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教育におけるデータ活用の限界と可能性 (ゲスト : 杉森公一さん第3回)

PLAZMA TALK #9|金沢大学 国際基幹教育院 高等教育開発支援部門 准教授 杉森 公一氏

Arm Treasure Dataでエバンジェリストを務める若原強が各界注目のゲストを招いて対談するシリーズ「PLAZMA TALK」。

今回のゲストは、金沢大学の国際基幹教育院 高等教育開発支援部門で准教授を務め、教育開発を専門としている杉森公一さんです。

今回は教育 × デジタルについて考えていきます。

本対談は3回に分けて配信いたします。
最終回は、「教育におけるデータ活用の限界と可能性 」についてです。

データを活用することで、これからの教育現場にはどんな可能性が生まれるのでしょうか。

ともすれば監視社会的に進みかねない状況のなかで、測定対象や分析はどう作用するのか。学び続けることの意義や、学びと働きのあいだの距離など、教育の現場にとどまらず、働き方や生き方への問いかけに満ちた対談の回となっております。

第1回目のトークはこちらから
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Arm Treasure Dataでエバンジェリストを務める若原強が各界注目のゲストを招いて対談するシリーズ「PLAZMA TALK」。

今回のゲストは、金沢大学の国際基幹教育院 高等教育開発支援部門で准教授を務め、教育開発を専門としている杉森公一さんです。

今回は教育 × デジタルについて考えていきます。

本対談は3回に分けて配信いたします。
最終回は、「教育におけるデータ活用の限界と可能性 」についてです。

データを活用することで、これからの教育現場にはどんな可能性が生まれるのでしょうか。

ともすれば監視社会的に進みかねない状況のなかで、測定対象や分析はどう作用するのか。学び続けることの意義や、学びと働きのあいだの距離など、教育の現場にとどまらず、働き方や生き方への問いかけに満ちた対談の回となっております。

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教育情報分析、大学機関調査/「勘と経験と度胸」から、客観と確信へ/データには体温がない/超監視社会/授業中の生体データ?/何のためにデータを使うのか/人間のやるべき領域/データがないと空論になる/教育現場のデータ活用/フォーカスグループインタビュー/最適解をつくることは人間にしかできない/作りたいのは予測を覆すもの/大学卒業時の成績は中間的アウトカム/本当に知りたいのは20年後の未来/微分係数を最適化する/学びと成長の余白

Kimikazu Sugimori: Associate Professor, Kanazawa University
Tsuyoshi Wakahara: Evangelist, Arm Treasure Data
Recording: 2020/04/28

※収録はオンラインにて行っています。一部背景に環境音が入っている箇所あります。ご了承ください。

若原 杉森さん、今までいろいろお話を伺ってきたわけなんですけども、最後にまたちょっと観点を変えて、これからの教育を考える上でデータの活用、あくまで手段としてどのようにデータが活用され得るのか、という話も伺ってみたいなと思います。

教育情報分析、大学機関調査

若原 われわれトレジャーデータがデータ活用と言うと、デジタルマーケティング文脈が多くなるんですが、そこでよく起こっていることとしては、これまでの行動履歴、何を買ったか、どこに行ったかなどをベースにして予測して、新しいものをお勧めする話は、よく出てくるパターンなんです。

これからの教育のあり方において、データは手段としてどんなふうに活用し得るのか、というテーマで最後お話ししたいと思います。

杉森 大学の文脈で言うと「教育情報分析」、それから専門用語になりますが、「大学機関調査」という分野があって、私の専門分野の隠れた仕事の一つです。

インスティテューショナル・リサーチ(Institutional Research)や、企業だとインベスターリサーチと呼ばれるものもあります。大学の場合、教育成果や学習成果を測定した上で、データを使った意思決定支援や改善支援を行っていくという分野があるんですね。

例えば、大学でカリキュラムを変えていくとか、今はこういう人材育成が求められているので、教員の配置も含めて学習の改善をどうしていければいいのか、という情報提供をしなければいけなくなる。

