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ストライプインターナショナルにみるDXの始め方と、続け方 〜在庫フォロー最適化で2,340万円分のコスト削減〜

CASE STUDY|株式会社ストライプインターナショナル

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デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる中、先進的な取り組みをする企業は、どのようにデータ活用を進めているのか。「earth music&ecology」をはじめとする人気ファッションブランドやコスメ、フード、 ホテルなど様々な事業を展開する、株式会社ストライプインターナショナルのデータ活用事例とは?

社内に点在していた顧客データ

株式会社ストライプインターナショナル(以下、ストライプ社)と顧客とのタッチポイントは、リアル店舗、複合施設、ECサイト、サービスコマース、スマホアプリなど多岐に渡る。マーケティング活動のための膨大なデータを蓄積できている一方で、以前はそうしたデータが社内に点在し、活用は思うように進んでいなかった。

点在するデータを一元管理・分析するためのデータプラットフォームとして、2018年4月に運用を開始したのが「Treasure Data CDP」だ。

主力ブランド「earth music&ecology」「Green Parks」をはじめとするストライプグループ全ブランドの全国約1500店舗、ECサイト、スマートフォンアプリ、そして外部データベースなどから、売上、在庫、アクセスログ、行動履歴、競合の情報、SNSのデータなどを蓄積。

ダッシュボードによるデータのモニタリング、テーマを決めたスポット分析、顧客へのパーソナライズされたマーケティングだけでなく、在庫の最適化などに活用している。導入から今まで、ストライプ社ではどのようなデータ活用がされてきたのだろうか。

データ活用の第一歩は「点在するデータの統合」

case-study-stripe-dx-mia-1_ データ活用のステップ

まず取り組んだのが、データの統合だ。自社の1st Partyデータ、外部データ、セグメント情報をリアルタイムにアクセスログとして蓄積し、これにECサイトのデータも統合した。システムをまたいでのデータ統合を行う場合、通常では実装や暗号化方式を決めるといったことが必要だが、Treasure Data CDPではルール決めだけでセキュアに対応できる。
次に、このデータの活用事例を紹介する。

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データ活用事例1:1st Partyデータを使った広告/販促

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1st Partyデータが効果を発揮するのは、デジタル上で広告を出稿する際の購買者の除外設定だ。

新規顧客の獲得にフォーカスを当てた広告施策を展開した場合、すでに購買経験のある顧客にまで広告を展開するのは効率的とは言えない。そこで、デジタル広告を展開する際に1st PartyデータとECプラットフォームのデータを掛け合わせ、過去に購入した顧客を広告の対象から除外している。

事業会社の場合、このような除外設定は、広告代理店などに任せてしまうことが多い。しかし、ストライプ社では「どの顧客に対して何を目的に広告を出すのかという理解の上で、自分たちの力で対象者を絞り込み、抽出するべき」と考え、配信リストの作成までは自社で行っているという。また、ダイレクトメールを配信する場合も、購入した顧客に過度に配信すると顧客満足度の低下につながるため、自分たちでバランスを考えてリストを作っている。

データ活用事例2:外部データを使った広告/販促

外部データが活かされるシーンは、自社サイトに来訪したことのない新規顧客の理解とサイトへの集客だ。具体的には、外部サイトに掲載されるアドネットワークなどの広告で、「外部データを軸にした、サイト来訪歴のない新規顧客データ」にアプローチしている。

earth music & ecologyサイトへの集客、見込み顧客に対するアテンションを目的にしたある施策では、STRIPE CLUB(ストライプクラブ)(ストライプ社の総合通販モール)に来た顧客で、かつearth music & ecologyに興味がある人を教師データに行った施策では、バナーに対するCTRは約8%、集客人数約22万人という結果を生み出した。

活用事例1と2の施策に共通しているのは、ターゲット顧客のクイックな抽出に統合されたデータを活用しているという点だ。統合された顧客データを様々な場合に応じて絞り込み、顧客とのコミュニケーションや広告施策に活かすことで施策の無駄な部分を軽減し、効果を最大化することが期待できる。

データ活用事例3: 在庫フォローの最適化

データはデジタル施策の最適化にとどまらず、リアルなオペレーションの最適化にも活用されている。そのひとつが、店舗の在庫フォローの最適化だ。

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ストライプ社における在庫の流れを、新商品発売時を例に解説すると次のようになる。

(初回配置)
商品は在庫をストックする物流倉庫から予算に応じて各店舗に分配される。

(在庫フォロー)
販売状況に応じて在庫切れを起こした店舗には、物流倉庫からさらに在庫が補充される。

(店間移動)
物流倉庫が在庫欠品の状態になると、今度は店舗の間で在庫を融通する 。
こうして、製造した在庫を売り切ることを目指す。

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これらを全自動で行うのではなく、初期の段階では半自動と現場の経験を組み合わせたフローにすることで、業務に組み込みやすくした。

