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パーソルが挑む営業DX!顧客データの統合とグループ各社が活用できる仕組みづくり

CASE STUDY|パーソルホールディングス株式会社

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パーソルグループは、パーソルホールディングス株式会社(以下、パーソルホールディングス)を持ち株会社とする企業グループだ。国内で30社以上のグループ会社が所属し、人材紹介や人材派遣を中心に人と組織の成長を支えるあらゆる人材サービスを提供している。今回紹介するのは、多くのグループ会社やSBU(Strategic Business Unitの略、戦略的事業単位)を抱える企業グループならではのシナジー効果を高める取り組みだ。

グループ会社を統括するパーソルホールディングスでは、Treasure Data CDPを用いてグループ各社に散らばる法人顧客データを統合し、「営業のDX」実現を目指している。パーソルホールディングス株式会社の久野敦子氏と、データ統合をサポートしたパーソルプロセス&テクノロジー株式会社(以下、パーソルプロセス&テクノロジー)の鈴木啓生氏が、プロジェクトの詳細を語った。

久野 敦子

久野 敦子 氏

パーソルホールディングス株式会社

グループデジタル変革推進本部 データバリュー・デザイン部

セールス&マーケティング室 エキスパート

2004年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。 人材紹介や求人広告の営業を経て、2009年からは営業企画にて、法人顧客向け販促企画やインサイドセールス部隊の立ち上げ、新人研修などを担当。2012年に社内システム部門に異動後、様々な事業での業務システムのリプレイスを伴うBPRプロジェクトをPMとして推進。2020年より、パーソルホールディングス株式会社にてPMIや、統合法人データ基盤「DUKE」のPMを担当。

鈴木 啓生

鈴木 啓生 氏

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社

セールスマーケティング事業部 デジタルマーケティング統括部

データソリューション部データプラットフォーム第3グループ マネジャー

2014年株式会社インテリジェンスビジネスソリューションズ(現パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)に入社。デジタルマーケティング領域にてAdobe社やGoogle社のマーケティングツールを用いたコンサルティング業務に従事。2018年よりプロジェクトマネージャーとして、デジタルマーケティングにおける戦略策定支援やTreasure Dataを利用した基盤構築、運用支援を幅広い業界にて行っている。

<目次>

グループ内のシナジー効果を高めるため、データの流れを改革

パーソルグループはこれまで各SBUや事業会社が個別に顧客データを持ち、営業・マーケティング活動を行っていたが、グループ横断で顧客を支援することで、よりシナジー効果を高めたいという思いがあった。そのために、グループとして顧客データを管理・共有できるようにしたい、という構想が今回の取り組みの発端だ。

これまでもグループ会社を統括するパーソルホールディングスには一部のデータが共有されていたが、必要なデータのすべてではなかった。各社間でデータのやり取りは都度行われていたが、共有や連携を前提とした仕組みが整えばよりスムーズにデータの相互利用ができる。

そこで生まれたのが「統合顧客データ基盤」の構想だ。グループ各社に分散している顧客データを統合し、パーソルホールディングスが管理する。各社で必要なデータがあれば、データ基盤からすぐに取得できる。また、データを一括で管理することで、安全性もより高まる。

基盤を通してグループ間のデータの流れを整理することで、グループ間のデータの利活用をスムーズにしてシナジーを高める狙いだ。さらには、データを統合することで、営業の生産性向上へもつながる。

データ活用による営業・マーケティング活動の変革

データを一箇所にまとめ、営業の生産性を上げる

商談や取引のあった顧客のデータの入力から、外部から購入したデータとの名寄せ、入力規則に従ったデータクレンジングまで、データを保有する各社では膨大な工数と時間をかけてデータのメンテナンスが行われていた。

しかし、データ基盤上に名寄せ・クレンジング済みの統合データを用意すれば、メンテナンスの手間は一度で済む。各社は既に整えられたデータを取得して利用できるので、コストを大幅に削減できる。その分のコストを営業やマーケティング活動に活用できれば、生産性の向上につながるだろう。

パーソルグループの中期経営計画では、2020~2023年は「事業の磨き込みと経営基盤の整備による成長に向けた基礎作りを行う3か年」と位置づけられている。理想とする姿を実現するには「営業の生産性を今以上に上げる必要がある」と久野氏は捉えていた。

中期経営計画の中には重点戦略として「テクノロジーを武器にする」という項目も挙げられている。統合顧客データ基盤というテクノロジーを武器にして、グループ間シナジーと営業・マーケティングの強化を目指す。