その辺りは、伝統分野から今イノベーションの分野に変わっていくので、本学も含めて複数の大学が今、データサイエンス、異分野融合の学部、学科を新設するという流れができています。

「勘と経験と度胸」から、客観と確信へ/
データには体温がない

杉森 ただ、それが従前の大学教育の成果がよかったか悪かったかという評価があるかというと、そうでもない。勘と経験と度胸。KKD法でやっているんですね。

これからはこれが当たる、という風に保健学分野に振ってみたり、データサイエンスにパラメータを振り直したりするんです。

「見える化」や「可視化」というものを客観的データに基づいて現状評価していくという文化づくり、これが勘と経験と度胸から、やっぱりそうかという、客観確信に変えていく。

そういったことが、データ活用では大切なのかなと思って、様々なデータを集めていますが、難題があって。データとか平均、代表値に指標を作ってしまうと、そこには血が通っていないんですね。

データには体温がない。いざ分析しようと思っても、その教室で、どう学生が学んでいて、課外や学生生活の中でどんなことを思っているのか?というところまでは見えない。

ですので、「指標づくり」や「評価づくり」というときには、初めに学生のグループインタビューから入ることが多いです。

しっかり質的な調査をして、指標化をする。で、定量的なものが出てきて、それをまた質に返していくという、定性的なものと定量的なものを行き来しながらやっていくと、教育環境は変わっていきやすいと私は思うんです。

若原 今のお話というのは、何かしらの教育のカリキュラムや、そのカリキュラムをどの教員に実施させるかという教員の配置を、いったん仮説立てられて、その仮説の下に教育を実施する。

その実施された教育に対する学生の反応を定量的、もしくは定性的に評価する。そして評価を元に、そのカリキュラムがどうだったか、教員配置がどうだったかという、いわゆるPDCAを回していくような流れを、KKD、勘と経験と度胸の世界から上手くシフトしていく、ということですよね。

杉森 そうですね。
それが、大学の評価ということで重視されてきたんですが、そもそも仮説が間違っている場合が多いので、学生の声から、教員の声から積み上げていかなきゃいけないだろうというところですかね。

若原 これまではカリキュラムを作る方たちの主観で割と仮説が立てられている感じだったんですね。

杉森 そう思いますね。

超監視社会 / 授業中の生体データ?

杉森 設置基準を満たすように、大学設置を行っていくんですが、それが社会ニーズとどう合ったのかというマーケティングはするんでしょうけど、その中で体温を持った学生と教員がどうなっているかというところまでは、なかなかアセスメントまでは難しいんですね。

ただ、そういった中で、データ活用、データサイエンスもそうですが、データの粒度が細かい、「体温データ」「心拍データ」「生体データ」まで、今は取得できる世の中に近づいてきている。

なので、超監視社会になって、授業の中で、どの教科書のどのページを見て、どんな心拍数で、ということが研究できてしまう。そこから入るのどうなのか?というところもありますが、データ活用ってそこまで行けてしまう。

若原 理屈としては行けると。

杉森 オンライン大学の研究でも、タイピングの指紋をとるんですね。レポートを書くときの「タイピングの癖」をとっておいて、なりすましを防ぐ。これは本当にできているんです。

若原 いわゆる筆跡鑑定的な感じで、タイピングの癖から人を同定するというか、なりすましを防ぐんですね。

杉森 ええ。本人が、そのオンライン大学の単位取得のためにやっていることって、やっぱり監視社会のほうに向いていますね。

若原 なるほど。
理屈で言うと、複数人の学生がずらっと並んだ状態で、誰がどれだけ発言しているかも視覚化できますし、そういう意味では、視覚化されたり明らかになっていくことは、リアルな授業、学びの場より多い気もしますけど、監視されている状態が強まりすぎると、それはそれでどうなのかな、と。

