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最新ABM事例 : USEN ICT Solutionsの営業高度化 -プロジェクト推進者の心得

CASE STUDY|株式会社USEN ICT Solutions

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USEN-NEXT GROUPのUSEN ICT Solutions(以下、UIS)は、2020年10月にTreasure Data CDPを導入し「営業高度化」というテーマのもと全社プロジェクトを開始した。これまではデジタルマーケティングへの取り組みが手薄でハイタッチなコミュニケーションをメインとした営業スタイルだったが、今は、メンバーのデジタル知識の底上げなどに強い手応えを感じていると言う。

全社プロジェクトとしての「従来型営業のデジタルトランスフォーメーション」という難しいテーマを進行させるためのポイントはどこにあるのか–。前編では、プロジェクトの進行を取り仕切るプロジェクトリーダーの泉氏、およびPMOの朝倉氏・伊藤氏の3人に話を聞いた。

▼後編はこちら
最新ABM事例:USEN ICT Solutionsの営業高度化 – 営業部門が語る裏話

<目次>

データ活用で組織的なマーケティング強化を目指す

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左から伊藤氏、泉氏、朝倉氏

–まずは、今回UISで取り組まれているプロジェクトについて、目的や課題意識などを教えてください。

伊藤:これまでは新規開拓からクロージング、継続的なフォロー、アップセルと、ほぼすべてを営業が担っている状態でした。そのため営業の負担が大きく、個人の能力差により成果のばらつきもありました。獲得したリードについてもナーチャリングが満足にできないまま長期的なフォローができず、大部分を手放してしまっていました。このような課題を解決するために、組織的なマーケティングの強化が求められていました。

朝倉:一方で、データの活用そのものが限定的かつ属人化している状態でもありました。収集する情報やデータを活用するノウハウが乏しく、営業組織全体に画一的なアプローチが常態化していました。データの活用を最大化・適正化し、会社としての売上・利益創出を加速させること、顧客とのエンゲージメントを高めることを本プロジェクトの目的と位置付けています。

–プロジェクト立ち上げのきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

泉:デジタルマーケティングの推進役として2020年5月にUISへ入社してから、社内で複数回デジタルマーケティングに関する勉強会を開催していました。同内容に興味を持った経営層から「コロナ禍でもリードを安定的に獲得する」、「リモート商談における営業伴走」、そして「ニューノーマルと称されている新時代営業体制の確立」を直接要請されたことがきっかけです。

その後のプロジェクト起案時にもこの勉強会で刷り込みをしていたことが功を奏し、スムーズにCDP導入を進めることができました。お腹が空いてからエサを撒いているようでは遅くて、お腹が空く前から啓蒙活動をしていないとここまでの賛同は得づらかったと思います。

朝倉:勉強会は経営層だけでなく営業部や他の部署にも影響を与えていて、プロジェクト発足時点で必要な意識醸成ができ上がっていたように思います。また私自身も元々営業部所属だったのですが、泉さんの勉強会を聴いたことがきっかけでこのプロジェクトへ参加を志願しました。

–経営層から「コロナ禍」というキーワードが出たとのことですが、コロナをはじめ外部環境の変化はプロジェクトに何か影響していたのでしょうか?

伊藤:コロナ禍でなくともプロジェクト自体は発足していたと思います。ただ追い風にはなった。営業現場でもリモート商談の機会が増えたのでデジタルに対する興味が高まったタイミングではありました。

泉:コロナ禍で何かしなければと全員が危機感を抱いていたものの、実際に何をすれば良いのかがわかっていない状態でした。そのタイミングで勉強会がトリガーとなり、プロジェクトの発足に繋げられたことはラッキーでしたね。

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全員が主役となるプロジェクト体制構築の「仕掛け」

–コロナ禍はプロジェクトの直接的なきっかけではないが、プロジェクトを加速させる要因にはなった、ということですね。今回の取り組みは全社プロジェクトということですが、具体的にはどのような体制だったのでしょうか?

朝倉:プロジェクトリーダーに紐付くPMOとして私ども3名が任命され、取り組みに必要な領域ごとに9つのワーキンググループを立ち上げました。各ワーキンググループメンバーはその領域をもともと既存業務として担当していたメンバーを中心に構成されています。グループ間の兼務兼任もありますが、合計で30名程度の人数に及びます。

USEN ICT Solutions様プロジェクト体制

–プロジェクトの初期フェーズではシステム構築タスクが多くなるため、発足当初から関与の少ない部署やメンバーを巻き込むことは珍しいと思います。なぜこのような幅広い領域でプロジェクト開始当初から多くのワーキンググループを設置されたのでしょうか?

