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事業企画や技術者にもおすすめ。異例の重版が続く「IoTが全部わかる教科書」

IoTおすすめ書籍の著者に聞く!活用法と最新動向(01)

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IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書」(SBクリエイティブ)が、発刊から2年ほどで技術書としては異例の7刷に達した。ニッチとも思えるIoTの専門書を手にする読者が、なぜ増え続けているのか。誰がどのように活用しているのか。書籍の特徴やIoTに関する最近の動向について、執筆にあたった株式会社ウフル IoTイノベーションセンターを代表して、八子 知礼氏、杉山 恒司氏の二人に話を聞いた。

部署で一括購入する企業も。誰もが知りたいIoTの知識を体系化

――2017年秋に出版された「IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書」は、どのような経緯で出版されたのでしょうか。

杉山氏: 私たちウフルは、システムインテグレーターとして主にクラウド事業を展開してきました。「IoT」という言葉が世の中に広まる以前から、IoTと呼べるようなプロジェクトを経験していたこともあり、時代の要請に応えるべく2016年に事業の軸をIoTへとシフトさせました。IoTが従来のIT的なプロジェクトと大きく異なるのは、人や組織、システムやパートナーの壁を越えた協創によって新たな価値が生まれることです。そこで、協創の場として「IoTイノベーションセンター」を立ち上げました。

書籍「IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書」(SBクリエイティブ)の表紙

IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書(SBクリエイティブ)

IoTでは、センサー、通信、クラウドなどテクノロジーの幅広い知識を備えて一気通貫で全体を見通せ、さらにビジネス企画力やプロジェクトマネジメント力を持ち、組織の枠組みを超えてプロジェクトを推進できる人材が必要です。すべて持ち合わせた人材は限られていることから、人材育成も欠かせません。そこで当センターでは、重要な柱として「IoTイノベーションスクール」を運営しています。

八子氏: いろいろな場所で話をする機会がありましたが、みなさんの疑問や不明点は似ていて、いつも同じような説明を繰り返していました。スクールのカリキュラムでも、やはり同じことを説明する必要があるので、体系化したドキュメントにまとめたいと考えていたところ、タイミングよく出版の打診がありました。

株式会社ウフル X United IoT Innovation Center ディレクター 杉山 恒司氏
株式会社ウフル X United IoT Innovation Center ディレクター 杉山 恒司氏

 

――書籍の表紙からは、エンジニア向けを対象にしている印象を受けましたが、どんな読者にどんな用途として読んでもらいたいとお考えですか。

八子氏: 当時はIoTについて、まとまった情報が少なく、類書もクラウドを中心とした技術寄りのものが多いように見受けられました。本書はソフト、クラウド、センサーデバイスなどのハードから、通信・ネットワーク方式、セキュリティ、また導入後の運用、データ分析の手法まで、技術面を網羅的にカバーできる広さと深さにしています。そのため読者がすでに得意としている領域に関しては物足りなさを感じるかもしれませんが、IoTの領域は広くて詳しくないことも多いはずなので、周辺領域の「アタリ」を付けるのに役に立ててもらえればと考えています。

ただ、本書は技術書だと思って執筆していません。ビジネスの作り方やシステムの作り方にまで言及し、IoTの全体像をつかめる内容としている点が特徴的です。大手企業の間で一気にIoT専門組織が立ち上がってくるだろうと予想していたので、ある日異動した人たちが「IoTって何?」と悩まなくてすむための入門書としても役に立ちたかったのです。事業企画の担当者などにも向いている一冊ではないでしょうか。

IoTがわからなくて当然ですし、一人で進められるものでもありません。仲間を作って進めていけるように、共通の言葉で話せるようになるために活用してもらえると思います。専門的な内容も多いですが、どうすれば平易に伝わるか悩みながら書きました。

株式会社ウフル CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)兼IoTイノベーションセンター所長 エグゼクティブコンサルタント 八子 知礼氏
株式会社ウフル CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)兼IoTイノベーションセンター所長 エグゼクティブコンサルタント 八子 知礼氏

 

――2017年秋に出版され、2年弱の間で7刷に達しました。言葉としての「IoT」は、バズワードとしてメディアに取り上げられるピークを過ぎたように感じるのですが、これだけ売れ続けている理由は何だと思いますか。

杉山氏: IoTに取り組む企業が増え、その企業内でも全社的な広がりになっているからこそ、読者も増えているのだと思います。部署でまとめ買いして、体系的にまとまったニュートラルな教科書として使っている会社もあります。地方の企業や団体に訪問したときも「読んでますよ」と言われることが多いですね。

八子氏: 技術系の書籍としては異例で、出版社によると、部数においてもベストセラーだといえるそうです。

IoTは「ITの世界」とは違う。機動力のあるベンチャーが先行するワケ

――技術書というより、「教科書」を意識しているからこそ、内容も色あせていないのですね。ただ、流れが速いデジタルの世界ですから、出版から2年経ったいま何かアップデートしたり補足する情報はありますか。

