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プレミアムなブランドを確立するために|ボルボ・カー・ジャパン株式会社

CASE STUDY|
ボルボ・カー・ジャパン株式会社
マーケティング部 シニア・マーケティング・ディレクター 関口 憲義氏
株式会社電通デジタル
エクスペリエンス部門 オウンドメディア事業部 オウンドメディアプランニンググループ シニアコンサルタント 下川 幸亮氏

4年連続の販売台数アップを達成しているボルボ・カー・ジャパン株式会社。その背景にはデジタルの活用がある。同社の関口憲義氏と、同社のデジタルマーケティングを支援する株式会社電通デジタルの下川幸亮氏を取材した。

1927年に創立したボルボ・カーズは、「ボルボ」ブランドでプレミアムカーを製造・販売するスウェーデンの企業だ。2018年のグローバルでの販売台数は約60万台。この数字は世界の自動車メーカーの中では決して大きな規模ではないが、同社は5年連続で過去最高の販売台数を記録している。
インポーターとして「ボルボ」を日本で販売するのは、日本法人のボルボ・カー・ジャパン株式会社だ。国内の販売数も好調で、4年連続の前年超えを達成し、2018年の販売数は二十数年振りに2万の大台を突破。さらに、輸入車としては初めて2018年、2019年と連続で「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。

2014年にボルボ・カー・ジャパンに参画し、ディレクターとしてマーケティングを統括してきた関口憲義氏は、この躍進を「プレミアムブランドとして高級感の醸成に注力してきた結果が出ている」と振り返る。

ソファーに座り回答をする、ボルボ・カー・ジャパン 関口 憲義(せきぐち のりよし)氏

この10年ほどの日本における乗用車のマーケットは、停滞していると言っていいでしょう。ただ、輸入車のマーケットは、年間数%ほどですが成長を続けているのです。私たちは『安全・安心』という哲学を掲げています。この哲学は10年前から全く変化していません。ところが、10年ほど前の『ボルボ』には、『北欧好きの人が買うニッチな車』というイメージがあったのです。ですから、この哲学を強化しつつも、プレミアムカーのメインストリームに入ることが、この5年間の私たちの課題でした」(関口氏)

そこで、関口氏は、あらゆるタッチポイントで顧客にプレミアム感を感じてもらい、ロイヤルティを高める施策に取り組むと決断。まず、ブランディングにおいて、最も注力したのはテレビCMだった。

「プレミアムカーにもレベル差がありますよね。例えば、1台数千万円するようなブランドは、ごく限られたお客様にだけ価値を理解してもらえればいいわけです。ところが、私たちのような数百万円台前半からラインナップがあるようなブランドは、オーナー以外の多くの方にも『あの車はすてきだね』と感じてもらうことが重要なのです。つまり、実際に購買するターゲットだけではなく、その家族や友人までブランド価値を届けなければいけません。そこで、到達するターゲットの幅が広い、テレビCMの効率がいいと考えていたのです」(関口氏)

CRMやMAに感じた限界

ブランディングにおいてマス広告を重要視した関口氏だが、デジタルを軽視しているわけではない。「集客と送客」というミッションにおいては、2014年に参画した当初から本格的なデジタルの活用に取り組んでいる。関口氏はその背景を次のように説明する。

「ボルボは小さな会社です。ですから、持っているアセットを最大限に利用しなければ、大きな企業には勝てません。私が着任した当初、注目すべき点がありました。まず、お客様の質が非常に高いという点です。性・年齢などの属性に加え、可処分所得などの点で見ても、競合と全く引けをとらない良質なお客様だったのです。
もうひとつは、その顧客データベースを私たちが利用できる状況にあったという点です。自動車メーカーのビジネスは、一見するとBtoCの事業だと想像される方もいるかもしれません。しかし、お客様に自動車を販売するのはディーラー様です。私たちのようなメーカーやインポーターは、ディーラー様に自動車を卸しているので、実際にはBtoBtoCの構造になっています。ディーラー様同士は競合であるケースも珍しくありません。それゆえに、これまで顧客データをメーカーと共有することはあまり一般的ではありませんでした。その結果、自動車メーカーは顧客のデータを利用できないことが多いのです。
ところが、私たちは、顧客データベースをディーラー様と共有していました。ディーラー様との良好な関係があるからこそできていたことですが、この業界では非常にレアなケースであると思います」(関口氏)

この2つの特徴を最大限に活用すべく、私はデジタルで様々なデータを蓄積し、この良質な顧客データに紐付けたいと考えました。お客様の行動を分析し、マーケティングの打ち手を最適化したかったのです(関口氏)

そして、ボルボ・カー・ジャパンでは、実際に2014年からデジタル上の様々なデータを収集し始め、2016年頃にはCRMやMAツールも導入するなど積極的なデジタル戦略を展開した。ただ、関口氏はある課題を感じていた。様々なソースから集まるデータを、きちんと紐付けて整理できていなかったのだ。
2014年からデジタル領域でボルボ・カー・ジャパンを支援する、株式会社電通デジタルの下川幸亮氏は当時を次のように振り返る。

