事例

老舗企業パイオニアのData Lakeが生み出す、モビリティサービスの未来

CASE STUDY|パイオニア株式会社
Mobility Service Company Chief Digital Officer
石戸 亮 氏

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一般生活者のカーライフだけでなく、タクシーなどの運輸業、トラックなどの輸送業にとって欠かせないアイテムとなっている「カーナビゲーションシステム」。その国内最大手企業のひとつが、「カロッツェリア」ブランドを展開する「パイオニア」だ。スピーカーを祖業として80年、現在はカーナビ、カーオーディオ、ドライブレコーダーといったカーエレクトロニクス事業を柱とし、この数年はデータソリューションビジネスが大きく成長しているという。同社が長らく培ってきたカーナビのノウハウとデータが組み合わさることにより、どのようなイノベーションが生まれているのか。

パイオニア株式会社 Mobility Service CompanyのChief Digital Officerである石戸亮氏が、「パイオニアのモビリティサービス変革 ~創業から80年進化し続ける老舗企業~」と題した講演で紹介した。

事業会社とテクノロジー企業の橋渡しがしたい

今回講演した石戸氏は、サイバーエージェントでネット広告ビジネスや子会社の経営に携わり、その後Googleにて全製品の統合マーケティングを、Salesforceによって買収されたマーケティング・インテリジェンス企業Datoramaでセールスやマーケティングを歴任。デジタルマーケティング、データマーケティング一筋の経験を活かして、2020年4月にパイオニアのデジタル統括責任者に就任した。

なぜ、石戸氏は数々の企業でデジタルマーケティングを歴任したのち、歴史ある事業会社であるパイオニアを選んだのか。理由のひとつに、石戸氏はテクノロジー業界にある課題について挙げた。

石戸氏によると、近年市場で競争を繰り広げるマーケティングテクノロジーは増え続け、その数は8000を超えたといわれる。市場では様々な企業が買収・統合を繰り返しながら成長を続け、特にデータ領域のテクノロジーは増加が顕著だという。これを石戸氏は「テクノロジーはやや飽和状態に陥っている」と指摘する。

そして、市場の成長とともに企業の規模も成長。Google、Salesforceもそれぞれ1000人以上採用すると公式に発表されており、また日本のスタートアップも次々に資金調達を成功させ、人材と資金がテクノロジー業界に集まりつつあるのだ。こうした状況について、石戸氏は次のように指摘する。

「マーケティングテクノロジーはやや飽和状態になっているなかで、テクノロジーの変化・進化が早すぎて、ツールやデータの分断が生まれているほか、本来の目的達成の前に、ツールを使うことが目的化している。そもそもユーザー企業(=事業会社)がツールを使いこなせないという状況も散見するようになってきた。やや人材の偏りも生まれている」(石戸氏)。

テクノロジー企業は、本来は事業会社の営業、IT、マーケティングなどの様々な業務や事業そのものを支援するツールを生み出している。しかし、ツールの多様化、高度化は、それを使う事業会社にとって様々な弊害を生み出しているとも言える。こうしたなか、「事業会社とテクノロジー企業の橋渡しができる仕事ができないか」という考えで、石戸氏はパイオニアを新たなフィールドに選んだのだそうだ。

石戸氏がパイオニアに注目したもうひとつの理由は、モビリティ市場の急速な変化だ。電気自動車は加速度的に普及し、自動運転技術も進化。そして自動車産業のメッカである欧州では、多くのスタートアップがモビリティ市場に参入し、無数のモビリティサービスが誕生している。懸念されるのは、テクノロジー業界と同じように様々なサービスが乱立することによる市場のサイロ化だ。

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一般生活者のカーライフだけでなく、タクシーなどの運輸業、トラックなどの輸送業にとって欠かせないアイテムとなっている「カーナビゲーションシステム」。その国内最大手企業のひとつが、「カロッツェリア」ブランドを展開する「パイオニア」だ。スピーカーを祖業として80年、現在はカーナビ、カーオーディオ、ドライブレコーダーといったカーエレクトロニクス事業を柱とし、この数年はデータソリューションビジネスが大きく成長しているという。同社が長らく培ってきたカーナビのノウハウとデータが組み合わさることにより、どのようなイノベーションが生まれているのか。