泉:私の過去の経験から、全員が主役にならなければプロジェクトに継続力を持たせることは難しいと思っていました。例えば、スモールスタートで始めてしまうと、後から参画したメンバーはおまけで入れられたような印象を受けてしまい、グループ間を跨いだ自発的なアクションを期待することは難しくなる。プロジェクト開始直後にはアクションがないグループでも、最初から参画が必要だと伝えることが重要です。最初から幅広いワーキンググループを設置することは必須条件と考えていました。

–立ち上げたプロジェクトを運営・推進するにあたり、意識されたポイントを教えてください。

泉:「全員が主役」というテーマは非常に重要です。大きな変革は当然一人では為し得ないので、ワーキンググループにコア業務を任せる体制にしつつ、メンバー全員のモチベーションを維持する必要があります。そのためにはリーダー自身がやり抜く姿勢を常に崩さないことが大事だと考えています。特に今回は、私以外はCDPを知らないメンバーがほとんどで、プロジェクトに対して疑心暗鬼な状態から加わってくれたメンバーもいたと思います。プロジェクト自体が魅力的でないとメンバーは伴走してくれませんので、「みんなが中心であり、そして、みんなで会社を変えていこう!」という意識を醸成してきました。

朝倉:勉強会などで意識の醸成がなされていて、かつプロジェクトメンバーは各ワーキンググループのリーダーが選出したのでモチベーションという点で難しさを感じることはありませんでした。ただ、コア業務を各ワーキングループに任せていくとどうしても全体感を持つというよりは各論での会話になりがちです。定例プロジェクトミーティングやステアリングコミッティは共通の目的意識を再確認する良い機会となっていますが、十分ではない場合もあります。

私はPMOの立場で可能な限り多くのMTGに参加して、プロジェクト全体の視座から各ワーキンググループの活動やリソースを調整したり、ワーキンググループ間の連携を促進する動きを率先して実施しています。また私がリーダーを兼任するワーキンググループでは、別のグループに対して気になったことがあれば些細なことでも意見を求めるよう意識的に動いています。そうすることでグループを超えた課題感の共有やプロジェクトへの積極的な関与の促進に結びついているよう感じます。

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部門を越えた意見交換がプロジェクトを活性化

–全員が主役になるようPMOはメインに立たず、あえてグループ間の連携推進や裏方に回るよう心掛けていたのですね。プロジェクト発足から半年が経過したタイミングですが、進捗状況としてはいかがでしょうか?

朝倉:2020年10月1日にTreasure Data CDPを契約、そこから半年でインプリが完了し、会社のほぼ全てのDBがCDPに接続されました。後はこの接続されたDB同士の掛け算で、今まで見えていなかった顧客の嗜好を可視化し、営業に示唆を与え、高度化していくステップになります。イメージとしては、データ利活用に向けた最終的な準備を行っている段階です。

伊藤:ここまで順調な進捗を果たせた要因としては、特定の部門が引っ張るわけでなくそれぞれの部門が主体的に行動できたことが大きいです。また、このプロジェクトを通じて、部門同士の関係性が大きく変わってきています。

以前は、営業がすべての中心に位置していて、その他の部門は営業を支える役割になっていたように感じます。そのため部門間の連携は限定的で、例えば営業として実施したい施策がマーケティング部に上がってきたとしても双方向の意見交換は少なく、自部門の作業を着実にこなすべく会話するという姿勢が強かったと感じます。共通の目的に向かって動くことができておらず、どちらかが「手伝ってあげる」ようなイメージでした。

それが今では、各部門がどのようなことをやっていて、それが自分たちの部門にどのように還元されるのかが理解されるようになりました。これはCDPを今後活用していく上でも非常に重要で、例えば営業ログを残すことのメリットを営業部が正しく理解することで、きちんとデータが入力・蓄積されるようになったなど、様々なメリットがありました。更には、自部署のリクエストを一方的に依頼するのではなく、部門を超えて「こういうことができないか?」という相談が自発的に生まれるようになっています。いまは、様々な部門が対等な立場でそれぞれの役割を担い、活発に意見が交換されていると思います。

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泉:全社プロジェクトであるがゆえ、取り組み一つをとっても他の部門と連携する機会は多くなります。そこではメンバーの同意が得られないと先に進めない。相手に理解してもらうために積極的に発信し、相手の意見も聞き入れる。そのような土壌ができ上がってきたのだと思います。

また、ワーキンググループ間だけでなく、経営・営業・マーケティングという事業領域の間でも同様のことが起こっていて、このプロジェクトをきっかけにそれぞれの立場を考えて活動するようになったことも大きいです。UISでは、マーケティングをマーケティング部門のみで完結させる時代は終わりはじめています。営業部門とマーケティング部門がお互いの領域を理解しつつも時には領域を飛び超えて同じ目標を目指していくことが必要なのだと感じています。

PMOは裏方。任せることでアイディアが生まれる

–さきほど「コア業務をワーキンググループに任せる」というポイントを挙げて頂きました。プロジェクトを推進する上で「任せる」ことは勇気がいることだと思います。その点で難しさを感じることはなかったでしょうか?

