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「ホリスティックな体験にこそデジタルを活用すべき」|CES&NRF報告会レポート

年初、世界中から業界関係者が参集する2つの展示会、CESとNRF(NRF Retail Big Show)。出展サイド及び識者による報告会が、株式会社シンクロ・株式会社ヤプリ・トレジャーデータ株式会社共催で開催されました。当記事では当日前半セッションの様子をご紹介します。登壇者は、株式会社顧客時間 共同CEO 奥谷孝司氏、株式会社オプト エグゼクティブ・スペシャリストパートナー 伴大二郎氏、フリーライター 公文紫都氏、モデレーターは株式会社シンクロ 代表取締役社長 西井敏恭氏です。

ニューヨークの先進リテール事情を紹介

セッション前半では、世界最大の小売カンファレンスと言われるNRF並びにニューヨーク・リテールの先進事例をピックアップ。伴氏によると、ニューヨークでベンチマークを行った小売店舗で意識されているのは「カスタマー・エクスペリエンス」。シグネチャーストーリーが多くのシーンで語られていたことが印象的だったといいます。

事例では「Allbirds」、「Everlane」、「Nordstrom」、「Nike」、「b8ta」、「Showfields」、「Neighborhood Goods」などが取り上げられ、各ブランドのシグネチャーストーリーや、それを消費者に届ける手法、体験について紹介されました。多種多様な業態で小売の可能性が考察される一方、一部の体験型リテールでは、購買というプロセスや購買体験自体を阻害されてしまっているという課題も指摘されました。

奥谷氏は「重要なのは体験と購買のバランス」であるとし、「オンラインでシグネチャーストーリーが優れて表現されていてもオフラインの店舗でそれが表現されていなければ本末転倒です。オンライン系企業が店舗をやるケースでは、聖地化、つまりオンラインで良い体験を得た消費者が、ぜひここに来たいとイメージするような店舗があれば、その体験はより良いものになるはず」と解説、その好例として、公文氏は「PELOTON」を紹介しました。

CESとNRFから読み解く5つの視座

後半はCESとNRFを総括し、奥谷氏が「脱自前主義」・「脱プロダクトアウト」・「Frictionlessの実現」・「With C」・「Branded Re-commerce」の5つの視座で最新トレンドを読み解きました。それぞれを事例とともに紹介します。

右手にマイクを持つ奥谷孝司氏(株式会社顧客時間 共同CEO)

「脱自前主義」:

Delta Airlineが取り上げられました。スマホアプリ「Fly Delta」がスタートアップ「Lyft」と連携し、空港までの車の手配やマイル獲得でユーザーの体験を向上させる取り組み、スタートアップとのコラボレーションで話題を集めた「パラレル・リアリティ」(今夏実装)、導入が決定している「Sarcos Robotics」のパワードスーツなどを例として、スピード感をもって顧客体験を向上させるために日本企業は自前主義を脱するべきと説明しました。

「脱プロダクトアウト」:

TOTOが「Good 2 Go」と協業して展開する移動式トイレサービス。「Good 2 Go」はサンフランシスコに拠点を構えるスタートアップ企業で、アプリを活用して「いつでもどこでもアクセスできる快適・清潔・安全なトイレ」を検索・予約できるというもの。ブースには移動する個室トイレの実機も展示されていました。奥谷氏は、「作り手の理論や計画ではなく、利用者の課題感を見ていることが重要」とコメントしました。

「Frictionlessの実現」:

ユーザーが何らかのアクションを取る際に、摩擦が生まれないかを真摯に考えることが重要。例としてP&Gの「Lumi by Pampers」や「Oral-B iO」が挙げられました。前者はセンサー付きの紙おむつ、後者はAI搭載の電動歯ブラシです。「Lumi by Pampers」はおむつの状態だけではなく、睡眠周期なども追跡でき、子育てで困っていることを解決しようとする「子どもと両親のWellnessまで考える」点が言及されました。また「Oral-B iO」では、利用前に毎回アプリを起動しなくてもデータが蓄積されていく利便性がFrictionlessを実現していると評価、伴氏も同調していました。

「With C」:

前述したPELOTONは、アメリカ発のサブスク型家庭用エクササイズバイクです。モニターを搭載しており、会員向けのレッスンコンテンツ視聴やアクティビティの記録が可能で、特質すべきは、活発なコミュニティが形成されていること。一人でエクササイズを続ければ生まれてしまう飽きの問題を解消しています。PELOTONのスタジオはまさに「聖地」で、記念のライドをそこでしたい!というユーザーが後を立たないということです。

「Branded Re-Commerce」:

「販売後の時間を、企業が本気で見るようになった」(奥谷氏)。例としてはPatagoniaが挙げられ、自社中古商品を買い取りリクラフトするなどして再販する仕組みが紹介されました。中古品を自社で買い取りをすることで、自社経済圏の中でまた違う顧客の時間とつながることができ、かつ、ブランド毀損を防止できると奥谷氏は指摘します。サステナブルの観点でも広がっていくべき考え方として紹介されていました。

「単機能として、ある特定の事象だけを解決するのではなく、社会や自分を含んだホリスティク【全体的・包括的】な体験を作っていかなければなりません。販売した後の方が大事で、繰り返し起こるカスタマージャーニーに対してどう伴走するか。そこにデジタルを活用することが必須となるでしょう」

奥谷氏がPLAZMAに登壇!

なお、本イベントでは、トレジャーデータからマーケティングマネージャーの小林広紀がライトニングトークを行い、2020年2月17日(月)〜2月18(火)の日程で開催される「PLAZMA 2020 KANDA 」(会場:神田明神ホール)の告知がなされました。17日のキーノートでは奥谷氏に登壇いただき、「テクノロジーの進化で、顧客時間はどう変わるのか? CESとNRFに見る未来の小売」と題してご講演いただきます。ぜひご来場ください。

PLAZMA 2020 KANDAを紹介する小林広紀(トレジャーデータ株式会社 マーケティングマネージャー)
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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
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