトレンドになる前夜だった当時、なぜTreasure Data CDPはこの世に誕生したのか、そして、これからのデジタルマーケティング、これからのデータ利活用はどのように変化していくのでしょうか。

トレジャーデータの共同創業者で、現在はArm データビジネスユニット VP of Technologyを務める太田 一樹がPLAZMA11の『Treasure Data創業者に聞く、CDPのこれまでとこれから』と題したセッションで語った内容をご紹介します。聞き手は、トレジャーデータ株式会社エバンジェリストの若原 強が務めました。

トレジャーデータはなぜシリコンバレーで創業したのか

太田と若原はまず、トレジャーデータが創業した経緯やTreasure Data CDPが誕生した背景について振り返った。

創業前夜、大学でスーパーコンピューターの研究をしていたという太田。「とにかく速いコンピューターを作ることに情熱を注いでいた」と当時を振り返る。コンピューターにはCPU、メモリー、ハードドライブなど様々な部品があるが、コンピューターの中で一番遅かったのが、ディスク=データを扱う部分だったという。「CPUは高速化するのに、データを扱う部分だけは速くならなかった」(太田)。

そんな太田が刺激を受けたのが、アメリカだった。縁あってシカゴの研究所で「Blue Gene」というスーパーコンピューターに出会ったとき、無数のスーパーコンピューターの能力を集約して膨大な量のデータを処理していた様子に驚き、また今後世界的にコンピューターが扱うデータ量が増加し続けるという課題意識があるなかで、そこに注目したスタートアップ企業のスピード感が日本とは大きく点にも大きな差があることを知る。「日本とアメリカではスケール感が違う。シリコンバレーで挑戦するしかないと感じた」(太田)。

では創業後に、なぜトレジャーデータはCDPを生み出したのか。これも太田の創業前夜にきっかけがある。

太田の学生時代、スーパーコンピューターの研究を進める中で、2006年に「Apache Hadoop」というソフトウェアが登場した。ご存じの方も多いと思うが、Hadoopは大規模なデータを処理できるオープンソースのソフトウェアで、太田も個人的に大きな興味を持ち、書籍なども執筆したという。そして2009年、大田は現在では世界最大規模のHadoopのコミュニティとなっている「Hadoopユーザーグループジャパン」を立ち上げ、運営を開始することになる。

このコミュニティ運営について、「面白かったのは、様々な業種の数百社という企業からデータを扱っている人たちが毎週のように集まり交流していたこと。そこでは、みんなが同じように初期投資、時間、人材という3つの課題に直面していた」と太田は振り返る。オンプレミスのデータ基盤を整えるには、ハード、ソフト、ネットワークに莫大なお金が掛かる。また、データウェアハウスの構築からデータ基盤の構築を始めると、プロジェクトには15か月から18か月かかり、しかもPoCの成功率は30%とプロジェクトのほとんどは失敗に終わる。そして、データ基盤を扱うためにはコンピューターサイエンスに詳しい人材が必要で、事業会社がそのようなIT人材を雇うのは難しい。こうした課題が共通して語られていた。

「コミュニティでの交流を通じて、コスト、時間、人材の課題はユニバーサルなものだと気づいた。そして、この問題は10年後も残り続けるだろうとも感じた。データが増え続けるなか問題も残り続け、それがこの先10年以上大きくなっていくならば、そこに市場があるのではないか。データ基盤をめぐる問題解決のために、トレジャーデータを創業した」(太田)。

創業後に最初に手掛けた製品は、Hadoopをクラウドサービスとして提供するというサブスクリプション型のサービスだった。申し込めばすぐに使い始めることが可能で初期投資が抑えられ、サブスクリプションになっているためコストも最適化でき、オペレーションするための人材が要らないという製品だった。

しかし、サービス開始から4年、5年経過したとき、デジタルマーケティングの世界でデータ分析による顧客理解への関心が大きく高まってきたことで、「最初はデータ基盤という手段を簡単にするツールを作るために創業したが、よく顧客の意見を聞くと、その目的が顧客行動の分析であることがわかってきた」(太田)

顧客理解のためのデータ基盤、こうしたニーズの高まりにトレジャーデータがどう応えるか。そこで、顧客データをもっと簡単に集められ、もっと簡単に扱うことができ、そしてもっと様々なツールで活用できるデータ基盤としてCustomer Data Platform=CDPに辿り着いた。