朝倉:BIツールの操作性を確認してもらうために「プロトタイプ」を組織全体にリリースしたことがあったのですが、リリースしたものが「完成版」として受け取られて期待感を損ねてしまったことがありました。各リーダーの理解・協力を得て鎮静化したのですが、ワーキンググループ間のミスコミュニケーションが招いた結果であり、プロジェクト自体への信頼を毀損しかねない出来事でした。

「任せる」ことと「把握しない」ことはまったく別物だと至極当たり前のことに気づかされた経験でした。コア業務を任せつつ、PMOとしては常に高い視座で状況を「把握」し、ワーキンググループ間のミスコミュニケーションを察知して修正する動きが大切だと学びました。

泉:そのケースではもともと私たちの勇み足の部分がありました。我々PMOとしては、展開するBIはプロトタイプであり、今後PDCAを回すなかで一緒に改善していきましょう!という気持ちでいたのですが、初回から営業満足度の高いBI展開がされると思われていました。共通理解とするにはコミュニケーションが不足していたことが後から分かったのです。

プロジェクトそしてワーキンググループメンバー、その先にいる全社員という情報展開において、PMO側の思惑を伝えることの難しさを痛感した出来事でした。ですが、プロジェクトにおいては敢えて任せることでメンバーの成長を促し会社全体の底上げを図ることも必要なので、ここの力加減は一生勉強です。

朝倉:各グループに任せることで、こちらでは思いつかないようなユニークなアイデアや実態に即した考えが出てきたこともありました。もちろん進行を把握することは必要ですが、PMOが裏方に徹することが結果として良いアウトプットに繋がるケースもあると思います。

営業を改革するため「営業以外」がプロジェクト推進を担う

–成長がなければ次の成果には繋がらないし、推進力を維持するためにも人材育成は必要な要素です。UISのプロジェクト推進力は”メンバーに権限移譲し責任を与えることで、成長を促す”ことに秘訣があるように感じました。ちなみに、PMOの皆さんは泉さんと同じデジタルマーケティングの部署から構成されています。ここに営業を加えるかどうかの検討はあったのでしょうか?

朝倉:特に今回のプロジェクトは営業の高度化を目的としていますが、デジタルマーケティングにより営業体制を上流から再設計することが必要でした。ですので、マーケティング部のメンバーでPMOを構成した今回の体制に違和感はありませんでした。

伊藤:同感です。もしPMOに営業が加わっていたら、プロジェクトの主導権が大きく営業に偏ってしまい、全部のワーキンググループが対等な立場で進めていくことができなかったかもしれません。PMOがマーケティング部だけで構成されている今の体制は、バランス的にも良かったように思います。

泉:振り返って思うことですが、営業がプロジェクト推進役を担ってしまうと既存の営業活動の延長線になってしまうかもしれませんよね。営業を改革したいのであれば、営業以外のメンバーがPMOを担い、営業にはコア業務に専念できるようPMOが部門間の調整を担うのがよいのかもしれません。

失敗を凌駕するほどに成功を成長させる

–ありがとうございます。最後に、これから全社DXプロジェクトを推進される企業様にメッセージをお願いします。

泉:プロジェクトは基本「チャレンジ」であり、百発百中はありえません。仮に8〜9割は失敗したとしても、成功した1〜2割を成長させ失敗の8〜9割を凌駕して全体最適化に貢献をするのがプロジェクトなのだと思います。自分たちのプロジェクトには失敗はつきものだけれど、その上で「一緒に高みを目指しましょう!」と最初から経営と握ってスタートすることが重要です。

朝倉:プロジェクトの推進を経験している中で、社内にもさまざまな利害関係者がいて、さまざまな考えや思惑を持っている人がいるんだな、と実感しています。これら別の考えを持った人たちとのコミュニケーションに時間を惜しまず、お互いの意見や主張の重なる部分を明らかにし、同じゴールへ導いていくことが協力体制の構築に繋がり、プロジェクトを上手に推進することができると思っています。

伊藤:1人だけ、あるいは1部門だけで会社は変えることは非常に難しいと思います。自分自身がまだ手探りの状態であっても、周りを巻き込みながら走り出すことで、大きな「流れ」が生まれ、お互いに協力し合いながら、みんなで会社を変えていけると思います。

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本記事の後編では、営業およびインサイドセールス部門から本プロジェクトに参加した担当者の方へインタビューをしています。是非あわせてお読みください。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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