八子氏: 書籍について、押さえるべき要素は変わっておらず、改訂してまでアップデートする必要性は感じていません。ただ、出版後の2年でIoTというキーワードがコモディティになって、だいたいの人はIoTの重要性を話せば理解してくれますし、「うちは関係ない」という人もいなくなるなど社会が変わりました。IoTへの理解や取り組みが進み、業界地図は大きく変わったと思います。ただ、やはり機動力のあるベンチャーのほうが進んでいますね。その現状は知っておくべきかもしれません。

――ベンチャーとそうでない企業で差がつくのは、なぜでしょうか。

八子氏: IoTは、そもそもITの世界ではありません。デジタルの世界ではあるものの、ITではないのです。その点を誤解し、従来のIT導入の考え方と同様のアプローチに終始してしまうことで失敗しているケースが散見されます。IoTを支援するITベンダーが勘違いしている場合もあります。

杉山氏: 情報システム部門が新しい機器を設置すると、すぐROI(費用対効果)の話になるものですが、これはITの発想です。そもそもIoTでは、ゲートウェイ装置を1つ置いてログを取り始めたぐらいでROIは出ません。

八子氏: IoTは、“デジタルツイン”を実現するための手段です。そのために、まずはデータビジネスも考えた適切なデータを集めないと始まりません。しかし、ROIを求めることが業務フローになっているから、ROIでは計れないことを頭では理解していても、これまでと同じ型に当てはめないと動き始められないわけです。本書でも少しだけ触れましたが、この場合、PoC(コンセプト実証)が目的になってしまい、後続の本格導入の前で止まってしまう危険性があります。そうした点で、柔軟に発想して動けるベンチャーの方が先行しているのです。

最近はデジタルトランスフォーメーション(DX)が話題ですが、DXも手段に過ぎません。1つひとつの会社が、仮説でいいので“なりたい姿”を描いて、そこからすべきことを逆引きで求めて進めるアプローチが必要です。それがわかっていて、さらにDXを実現する前のステップとして、IoTから地道に取り組もうとする企業が増えています。その一方で、DXにおいてもIoTと同じようにスタートラインを間違っている企業も少なくありません。

企業が必然として取り組むべき「重いIoT」

――世の中におけるIoTの進捗について、もう少し教えてください。

八子氏: 機器単位など「点」でIoTを導入する「軽いIoT」は、いたるところで始まっています。しかし、それらがつながっているわけではありません。企業活動全部をデータ化するような「重いIoT」については、まだまだだと認識しています。これはすさまじい取り組みで、易しい話ではありません。例えばグローバルに拠点があれば、北米、欧州、日本と別のプラットフォームを採用していることも少なくなく、これらをまたぐ必要も生じます。まさに全社的な取り組みとして、会社を作り替えるぐらいのエネルギーが求められますから、ROIの話をしている場合ではありません。ITと比べてもIoTでは、経営層の関与と覚悟がさらに重要になってきます。

たとえば、野菜の流通を考えてみてください。作りすぎれば値崩れし、供給が少なければ機会損失だけでなく社会への影響も大きい問題です。需給バランスが非常に重要なわけですが、その範囲が種まきから消費者の購買まで、バリューチェーン全体に広がりつつあり、業界を越えた共通アーキテクチャ作りになっています。

――最後に、IoTに取り組むために本書を手にするみなさんに向けて、メッセージをお願いします。

八子氏: IoTに取り組むことは、競争力を持つ企業として生き残るため、そしてバリューチェーンの一員として活動するために不可欠です。“生きるか死ぬか”という話なのでやるという選択肢しかないのですが、株主や取引先なども巻き込む規模感に気づいていない会社が多いのも現実です。全体感を知り、ゴールに向かって一歩ずつ進んでいってください。

杉山氏: この書籍は、省庁の担当者にも読まれているようです。IoTイノベーションセンターの執筆した書籍が日本におけるIoTの「種」として貢献できていると感じているので、今後も引き続きイノベーションセンターの活動を通じて、花が咲くように支援を続けていきます。

――アドバイザーなどとして全国を飛び回る中、時間を割いていただき、ありがとうございました。

IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書販売サイト(Amazon)へのリンク

著者:八子 知礼、杉山 恒司、竹之下 航洋、松浦 真弓、土本 寛子
出版社:SBクリエイティブ
定価:2,300円+税
Kindle版:あり(2,070円+税)
出版日:2017年10月
ISBN-10:4797392436
ISBN-13:978-4797392432
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書籍「IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書」(SBクリエイティブ)の表紙

 

アーム株式会社

英ケンブリッジに本社を置き、半導体設計やIoTクラウドサービスを手がけています。エネルギー効率に優れた高度なプロセッサ設計は、センサーからスマートフォン、スーパーコンピュータまで、さまざまな製品に組み込まれ、世界人口の70%以上に使用されています。さらに、そのテクノロジーにIoTソフトウェアやデバイス管理プラットフォームを組み合わせ、顧客がコネクテッドデバイスからビジネス価値を生み出すことを可能にしています。
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