Hadoopコミュニティでの交流を通じてデータ基盤のクラウド化をサービス化し、顧客理解というデジタルマーケティングのニーズの高まりに応じてCDPを展開するという「マーケットイン」型のビジネス展開を続けてきたことについて、太田は次のように語った。

「私たちの製品は何万社もの顧客がいるものではない。1社1社のニーズをどこまで吸い上げるかが重要だ。サブスクリプション型のビジネスモデルは、顧客と中長期的なお付き合いをしてはじめて一定の規模のビジネスになる。顧客が満足しなかったら、そこで終わり。そういう緊張感をもって、これまでビジネスを進めてきた」(太田)。

アフターコロナの時代は、消費行動のデジタル化が加速する

講演の後半は、新型コロナウイルス(Covid-19)の感染拡大を受けて世の中が変化していくなか、これからの消費者の購買行動にどのような変化が生まれるのかについて語った。

太田はまず、この10年スマートフォンによるモバイルインターネットが普及したことによって、消費者の購買行動にどのような変化が生まれたのか、生まれなかったのかを整理した。

例えば、消費者がテレビを買うとき、ネット以前の時代は、家電量販店を訪れ、並んでる商品から店員に商品の説明を聞いて何を買うかを決めることが多かっただろう。それが、モバイルが普及したことでインターネットの商品公式サイトや価格比較サイト、ECサイトやレビュー記事を自分で調べ、欲しい商品の目途を付けてから家電量販店に行くことが多くなったのではないだろうか。

「7割のカスタマージャーニーがオンラインになっている。オンラインで商品を知って理解してもらわないと買ってもらえない。企業にとって顧客獲得の戦場はデジタルになっていて、店舗が最終コンバージョンになっている」(太田)。

しかし変わらないのは、リアルな店舗の存在だ。現在、購買行動のEC比率は世界的には15%程度しかなく、ほとんどの人たちは店舗で商品を購入している。「そこには、触ったり見たりしないと安心できないという消費者心理がある」と太田は説明する。

ただ最近では、オンラインで気軽に商品を購入する新しい世代(ジェネレーションZ)も登場している。店舗を訪れても商品の情報をスマホアプリで探したり、お得なオファーを調べたりなど、リアルでもデジタルエクスペリエンスを求めている世代だ。

こうした動きは、これまでは20代前半の若者にしか見られなかったが、アフターコロナの時代は、全世代でこうした動きが加速するのではないかというのが、太田の観方だ。「ECの比率は上がり、VR・ARなどを活用し商品の疑似体験できる機会も増えるだろう。また、パーソナライズされたオファーへのニーズも高まるのではないか」(太田)。

新型コロナウイルス感染拡大防止のために「ステイホーム」が長く続くなかで、消費者の中には「デジタルだけでも生活が成り立つ」ということに気が付いた人も多いのではないだろうか。こうした「人間として当たり前に思っていたことが実は違っていたという気づき」は、今後の購買行動を大きく変え、消費のデジタル化が加速していくきっかけになるだろう。

太田は「どんな分野の企業にとっても、顧客をデータで捉えていくことが、これから市場で生き残っていくために必要だ」と語り、行動のデジタル化によってデータが収集できる顧客接点が増えることで、企業はこれをチャンスと捉えてCDPをビジネスに活用していくことを提案した。

「CDPが目的化すべきではない。消費行動の把握やチャネルのデジタル化の一環としてCDPを活用するという考え方であるべきだ」(太田)。

人間のクリエイティビティとシステムの融合がこれからの課題

太田は、CDPのこれからのポテンシャルについて「マーケティングテクノロジーとして見られることが多いが、これからはカスタマーサポートやコールセンターでの顧客データの活用や、製販連携によるサプライチェーンマネジメントの最適化など様々なシーンでの活用可能性がある」と指摘する。膨大なデータを処理するテクノロジーは、今後ビジネスの様々なシーンで活用されるだろう。