在庫フォローの最適化フロー

  1. 売上データを自動で取り込む
  2. それ以外の在庫データや前日出庫依頼は事業部にダウンロードしてもらい、サーバーにアップ
  3. Treasure Data CDPがデータを取り込み、集計とフォローすべき在庫の予測を行う
  4. その結果を事業部の担当者がチェック
  5. 最終的には手動で出荷依頼のデータをシステムにアップ

     

自動化と現場の経験を組み合わせ、2018年4月の運用開始後は、システム運用前と比べて高い予算達成率となった。在庫フォロー数が増加したことで機会ロスが減少し、売上が向上。加えて、在庫フォローの効率化が成功したことで、新たに店舗間移動の管理も在庫フォローの仕組みを応用してシステム化し、これまで人が対応していた工数年間2,340万円分のコスト削減効果を実現した。

需要予測と在庫最適化によって機会損失を防止して売上の最大化、利益の向上に貢献できた。加えて、スタッフの業務が効率化したことによって接客に時間が割けるようになり、間接的に顧客体験の向上につながった。ストアのスタッフから喜びの声も寄せられました。

ー株式会社ストライプインターナショナル 
デジタルトランスフォーメーション本部

データプラットフォーム部 部長 榎本一樹氏

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事業部を巻き込んでDXを推進するために

DXの本来の目的は業務側をサポートすることであり、DX化はあくまでも手段のひとつだとストライプ社は考えている。そのため、社内でDXを推進するメンバーは「対象業務を行っている事業部と目線を合わせて、同じ方向を向いて共に歩めるようにコミュニケーションを取り続けること」が欠かせないという。

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ストライプ社では、事業部を巻き込んでDXを推進するためのポイントとして次の3つあげる。

小さく始めて細かく改善し、成長サイクルを高速でまわす
DXは成果が見えにくく、やってみるまでは実態がわからないものが多い。まずはとにかくモノ作り、見せる。モノを見ると人は意見を「持ってしまう」のでプロジェクトが動く。

人を巻き込むサイクルをつくる
初回ではシステムだけで完結させようと思わず、システム&人間の力で業務に組み込む。コミュニケーションを促進する工夫をし、サイクルを改善していく。

導入成果は売上だけで説明しない
いきなり大きな成果を狙わず、業務効率化など、他に定量化できるものを目的において説明するのも方法のひとつ。場合により定性的なものの方がインパクトがあることも。

業務側の課題意識が高いものから着手すると話が進めやすく、だんだんカジュアルに聞ける関係ができ、本題の業務理解へと進むという。

事業部にデータ収集の相談をする

データ収集・蓄積される

システム開発する

システムのチューニングをする

成果を出す

事業部から新たなニーズが生まれる

新たな課題を聞く

という「データ基盤の成長サイクル」を回していくことで、組織としてのDXを推進している。

最先端の活用事例を実装したいところですが、現場には現実に即した課題に対応してほしいという期待があります。加えて、テクノロジーの用語とアパレルの用語に対して、それぞれ知識のズレがあります。また十分な信頼関係が築けていない状態で、簡単にデータを渡してもらえる状態ではありません。事業部へのヒアリングやITシステム部門への相談で、様々な課題が見えてきました。

ー株式会社ストライプインターナショナル 
デジタルトランスフォーメーション部

データプラットフォーム部 部長 榎本一樹氏

 

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これからの取り組み:CDPとAIを活用した売上予測

2019年10月からは、機械学習自動化ツール「DataRobot」を活用して、1年間52週分の売上予測モデルを構築するプロジェクトを進めている。

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Treasure Data CDPでデータの蓄積・加工を行い、DataRobotでモデル作成・検証・予測、というサイクルを自動化した。また、予測データはTableauで可視化するように連携し、業務の予測変数に加え、予実との解離を日々追うことができるようになった。
Treasure Data CDPは、蓄積されたデータをすぐに抽出・加工でき、DataRobotは数時間程度でモデル作成から検証まで終わるため、一度モデルを作ってから社内フィードバックを受けて改善していくサイクルを素早く回すことができる。事業部門が従来行っていたデータ取得・加工を自動化したことで、業務工数削減が見えてきたという。

結果的には運用までを見据えて開発ができましたが、こういう風に作ろうという絵が最初からあったわけではありません。課題を解決するための仕組みを試行錯誤し、今のスキームにたどり着きました。

ー株式会社ストライプインターナショナル
デジタルトランスフォーメーション部 スペシャリスト 鈴木 康之 氏

様々な仕組みとスムーズに連携ができ、素早く試行錯誤できるTreasure Data CDPの強みを生かし、予測精度をさらに高めるための挑戦は今も続いている。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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