パイオニア株式会社 Mobility Service CompanyのChief Digital Officerである石戸亮氏が、「パイオニアのモビリティサービス変革 ~創業から80年進化し続ける老舗企業~」と題した講演で紹介した。

事業会社とテクノロジー企業の橋渡しがしたい

今回講演した石戸氏は、サイバーエージェントでネット広告ビジネスや子会社の経営に携わり、その後Googleにて全製品の統合マーケティングを、Salesforceによって買収されたマーケティング・インテリジェンス企業Datoramaでセールスやマーケティングを歴任。デジタルマーケティング、データマーケティング一筋の経験を活かして、2020年4月にパイオニアのデジタル統括責任者に就任した。

なぜ、石戸氏は数々の企業でデジタルマーケティングを歴任したのち、歴史ある事業会社であるパイオニアを選んだのか。理由のひとつに、石戸氏はテクノロジー業界にある課題について挙げた。

石戸氏によると、近年市場で競争を繰り広げるマーケティングテクノロジーは増え続け、その数は8000を超えたといわれる。市場では様々な企業が買収・統合を繰り返しながら成長を続け、特にデータ領域のテクノロジーは増加が顕著だという。これを石戸氏は「テクノロジーはやや飽和状態に陥っている」と指摘する。

そして、市場の成長とともに企業の規模も成長。Google、Salesforceもそれぞれ1000人以上採用すると公式に発表されており、また日本のスタートアップも次々に資金調達を成功させ、人材と資金がテクノロジー業界に集まりつつあるのだ。こうした状況について、石戸氏は次のように指摘する。

「マーケティングテクノロジーはやや飽和状態になっているなかで、テクノロジーの変化・進化が早すぎて、ツールやデータの分断が生まれているほか、本来の目的達成の前に、ツールを使うことが目的化している。そもそもユーザー企業(=事業会社)がツールを使いこなせないという状況も散見するようになってきた。やや人材の偏りも生まれている」(石戸氏)。

テクノロジー企業は、本来は事業会社の営業、IT、マーケティングなどの様々な業務や事業そのものを支援するツールを生み出している。しかし、ツールの多様化、高度化は、それを使う事業会社にとって様々な弊害を生み出しているとも言える。こうしたなか、「事業会社とテクノロジー企業の橋渡しができる仕事ができないか」という考えで、石戸氏はパイオニアを新たなフィールドに選んだのだそうだ。

石戸氏がパイオニアに注目したもうひとつの理由は、モビリティ市場の急速な変化だ。電気自動車は加速度的に普及し、自動運転技術も進化。そして自動車産業のメッカである欧州では、多くのスタートアップがモビリティ市場に参入し、無数のモビリティサービスが誕生している。懸念されるのは、テクノロジー業界と同じように様々なサービスが乱立することによる市場のサイロ化だ。

こうした市場の動きに対して、石戸氏は「先進的なテクノロジー企業やスタートアップが発展するのは素晴らしい。しかし一方で日本の老舗企業が持つアセットをよく見れば、そこに日本経済が元気になる資産があるのではないか」と考えたという。成長するモビリティ市場に対して本気で変革を志す企業、それがパイオニアだったのだ。

デジタル地図とデータを組み合わせ、事故のない未来を創る

2019年10月にカンパニー制を導入し、モビリティサービスカンパニーのCEOには楽天出身の相木孝仁氏が就任。2020年にもスクエアエニックスやすかいらーくホールディングス出身の役員が誕生し、経営体制の一新と組織を強化しているパイオニア。その歴史は古く、「福音商会電機製作所」として1938年に創業して以来、今では当たり前になっているGPS搭載カーナビをはじめ、Wi-Fiスポットとなるカーナビ、Amazon Alexa搭載ディスプレイオーディオなど数々の世界初・国内初を生み出してきたという。

そのパイオニアは、モビリティサービスの領域でどのようなイノベーションに挑戦しているのか。石戸氏はその一例として、「先進運転支援システム(Intelligent Pilot)」を紹介した。