そこで、講演最後のテーマとして「人間と機械の役割分担、その構図はどう変わるか」というトピックに対し、太田は自身の考えを披露した。

カオスマップによると、2014年には1,000弱だったマーケティングテクノロジーは、2020年には8,000に。この6年間で約8倍にまで増加しているという。ひとつの企業では概ね150個程度のツールを使っていると言われ、グローバル企業にもなると数千個のツールを活用している場合も。そして、自社のビジネスの対象となる顧客のデータは指数関数的に膨れ上がっている。

past-and-future-of-cdp

こうした状況において、「マーケターは頭の中でカスタマージャーニーを作れるだろうか」と太田は疑問を投げかけた。もちろん、セグメンテーションやターゲティングを行い広告を展開したり、新商品やキャンペーンを展開することはできるだろう。しかし、顧客ひとりひとりのカスタマージャーニーを把握し、適切な打ち手を考えていくというのは、人間の能力では非常に厳しいと言わざるを得ない。

「本質的に、多くのツールに億単位のユーザーデータがバラバラに散在し、チャネルも多様化しているなかで、“誰に何をどのタイミングで売るか”というのは、機械のほうが向いているのではないか」(太田)。

しかし一方で、デジタルマーケティングをすべて機械=システムに任せてしまっていいのかというと、そういうわけではない。マーケティングはそのプロセスの様々なシーンに人間の経験や直感が働くものであり、完全に機械に任せてしまうと人間としての恐怖感も働く。何より、仮にマーケティング予算100億円を投じてシステムが勝手に運用してくれるとしても、売上が上がったり下がったときに担当者はその理由を説明できない。マーケティングに人の力は不可欠なのだ。

太田は、「中間のアプローチが必要」と語り、これからの時代は今後は機械が得意な部分は機械に任せ、人間が得意なことは人間がやるというスタンスで、人間とシステムがどう融合していけるかが大きな課題になるのではないかという考え方を示した。

「これだけテクノロジーが進んだ世界であっても、マーケティング予算を完全に機械に任せる会社はない。感情に訴える部分やブランド価値に関わる部分など、データで表現できない部分は当然ある。データも重要だが、同じくらい人間の感性も重要だ。マーケターの才能やクリエイティビティをデータの側面から支援するためには何ができるのか。これが、これからのトレジャーデータにとっての面白い命題になる」(太田)。

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現在、全世界で500社近くの企業にご利用いただいている「Treasure Data CDP」。その始まりは2011年、芳川裕誠、太田一樹、古橋貞之の3人が米国シリコンバレーで創業したことに遡ります。データマーケティングやデジタルトランスフォーメーションがまだ日本でトレンドになる前夜だった当時、なぜTreasure Data CDPはこの世に誕生したのか、そして、これからのデジタルマーケティング、これからのデータ利活用はどのように変化していくのでしょうか。

トレジャーデータの共同創業者で、現在はArm データビジネスユニット VP of Technologyを務める太田 一樹がPLAZMA11の『Treasure Data創業者に聞く、CDPのこれまでとこれから』と題したセッションで語った内容をご紹介します。聞き手は、トレジャーデータ株式会社エバンジェリストの若原 強が務めました。

トレジャーデータはなぜシリコンバレーで創業したのか

太田と若原はまず、トレジャーデータが創業した経緯やTreasure Data CDPが誕生した背景について振り返った。

創業前夜、大学でスーパーコンピューターの研究をしていたという太田。「とにかく速いコンピューターを作ることに情熱を注いでいた」と当時を振り返る。コンピューターにはCPU、メモリー、ハードドライブなど様々な部品があるが、コンピューターの中で一番遅かったのが、ディスク=データを扱う部分だったという。「CPUは高速化するのに、データを扱う部分だけは速くならなかった」(太田)。

そんな太田が刺激を受けたのが、アメリカだった。縁あってシカゴの研究所で「Blue Gene」というスーパーコンピューターに出会ったとき、無数のスーパーコンピューターの能力を集約して膨大な量のデータを処理していた様子に驚き、また今後世界的にコンピューターが扱うデータ量が増加し続けるという課題意識があるなかで、そこに注目したスタートアップ企業のスピード感が日本とは大きく点にも大きな差があることを知る。「日本とアメリカではスケール感が違う。シリコンバレーで挑戦するしかないと感じた」(太田)。

