MARUNOUCHI SESSION

16:45-17:15
価値のグレイグー化とアート

東京藝術大学COI拠点 特任講師
力石 武信 氏

講演概要

登壇者の、ロボティクスの研究からアート作品作りに移行して行った経験を紹介し、アートが工学やもの作りにもたらす価値について、議論を行う。
従来、ロボットと人間の関わり方を設計する際は、心理学や社会科学といった学術分野に基づいて来たが、この方法では他の学術分野の制約をそのまま受け入れ、人間存在自体が他の学術分野において科学的に理解されることを待つ必要が生まれてしまう。
しかしながら、アートは解析や定量性を目指さず、作家自身と一体化した芸術性により、その作品の価値を生み出す。よって、工学が持っていないノウハウ、とりわけ、人間の情動に対する一般化されない知識を多く持つため,ロボットと人間の関わりを設計するために非常に有用である。
一方、さらに工学や産業に目を向けると、日本のように、科学技術力に基づくもの作りによって発展してきた先進国は、新興国の発展により、その地位を危うくされている。2016年度版ものづくり白書にも言われるように、我々は機能的価値だけを追求してものづくりを行っていても、価格競争による利幅低下を招く時代にいる。そこで、顧客の主観によって決まり、機能やスペックのように定量化できない価値、「意味的価値」へ付加価値が移っていくと言われているが、定量化できない価値の生み出し方も解析的に行った場合、機能的価値と同じ道をたどるのではないかと考えられ、知識の一般化を目指さないアートが有用なのではないかと考えられる。
また、生命の進化の過程を見てみると、環境に最適化した個体が生き残る一方で、大多数の個体が最適化戦略をおこなった場合、個体としての優位性が失われるだけでなく、システム自体の破壊を引き起こすことが知られている。
コンピュータサイエンスが発達し、AIがますます進歩していく人間社会を一つのエコシステムと見なすと、社会の中で最適な振る舞いができるAIシステムが大量に生まれる近い将来、人間社会の価値を破壊的に変えてしまうのではないかと考えている。このことに対しても、アートは何らかの社会的役割を果たせるのではないかと考えている。

プロフィール

力石 武信 氏
東京藝術大学COI拠点
特任講師

ロボティシスト/ロボット研究者。東京藝術大学COI拠点 特任講師。大阪大学基礎工学研究科 知能ロボット学研究室 招へい研究員。ヒューマン・ロボット インタラクションや、ロボットのアート分野への応用に興味を持つ。大阪大学在学中の2011年にロボット演劇プロジェクトに参加して以来、ヨーロッパ、アメリカ、アジア各国で、演劇、映画、オペラといったパフォーミングアートの現場でロボットを用い、多くの作品に参加している。
また、劇場という観客を動員できる利点を生かし、各国でのロボットやその振る舞いに対して印象評価など、工学の視点からも研究を進めている。

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