何のためにデータを使うのか

杉森 そうですね。
なので、「大事なものを測ってはいけない」という言葉もありますけど。本当に大事なものは、測れないものであると。でも、客観と確信を持ちたいので、測ってもいいと思うんです。

何のために使うのか?という部分。
ハードウェアがあってソフトウェアがあるけれども、最後のところ、それをどう使うのか?何のためにデータ支援をやっていくのか?というヒューマンウェアと呼ばれるものが欠落してしまうと、人間は使われていくという方向にしか行かないんじゃないかと思うんです。

人間のやるべき領域 / データがないと空論になる

若原 確かにそうですね。
さっき紹介いただいたロボットプルーフの話にも通ずるところがありますね。人間じゃないとできない領域がある。

ヒューマンリソースという要素が大事であるとか、そういった話とも通ずるところがあるなと思います。役割分担が上手く図れるといい ということなんですかね。

一方で、データ活用だと”AIならでは”でこなせる部分も、もしかしたらあるかもしれないし、そういった役割分担が上手くなされていくのが大事なんでしょうか。

杉森 そうですね。
あとは私たちがどんな風に仮説というか、いろんな人の生の声、体温のあるデータをどう見立てるか?。それを裏付けるということが大切。

で、インサイトが得られるわけですよね。
そのときに、「一致する」「一致しない」というところの話が大切なのかなと思います。

ただ問題は、勘と経験と度胸は大切なんですけど、もしデータがなかったら、データを取得することを怠ったら何が起こるかというと、裏付けがないので、空論になりがち、地に足がついた意思決定は難しくなると思うんですね。

教育現場のデータ活用 /
フォーカスグループインタビュー

若原 データは民主化されるという流れも踏まえつつ、今はどちらかというと教員の方々が活動されるベースとして、カリキュラムやリソース配分計画の最適化のお話があったかなと思いますが、教員一人一人の方々の活動に向けて、データ分析結果が活用されるお話って、今まであったり、これからありそうとか、そういう話ってあるんでしょうか?

杉森 大学が、どんな風に構造を変えていくかという議論の中に、教員評価の結果や、大学が持っているデータを共有していくという流れは、どの大学も進んでいます。

私が今試しているところは、学生の声、フォーカスグループインタビューと言うんですけど、3、4人とか5、6人が集まって、何気ない会話の中から本音が聞き出せていくと。

そういった本音を、全部テープ起こしすると600ページとかになるんですね。でもそういったものを、そのまま使ってはいけないんです。

そこからデータを抽出して、量的なものと掛け合わせをしながら、混合的にものを見ていく。

学生の声の中からは、見せかけのアクティブラーニングはやめてほしいという声は、正直出てくるんですね。

じゃあ、それを裏付ける学習時間はどうなのか?確かに、1年生から4年生まで、だんだん学習時間が少なくなっていくような学科も出ているかもしれないねとか、そういったことがわかっていくんですね。

最適解をつくることは人間にしかできない

杉森 それを使うのは、アセスメントをするデータ分析者ではなくて、意思決定をする学部長や学長とか、そういった人たちが見て、しっかりと考えていく。またはデータを元にして、考えるきっかけにする までしかできないと思うんですね。

で、そこから最適解が出てくると何が起こるかというと、データ至上主義的すぎるので、最適解を作るのは人間にしかできないと思います。

ただ、そのときに、なるべく体温のあるデータを集められるかどうか。そこはデータ科学というよりは、知識科学の分野なんでしょうね。

若原 杉森さんの言葉で言うところの、体温のあるデータを上手く集めてあげて、そのデータが示すところがゴールではなくて、そこはあくまで考えを始めるきっかけの一つにすぎない。

それが、ない状態よりかは、より正しい方向により効率よく考えられる。そのベースから自分たちで物事を考えるという、その主体性も合わせて大事だという気が改めてしました。

作りたいのは予測を覆すもの

杉森 データ分析というところを足場に置きながらも、データは過去しかわからないので、未来に外挿していったって予測でしかないんですが、できれば予測を覆すようなものを作りたいですね。