では創業後に、なぜトレジャーデータはCDPを生み出したのか。これも太田の創業前夜にきっかけがある。

太田の学生時代、スーパーコンピューターの研究を進める中で、2006年に「Apache Hadoop」というソフトウェアが登場した。ご存じの方も多いと思うが、Hadoopは大規模なデータを処理できるオープンソースのソフトウェアで、太田も個人的に大きな興味を持ち、書籍なども執筆したという。そして2009年、大田は現在では世界最大規模のHadoopのコミュニティとなっている「Hadoopユーザーグループジャパン」を立ち上げ、運営を開始することになる。

このコミュニティ運営について、「面白かったのは、様々な業種の数百社という企業からデータを扱っている人たちが毎週のように集まり交流していたこと。そこでは、みんなが同じように初期投資、時間、人材という3つの課題に直面していた」と太田は振り返る。オンプレミスのデータ基盤を整えるには、ハード、ソフト、ネットワークに莫大なお金が掛かる。また、データウェアハウスの構築からデータ基盤の構築を始めると、プロジェクトには15か月から18か月かかり、しかもPoCの成功率は30%とプロジェクトのほとんどは失敗に終わる。そして、データ基盤を扱うためにはコンピューターサイエンスに詳しい人材が必要で、事業会社がそのようなIT人材を雇うのは難しい。こうした課題が共通して語られていた。

「コミュニティでの交流を通じて、コスト、時間、人材の課題はユニバーサルなものだと気づいた。そして、この問題は10年後も残り続けるだろうとも感じた。データが増え続けるなか問題も残り続け、それがこの先10年以上大きくなっていくならば、そこに市場があるのではないか。データ基盤をめぐる問題解決のために、トレジャーデータを創業した」(太田)。

創業後に最初に手掛けた製品は、Hadoopをクラウドサービスとして提供するというサブスクリプション型のサービスだった。申し込めばすぐに使い始めることが可能で初期投資が抑えられ、サブスクリプションになっているためコストも最適化でき、オペレーションするための人材が要らないという製品だった。

しかし、サービス開始から4年、5年経過したとき、デジタルマーケティングの世界でデータ分析による顧客理解への関心が大きく高まってきたことで、「最初はデータ基盤という手段を簡単にするツールを作るために創業したが、よく顧客の意見を聞くと、その目的が顧客行動の分析であることがわかってきた」(太田)

顧客理解のためのデータ基盤、こうしたニーズの高まりにトレジャーデータがどう応えるか。そこで、顧客データをもっと簡単に集められ、もっと簡単に扱うことができ、そしてもっと様々なツールで活用できるデータ基盤としてCustomer Data Platform=CDPに辿り着いた。

Hadoopコミュニティでの交流を通じてデータ基盤のクラウド化をサービス化し、顧客理解というデジタルマーケティングのニーズの高まりに応じてCDPを展開するという「マーケットイン」型のビジネス展開を続けてきたことについて、太田は次のように語った。

「私たちの製品は何万社もの顧客がいるものではない。1社1社のニーズをどこまで吸い上げるかが重要だ。サブスクリプション型のビジネスモデルは、顧客と中長期的なお付き合いをしてはじめて一定の規模のビジネスになる。顧客が満足しなかったら、そこで終わり。そういう緊張感をもって、これまでビジネスを進めてきた」(太田)。

アフターコロナの時代は、消費行動のデジタル化が加速する

講演の後半は、新型コロナウイルス(Covid-19)の感染拡大を受けて世の中が変化していくなか、これからの消費者の購買行動にどのような変化が生まれるのかについて語った。

太田はまず、この10年スマートフォンによるモバイルインターネットが普及したことによって、消費者の購買行動にどのような変化が生まれたのか、生まれなかったのかを整理した。

例えば、消費者がテレビを買うとき、ネット以前の時代は、家電量販店を訪れ、並んでる商品から店員に商品の説明を聞いて何を買うかを決めることが多かっただろう。それが、モバイルが普及したことでインターネットの商品公式サイトや価格比較サイト、ECサイトやレビュー記事を自分で調べ、欲しい商品の目途を付けてから家電量販店に行くことが多くなったのではないだろうか。

「7割のカスタマージャーニーがオンラインになっている。オンラインで商品を知って理解してもらわないと買ってもらえない。企業にとって顧客獲得の戦場はデジタルになっていて、店舗が最終コンバージョンになっている」(太田)。

しかし変わらないのは、リアルな店舗の存在だ。現在、購買行動のEC比率は世界的には15%程度しかなく、ほとんどの人たちは店舗で商品を購入している。「そこには、触ったり見たりしないと安心できないという消費者心理がある」と太田は説明する。