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この先進運転支援システムは、グループ会社であるインクリメントP社が開発しているデジタル地図データに、長年蓄積してきた危険地点(ヒヤリ・ハット地点)のデータ、気象データ、過去の事故発生状況、運転者の運転傾向など様々なデータを統合して、運転中の危険運転や事故のリスクをリアルタイムに予測。運転中のドライバーに必要なタイミングで注意喚起や警告を行うというものだ。

この車両情報を活用したテレマティクスサービスのデータを集積、分析するデータ基盤や関連技術の開発で、パイオニアはトレジャーデータと協業。2019年にはAIを活用したデータ分析とドライバーの行動予測や事故リスクの予測モデルを共同開発することを発表している。

「データを使ったフリートマネジメント(車両管理)によって、これまで解決できなかった領域に対して、データ基盤を活用した課題解決に挑んでいる」(石戸氏)。

特に、このパイオニアの取り組みでキーとなるのが、「プローブデータ」と呼ばれるものだ。この「プローブデータ」は、カーナビに設定された目的地、車両の走行経路、車種データ、加速・減速データ、事故多発地点、地図データ、気象、交通情報、車内画像など、車両運行に関わる様々なデータを指し、機器の操作ログやGPSによる位置情報データ、環境データをもとに様々な指標を生み出している。

例えば、NTTアドと共同で行った調査では、GPSデータとドライブレコーダーの映像データを組み合わせて、訪日外国人観光客の運転傾向や危険運転の発生場所を分析。どのような場所で、いつ、何回、どのような危険運転が発生しているかを細かく検証することができたという。

「ウィズコロナの時代には鉄道や飛行機での旅行が減り、自動車での旅が増える可能性がある。そうした時代に、プローブデータを分析したことによる知見が、安全・安心なドライブを支援するのではないか。また、走行経路データを分析すると運転者の行動分析も可能になり、地域の観光振興などにも役立てられる」(石戸氏)。

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「Data Lake」を活用するには、適切なプロセスが必要だ

最後に石戸氏は、こうしたデータの利活用について注意すべき点として、「Data Lake」(データレイク)というキーワードについて解説した。

「Data Lake」はその名の通り「データの湖」。様々なデータを蓄積する基盤を意味する。石戸氏はこれについて水力発電を引き合いに出し、「社内のデータ活用への関心の高まりは良いが、進め方を間違えたら危ない」と指摘した。

つまりどういうことか。水力発電は、ダム湖に水を貯めて、下流でその水を様々な用途に用いる。湖からダムを通して川に流し、下流の人々が利用できるようにするためには、ただ湖の水を流すだけではなく、そこには水を有効利用するために様々な重要なステップが用意されている。

この水をデータに置き換えると、データの利活用にもそれぞれのステップに応じた適切な対応が重要であることがわかってくる。「データの利活用は水力発電に似ている。それぞれのステップで必要なツールも、求められるスキルセットも異なる。そして、目的によってもデータ活用のアプローチが大きく異なる」(石戸氏)。

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石戸氏によると、パイオニアの社内においてもデータ基盤=Data Lakeを構築するにあたって、「自分たちの強みはなにか」「どんな顧客が何を求めているか」「自分たちの価値は何なのか」を整理する作業に十分な時間をかけているという。重要なのは、強みを研ぎ澄ませてユーザーベネフィットを明確化した上で、社内でビジョンや目標、市場理解、使えるチャネルやデータ、提供できる価値といった、共通認識、共通言語を浸透させるようにしているのだそうだ。

「ビッグデータがあれば何でもできると思いがちだが、データ連携にも多くのステップが必要になる。改めてデータの種類や特徴の整理をするべきだ。デジタルだけでなく、カー用品店などリアルの販売チャネルとどのように連携していくかを考えることも重要だ」(石戸氏)。

石戸氏によると、パイオニアのモビリティサービス戦略で重要な役割を果たすプローブデータの活用にあたっては、様々な企業とのコラボレーションを模索しているという。石戸氏は最後に、「コロナの影響で移動の考え方が確実に変化している。ウィズコロナの世界では、パイオニアがさらに顧客を感動させるような製品・サービスを提供していきたい。パイオニアには膨大なプローブデータがあり、これからもより多くのデータが集まる。このプローブデータを活用したビジネスの創出に、是非多くの企業にも参加いただきたい」と呼びかけた。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
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