若原 それは面白いですね。

杉森 それは、機械学習ではできないことだと思います。

若原 そこ、すごく興味があるので、もうちょっと伺ってもいいですか?予測できないものを作るっていう。

大学卒業時の成績は中間的アウトカム /
本当に知りたいのは20年後の未来

杉森 例えば、「学生の学び」というところを見たとき、卒業段階ではこうだと。

学習時間や成績の推移を見たら、卒業段階では伸びたというのが、わかるとしましょう。でもそれは、「中間的アウトカム」と呼ばれていて、本当は社会に出て20年後どうなるかを見たいわけです。

だから、そこで見るのはグラジエントと呼ばれる傾きを見るわけですね。学生が伸び始めました。まだここまでしか来てないけど、すごく伸び始めたところで、リリースされて、社会に入っていって、20年後どんな社会を作っていくか。

微分係数を最適化する

杉森 でも成長という言葉も危ういので、成長しなきゃいけないという一元的な軸ではなくて、多元的な軸ですよね。

その一つの部分を見たとき、学生がここまで自分事にして、社会を作ろうという部分が見えたと、測ってはいけない部分が見えた。

測ってはいけない部分に対して証明するような、ある側面の伸び率みたいな、傾き、微分係数が見えたと。その微分係数を最適化するように、私たちが支えていくという支援のあり方を考える。それって、過去じゃなくて未来の話ですよね。

若原 未来の話であり、一足飛びに未来まで見渡しすぎずに、要所要所で寄り添ってあげるみたいな感覚なんですかね。

杉森 そう思いますね。

学びと成長の余白

杉森 なので、その分係数を最大化するためにどんなことが必要かということです。

大学教育というコンテナ、容器が必要なのか?、環境が必要なのか?ということを最大限考えなくてはいけないです。でも、最後は学生なので。

私たちが何しようが、彼らの行動を変えることは、私たちにはできない。最後は手放す。

評価の仕方、レポートの書き方や学び方は、もちろん学問を通じて叩き上げていこうとするわけです。
でも、その中で伸びる学生は勝手に伸びるわけです。

どんな時代であっても、今まで伸びてきた人たちは伸びてきた。

私もいろんな単位を落として、フラスコを割っていた大学生だったわけですけども、そのとき考えていたことが、今に全部繋がっていくという気持ちがあります。

学生時代って宝物ですよね。決して伸びなかったですけど、そのとき考えてきたいろんなことが今繋がっていくということを、20年かかって理解する。

となると、なんとなくその余白というか、伸びるだけの影響を与えるように、私たち自身が彼らとともに学んでいるような状態にある。

一緒に学んでいく場を、どう作っていくか?というのが、一番返ってくると、一番伸びる状態なのかなと思いますね。

最後は、何もしないこと。
最後は、評価しないこと。
最後は、どうぞご勝手にというところまで、来年から巣立てるように、精一杯応援していくことしか、最後はできないのかなと思いますね。

若原 今日のお話、すごく面白いですね。K60という考え方が特に面白かったです。

また、いろいろな既存の枠を取り除いた上で最適化し直すみたいな話の中で、学びと働くが分断されているけれども、本当は繋がったほうがいいんじゃないかみたいなところ。

あと、人生ずっと学びが続くことでもあるという観点から、もともとあるK12という概念を延長してK60、60年間学びつつ働きつつ、というのはすごくいいなと思いましたし、そこに対して僕らとしては、データがどう活用できるのかも改めて考えていきたいです。

非常にいろいろ考えさせていただいた時間でした。本当にどうもありがとうございました。

杉森 ありがとうございました。

ーーーーーーー
最後までお読みいただきありがとうございます。
杉森さんとの対談は以上になります。

引き続き、当サイトでは弊社エバンジェリストの若原と各界の素敵なゲストによる対談をお届けしていきます。ぜひお楽しみに。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
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