グループ全体の顧客データを統合するDUKEプロジェクト

上記の構想を基に、統合顧客データ基盤「DUKE(デューク)」の構築プロジェクトがスタートした。DUKEの中核となるデータの収集・管理と各グループ会社へのデータ連携にはTreasure Data CDPが採用されている。

グループ各社が保有する顧客データは一旦DUKEに集められ、グループ全体で活用できる統合法人マスタとする。各社はDUKEからデータ連携でほしい情報を取り寄せ、各々SFAやMAに取り込んで営業やマーケティングに活用できる。利用後に更新があったデータはDUKEに戻してもらい、データを循環させて常に最新の状態を保つ仕組みだ。

統合顧客データ基盤「DUKE」イメージ図

データ統合時の名寄せが課題に

DUKEプロジェクトはパーソルホールディングスのプロジェクトチームが中心となって進め、パーソルプロセス&テクノロジーがCDP導入をはじめとするエンジニアリング面を伴走した。パーソルプロセス&テクノロジーの鈴木氏が「大変だったが、コミュニケーションを取ってうまく進められた」と振り返るのは、データ統合時の名寄せだ。

鈴木 啓生氏

DUKEには多数のグループ会社からデータが集まる。それらの多くは営業担当が手入力したものだ。表記のゆらぎもあれば入力ミスもあり、さらに外部から購入したデータもそこに加わる。

表記のゆらぎはデータクレンジングで対応可能だ。しかし入力ミスがあるデータを含んだ名寄せには課題が多い。正しいデータと間違ったデータ、もしくは間違ったデータ同士は住所や社名の単純な完全一致では突合できないからだ。

「あいまい突合」で名寄せの課題をクリア

突合できなければ正しいデータと間違ったデータが混在し、統合法人マスタとしては致命的な問題になる。間違いのあるデータを捨てるとデータの総量は大幅に減ってしまう。

突破口を開いたのはデータの扱いに長けたパーソルプロセス&テクノロジーメンバーからの、文字列の類似度を表す「レーベンシュタイン距離」を用いたあいまい突合の提案だった。Treasure Data CDPにはレーベンシュタイン距離を扱う関数が用意されている。

レーベンシュタイン距離 検証図

久野氏は「詳しくない私でもわかる形で、丁寧に説明してもらった。お互いが同じ情報レベルで合意して意思決定できた」と話す。パーソルプロセス&テクノロジーからはあいまい突合の閾値や組み合わせる技術等、さまざまなパターンの提案があり、検討して現在の形にたどり着いたという。

こうして負担の大きいデータの名寄せをDUKE側で担い、データを活用する各グループ会社の負担を大きく軽減する仕組みが構築された。

未知の領域に踏み込むならば、専門ツールの力を活用すべき

今後のデータ活用の広がりにも対応

DUKEプロジェクトは、はじめからCDPありきで始まったものではなかった。当初はデータベースとツールを組み合わせて自社で基盤を作ろうしていたという。その方が初期費用もランニングコストも低く抑えられる。

しかしそうしなかったのは、「本当にそれで十分なのだろうか」という懸念からだ。

「これからやろうとしていることは、私達にとって未知の領域。果たして今見えている世界から『これでよし』としたもので事足りるかどうか」(久野氏)

久野 敦子氏-1

新しい挑戦には得てして想定外の事態が付き物だ。今後やりたいこと、やるべきことが新たに見えてくる可能性もある。それを踏まえて再検討した結果、CDPサービスを利用するという結論に達した。

データ連携の容易さと拡張性

Treasure Data CDPには外部連携のためのコネクタが150以上用意されている。DUKEは各グループ会社で使うツールと連携してデータを提供し、さらに使って更新されたデータを戻してもらう前提のシステムなので、データ連携の容易さと拡張性は非常に重要なポイントだ。

コネクタがあればデータ連携先が増えた際にAPIやバッチを新たに開発する必要がない。「コネクタに情報を入れて個別の設定をするだけなので、ユーザーフレンドリーで使いやすい」(鈴木氏)

鈴木氏はデータ連携以外のメリットとして、マーケ施策のためのセグメント分けやスコアリング、スケジュール管理等、施策実行にあたっての機能が豊富であることも挙げている。