ソファーに座り回答をする、電通デジタル 下川 幸亮(しもかわ こうすけ)氏

「ボルボ様は、パーチェスファネルと呼ばれる購買にいたるプロセスにおいて、各プロセスでの施策は、かなりデジタライズが進んでいました。ただ、例えばCRMのメールのマーケティングには、CRM内のデータしか活用できていませんでしたし、リターゲティング広告ではウェブ上の行動ログしか利用できていなかったのです。電通デジタルのチームも含めて、そこに少し限界を感じていました。ウェブのデータとオフラインのデータを一元管理し掛け合わせることで、これまでの施策をさらに進化することができないかと考えていました」(下川氏)

「正解データ」を即座に施策へ反映する

この状況を打破すべく、ボルボ・カー・ジャパンが導入したのが「Arm Treasure Data CDP」だ。あるイベントでその存在を知った関口氏が電通デジタルに相談すると、ちょうど「Arm Treasure Data CDP」を提案しようとしていたところだったという。導入の決め手となったのは、高い拡張性だ。様々なツールと柔軟に接続し、フレキシブルに活用できる点を関口氏は評価した。
現在「Arm Treasure Data CDP」に蓄積しているのは、ボルボ・カー・ジャパンが展開するデジタル施策のデータだけではない。各ディーラーが独自に実施するデジタル施策や店舗での施策など、あらゆるデータをユニークIDで管理することが可能になった。
「Arm Treasure Data CDP」で顧客データを一元管理できるようになり、ボルボ・カー・ジャパンの業務には変化も。

施策がデータに裏打ちされますから、ディスカッションの深度が以前よりも確実に増しましたね(関口氏)

現在では施策の様々な場面にこの顧客データが活用されている。その一例がCRMでの活用だ。顧客データが一元管理されることで、「実際にボルボを購買した顧客が、購買の前にウェブ上でどのような行動をしていたのか、どのような広告と接触していたのか」などを把握することが可能になった。これはいわば「正解データ」だ。ウェブの行動履歴や店舗への来店記録を含めた「正解データ」を分析し、施策を繰り返すことで、マーケティングのロジックを最適化しているのだ。一例を挙げれば、「デジタルカタログをDLし、ウェブ上の特定コンテンツを訪問した特定の年齢層の男性」をターゲットに、コンテンツを最適化したメールでコミュニケーションするといったような内容だ。

統合された顧客データが低コストでのリード獲得につながる

また、以前は仮説を立てるしかなかった「ボルボ」ブランド内での車種の比較検討も、カタログのDLなどから可視化することができるようになるといった成果も達成している。
顧客データを活用しているのは、購入直前の見込み客に対してだけではない。例えば、リード獲得を目的としたメディアキャンペーンでは、統合されたデータがあることで効率的なメディアを即座に知ることができた。その結果、ボルボのグローバル全社でも、ボルボ・カー・ジャパンは、トップクラスに低いコストでリードを獲得することに成功しているのだという。
また、ディーラーからの情報も集まる顧客データには、ウェブ上の行動履歴だけではなく、顧客のパーソナルな情報も蓄積される。例えば、小さな子どもがいるオーナーがウェブサイトを訪問した際は、チャイルドセーフティのページへ誘導。コンテンツの最適化によるロイヤルティの向上も実践している。
今後、ボルボ・カー・ジャパンが目指すのは、「マス広告からデジタル」「デジタルから店頭」というカスタマージャーニーにおいて断裂していたポイントをよりシームレスにつなげていくことだ。
「施策にすぐに反映できる精緻なデータ分析ができているのは、パートナーである電通デジタルさんの力も大きいと思いますね。データ基盤の構築や実装だけではなく、データの収集と分析、そして施策の企画提案と運用までをワンストップで支えてもらっています。
現在、『デジタルから店頭』への送客は、徐々に実績を作ることができていると思います。今後、特に注力したいのはテレビCMなどマス広告に接触した方を、いかにデジタルの世界へ送り込むかという点です。電通デジタルさんの知見をお借りしながら、二人三脚でさらなるデジタルトランスフォーメーションを進めていきたいですね」(関口氏)

ソファーに座る、ボルボ・カー・ジャパン 関口 憲義氏(左)と電通デジタル 下川 幸亮氏(右)

関口 憲義氏(左)
ボルボ・カー・ジャパン株式会社 マーケティング部シニア・マーケティング・ディレクター。電通にて大手自動車会社などのマーケティングやブランディングを担当。2001年に海外研修員としてアメリカへ渡った後、2014年にボルボ・カー・ジャパンに参画。
下川 幸亮氏(右)
株式会社電通デジタル エクスペリエンス部門オウンドメディア事業部オウンドメディアプランニンググループ シニアコンサルタント。2012年、株式会社電通イーマーケティングワン(現、電通デジタル)に入社し、オウンドメディアの運営や、ログの分析を中心に担当。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
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