ただ最近では、オンラインで気軽に商品を購入する新しい世代(ジェネレーションZ)も登場している。店舗を訪れても商品の情報をスマホアプリで探したり、お得なオファーを調べたりなど、リアルでもデジタルエクスペリエンスを求めている世代だ。

こうした動きは、これまでは20代前半の若者にしか見られなかったが、アフターコロナの時代は、全世代でこうした動きが加速するのではないかというのが、太田の観方だ。「ECの比率は上がり、VR・ARなどを活用し商品の疑似体験できる機会も増えるだろう。また、パーソナライズされたオファーへのニーズも高まるのではないか」(太田)。

新型コロナウイルス感染拡大防止のために「ステイホーム」が長く続くなかで、消費者の中には「デジタルだけでも生活が成り立つ」ということに気が付いた人も多いのではないだろうか。こうした「人間として当たり前に思っていたことが実は違っていたという気づき」は、今後の購買行動を大きく変え、消費のデジタル化が加速していくきっかけになるだろう。

太田は「どんな分野の企業にとっても、顧客をデータで捉えていくことが、これから市場で生き残っていくために必要だ」と語り、行動のデジタル化によってデータが収集できる顧客接点が増えることで、企業はこれをチャンスと捉えてCDPをビジネスに活用していくことを提案した。

「CDPが目的化すべきではない。消費行動の把握やチャネルのデジタル化の一環としてCDPを活用するという考え方であるべきだ」(太田)。

人間のクリエイティビティとシステムの融合がこれからの課題

太田は、CDPのこれからのポテンシャルについて「マーケティングテクノロジーとして見られることが多いが、これからはカスタマーサポートやコールセンターでの顧客データの活用や、製販連携によるサプライチェーンマネジメントの最適化など様々なシーンでの活用可能性がある」と指摘する。膨大なデータを処理するテクノロジーは、今後ビジネスの様々なシーンで活用されるだろう。

そこで、講演最後のテーマとして「人間と機械の役割分担、その構図はどう変わるか」というトピックに対し、太田は自身の考えを披露した。

カオスマップによると、2014年には1,000弱だったマーケティングテクノロジーは、2020年には8,000に。この6年間で約8倍にまで増加しているという。ひとつの企業では概ね150個程度のツールを使っていると言われ、グローバル企業にもなると数千個のツールを活用している場合も。そして、自社のビジネスの対象となる顧客のデータは指数関数的に膨れ上がっている。

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こうした状況において、「マーケターは頭の中でカスタマージャーニーを作れるだろうか」と太田は疑問を投げかけた。もちろん、セグメンテーションやターゲティングを行い広告を展開したり、新商品やキャンペーンを展開することはできるだろう。しかし、顧客ひとりひとりのカスタマージャーニーを把握し、適切な打ち手を考えていくというのは、人間の能力では非常に厳しいと言わざるを得ない。

「本質的に、多くのツールに億単位のユーザーデータがバラバラに散在し、チャネルも多様化しているなかで、“誰に何をどのタイミングで売るか”というのは、機械のほうが向いているのではないか」(太田)。

しかし一方で、デジタルマーケティングをすべて機械=システムに任せてしまっていいのかというと、そういうわけではない。マーケティングはそのプロセスの様々なシーンに人間の経験や直感が働くものであり、完全に機械に任せてしまうと人間としての恐怖感も働く。何より、仮にマーケティング予算100億円を投じてシステムが勝手に運用してくれるとしても、売上が上がったり下がったときに担当者はその理由を説明できない。マーケティングに人の力は不可欠なのだ。

太田は、「中間のアプローチが必要」と語り、これからの時代は今後は機械が得意な部分は機械に任せ、人間が得意なことは人間がやるというスタンスで、人間とシステムがどう融合していけるかが大きな課題になるのではないかという考え方を示した。

「これだけテクノロジーが進んだ世界であっても、マーケティング予算を完全に機械に任せる会社はない。感情に訴える部分やブランド価値に関わる部分など、データで表現できない部分は当然ある。データも重要だが、同じくらい人間の感性も重要だ。マーケターの才能やクリエイティビティをデータの側面から支援するためには何ができるのか。これが、これからのトレジャーデータにとっての面白い命題になる」(太田)。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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