記事

強力な営業力に潜んでいた課題をデータ基盤の構築によって解消|積水ハウス株式会社

CASE STUDY|積水ハウス株式会社 IT業務部 上田 和巳氏

販売価格が数千万円、場合によっては億を超えることもある新築住宅の販売。その原動力となるのが、購入検討する顧客をサポートする営業担当者の人間力です。住宅メーカー大手の積水ハウスも、新築戸建ビジネスを支えるのは営業担当者が顧客との間に生み出す信頼・信用だといいます。

ここから先は、PLAZMA会員のみ、お読みいただけます。

今すぐ会員登録(無料)・ログイン

販売価格が数千万円、場合によっては億を超えることもある新築住宅の販売。その原動力となるのが、購入検討する顧客をサポートする営業担当者の人間力です。住宅メーカー大手の積水ハウスも、新築戸建ビジネスを支えるのは営業担当者が顧客との間に生み出す信頼・信用だといいます。 しかし、今後のビジネス拡大を考えたとき、その営業スタイルにはある課題が潜んでいました。具体的にどのような課題があり、その課題をデータ基盤によってどのように解消しようとしているでしょうか。「積水ハウスの目指す次世代インフラ DMPによる情報分析基盤の構築」と題した講演で、積水ハウス株式会社 IT業務部 上田和巳氏が紹介しました。

“人間力”が重要な住宅販売と、そこから漏れる見込み顧客

上田氏は、戸建住宅という商品の特徴について、単価が高く購入までの検討時間が長い点 購入頻度が低い点、地域性や個人の嗜好による差が大きい点などを挙げた上で、「単純なターゲティング戦略が成り立ちにくい。資金の用意があり、今まさに住宅購入を検討しているという人が見つかりにくい」と説明。 その上で、これまでの営業スタイルを「基本的には対面営業で人間同士の信頼関係が重要。住宅展示場やイベントなどで“待つ”のが集客のスタイルで、紹介による見込み顧客の獲得も多い。ネットで売るという検討をしたことや、ネットでの住宅販売の企画は20年ほど前からずっとあるが、簡単にはいかない。数千万円の購入なので、信頼関係のない相手からは買えないというのが消費者心理だ」と説明した。

高い買い物は信頼できる営業担当者から買いたい。その消費者心理に疑いの余地はない。しかし、販売する側から見ると、そこに機会損失が生まれているのだという。つまり、「住宅購入には興味はあるが、積水ハウスのことはあまりよく知らない」「新築住宅には興味があるが、住宅展示場やイベントには行かない」「商品を紹介してもらった営業担当者と相性が合わなかった」という見込み顧客は、営業担当者の手厚いフォローから生まれる積水ハウスにとっての“カスタマージャーニー”から漏れてしまうのだ。 「これから先の受注拡大のためには、既存スタイルの課題解決が避けられない」と上田氏は語る。具体的には、なぜ受注したか/受注しなかったのかという営業ノウハウが個人の暗黙知になり属人化してしまう点、購入意欲の高い見込み顧客にしか対応できない点、オウンドメディアやメールマガジンなどデジタル接点を設けてもデータの分析・活用ができていない点などが課題として挙げられる。こうした課題解決のために、データ基盤の導入によって不十分だった分析・顧客育成のプラットフォームを構築しようと考えたのだ。

「今までの積水ハウスは人間力で売り上げを伸ばしてきたが、一方で情報を蓄積して分析・活用するという点が十分にできていなかったのが正直なところだ」(上田氏)。

データの統合・分析によって潜在している見込み顧客にアプローチ

上田氏によると、同社は2018年8月に「デジタルマーケティング室」を立ち上げ、10月にArm Treasure Data eCDPを導入。オウンドメディアの会員登録者50万名、資料請求者の属性情報、積水ハウスの基幹業務システム「CANVAS」に保管されている見込み顧客データ1千万件を統合した。まず目標にしたのは、「接点のある顧客の誘致」「見込み顧客の掘り起こし」による展示場やイベントへの来場促進だ。 具体的には、Arm Treasure Data eCDPにWEBアクセスデータ、会員データ、CRMデータなどの社内データなどに加え、パブリックDMPが保有するWEB行動履歴や潜在顧客属性なども統合。顧客ひとりひとりのプロファイリングを行い、見込み顧客と成約顧客のプロファイル分析を掛け合わせることで、購入可能性の高いと思われる見込み顧客に効果的なアクションを起こそうと考えた。

「過去の営業活動から顧客に関するデータはたくさんあるが、活用できる状態にはなっていなかった。様々なデータと統合することで顧客ひとりひとりを分析できる環境を構築し、“脈がある”見込み顧客を発見できる環境を目指した」(上田氏)。

上田氏は、Arm Treasure Data eCDPについて「本来ならば半日程度かかるCRMデータ990万件分の名寄せ作業が数十秒十数秒で終了した」とデータベース処理能力の高さを評価。今後は住宅オーナーのデータやIoT住宅が生み出すデータも統合していくほか、データ活用の手段としてマーケティングオートメーションやBIツールの導入も今後進めていくとしている。 一方、苦労した点としては社内にDMPに詳しい人間がいなかった点や、外資系企業であるトレジャーデータとの契約で初めて経験するビジネススキームに対応する必要があった点などを挙げているが、「仕組みとしてはそこまで複雑ではなく、トレジャーデータのサポートやハンズオンセミナーもあり円滑に導入できた。(DMPの専門家でなくとも)SQLがある程度書けるエンジニアならばトレジャーデータのサポートもあり何とかなる」と語った。

マーケティングツールから全社的なプラットフォームへ

上田氏が所属するIT業務部は、積水ハウスの情報システム部門、CADシステム部門、生産システム部門を統合した部署で、全社横断的なITシステム基盤や情報基盤の構築・運用から、最近ではAI、ブロックチェーン、デジタルマーケティング、働き方改革などを幅広く担当。社内のあらゆる部門と連携して業務を推進している。Arm Treasure Data eCDPの導入によるデータ基盤の構築も、デジタルマーケティングとしての活用は第一歩であり、将来的には全社的なデータ基盤へと進化を遂げていくという。 具体的には、現在は積水ハウスと接点のある戸建の見込み顧客をターゲットとしてデータの分析・活用を行っているが、今後は賃貸やリフォームといったビジネスにも顧客データ分析を導入。また住宅を購入したオーナーの詳細な情報をリフォームビジネスに活用したり、2020年に導入を予定しているIoT住宅が生み出す“場所やモノ”のデータも活用したい考えだ。

「分析のパフォーマンスは圧倒的。今回の導入でもそれを実感できた。Arm Treasure Data eCDPをより汎用的なビッグデータの分析基盤として活用していきたい。単なるデジタルマーケティングのツールではなく、顧客分析の核となるインフラにしていきたい」(上田氏)。

そして、こうした構想の先にあるものは、積水ハウスが掲げる中期経営ビジョン「Beyond 2020」。技術力、顧客基盤、施工力をコアコンピテンスにしながら、AI、IoT、ブロックチェイン、ロボティクスといった新技術とオープンイノベーションによって、新たな事業展開、サービス開発をはかることを目指しているという。 上田氏は、「住宅だけでなく、住宅オーナーのライフスタイル変化を動的に情報分析して、外部パートナーとも連携しながら付加価値の高いサービスを提供する企業へと会社のスタンスが大きく変わる。“個人単位のより深化した情報管理・分析”をキーワードに、新たなビジネススタンスに対応したITプラットフォームの構築を推進していきたい」と今後に向けた抱負を語った。

Tags
続きを読む

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
Back to top button
Close
Close