CDPはBtoBにも活用できるプラットフォーム

久野氏は当初、CDPはtoC向けのサービスという印象を持っていたという。たしかにエンドユーザーとの関係構築にCDPを活用しているBtoC企業は多い。しかしCDPそのものはBtoC、BtoBを問わず活用できるプラットフォームだ。

中でもTreasure Data CDPを選んだのは、「今後やりたいことをスムーズ且つスピーディーに実現できる可能性が一番ある」(久野氏)と感じたからだ。鈴木氏も「今後DUKEを拡張していくことも考えると、多くの機能をパッケージとして持っているTreasure Data CDPは確かに使いやすい」と、今後の展開に言及した。

稼働から半年強、各社から喜びの声

DUKEが稼働し始めて半年強、現在は各グループ会社に声をかけて導入先を増やしている段階だ。話を持ち掛けると「そういう仕組みを待っていました」と声があがる。各社の営業・マーケティング担当者もデータの利活用に同様の課題感を持っていた。

具体的な成果が数字に表れるのはまだ少し先になるが、「グループ会社に対してホールディングスとして解決策を提示し、喜んでもらえたのがまずひとつの成果」と久野氏は安堵の顔を見せる。

データを用意するためのさまざまな負担をDUKEが引き受けることで各社の負担を軽減するのはDUKEの目的であり、久野氏の願いでもあった。「本来やらなくていい作業に時間を取られなくなったら、もっとその人にしかできない仕事に時間や頭脳を使うことができる。営業の生産性が上がるのはもちろん、仕事がよりクリエイティブになり面白くなっていく。それをDUKEで後押ししたい」とし、より多くのグループ会社への導入を進めている。

鈴木氏と会話する久野氏

データ統合プロジェクトから見えた、3つの大事なこと

久野氏と鈴木氏がDUKEプロジェクトの立ち上げを振り返る中で、今後同様のグループ間統合データ基盤を構築しようとする際に重要なポイントとして挙げたのは以下の3点だ。

  • 覚悟と危機感を持つ
  • 小さく始めて実績を積む
  • メリットを説明して理解を得る

1.覚悟と危機感を持つ

DUKEプロジェクトは、旧インテリジェンス時代から数えて実に15年越しの悲願だった。ようやくデータ統合が実現できたのには3つの要因があると久野氏は考える。

一つ目は「国税庁による法人番号の運用が始まったこと」、二つ目は「人と資金と時間を用意できるだけの体力が付き、投資する覚悟を持てたこと」、三つ目が「このまま変わることができなければ時代遅れになってしまうという危機感」だ。

法人番号は外的要因として既にあるものなので、残りの2つを社内の共通認識として持てるかどうかが実現の鍵となる。

2.小さく始めて実績を積む

企業規模が大きければ大きいほど、社内で何かを変える際には大きな労力と時間が必要になるものだ。

統合データ基盤の導入を打診する際は、まず規模の小さいグループ会社に声をかけてファーストペンギンになってもらい、実績を作ってから広げていく。実際にDUKEプロジェクトでも、1、2社導入実績ができた後は引き合いが目に見えて多くなったという。

3.メリットを説明して理解を得る

データを統合するには、各グループ会社からデータを提供してもらう必要がある。スムーズに協力を得るには、相手方を巻き込む力も重要になる。

「統合データ基盤があればこんなことが実現できる」「今まで大変だったここが楽になる」等、相手方にどんなメリットがあるかをしっかり説明して理解してもらった上で依頼するべきだ。「提供するデータを用意する手間ばかりかかって面倒だ」と思われてしまっては上手くいかない。

DUKEプロジェクトでは久野氏がその役割を担った。「メリットをしっかり話してくれたので、データのやり取りに関するコミュニケーションが取りやすかった」(鈴木氏)という。

基盤ができることが、データ活用のスタート

DUKEは稼働を始めたが、プロジェクトはここで終わりではない。データを循環させ、さらに活用することで営業の生産性を上げるのが目的であり、むしろここからが始まりと言ってもよい。「登山に例えれば、登山口に着いて荷物を確認しているところ」(久野氏)だ。

久野氏らパーソルホールディングスのプロジェクトメンバーはデータの可視化分析や広告配信の効果測定にもCDPを活用する構想を練っている他、AIや機械学習も組み合わせられないかを模索中だという。パーソルプロセス&テクノロジーからも新たなデータ活用施策の提案が多数あがっている。

久野氏は「まだやるべきことはたくさんあるし、大きな可能性を感じています。未来しかありません」と胸を張った。

久野 敦子氏-2

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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