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VR内見、VRトラベルのデータ分析を最適化し、新たなユーザー体験創出へ|ナーブ株式会社

CASE STUDY|ナーブ株式会社 エンジニア 田村 兵庫氏

ビジネスへのVR活用が進む中、VRコンテンツプラットフォームを開発し、不動産業界や観光業界に革新をもたらそうとしているのがナーブ株式会社(以下、ナーブ)です。順調に顧客数を伸ばす中、既存システムではデータの遅延や停止の懸念があると判断し、Arm Treasure Data eCDPを採用し、データ収集と分析をさらに加速しています。VRを通じて収集した膨大なデータはどのような価値を生み出し、今後同社は何を目指していくのでしょうか。PLAZMA 一橋にて同社のエンジニア 田村兵庫氏が行った講演からその詳細を明らかにしていきます。

物件や旅行先をVR体験できるサービスを展開

2015年10月に創業したナーブは、企業向けVRコンテンツの配信プラットフォームを開発、提供する企業だ。「VR Cloud」と呼ばれる同プラットフォームは、不動産業界では「VR内見」というサービスで、観光業界では「VRトラベル」というサービスで活用されている。同社はこれらのサービスに向けたVR端末「CREWL(クルール)」の開発も手がけているほか、サイネージ型の筐体「どこでもストア」をショッピングモールや旅行代理店に設置し、エンドユーザーがその場で遠隔の物件や旅行先をVR体験できるといったサービスも展開している。

VR内見について、ナーブでエンジニアを務める田村氏は、「不動産業界では、内見に時間がかかることが課題でしたが、VR内見があれば事前にかなりの情報が把握できます。すでにVR内見で興味のある物件を絞り込めるため、成約率が上がるほか、VR内見のみで決めてしまう人もいるため、各店舗で大幅な時間削減に結びついています」と説明する。

一方のVRトラベルは、「特に飛行機の座席アップグレードに役立っています」と田村氏は説明する。例えば、座席のアップグレードで座席間が5センチ広がるといっても、ほとんどの人は数字だけでは感覚がつかみにくい。しかし、VRコンテンツにて座席の幅を体感してもらうことでアップグレードを促すことができるのだという。実際にその効果は大きく、「これによって過去最高の売上を達成したケースもあります」と田村氏は説明する。

ナーブのVRソリューションは、大東建託、旭化成レジデンス、セキスイハイム不動産などの名だたる不動産関連企業が採用している。またVRトラベルも同様に、日本航空、H.I.S.、JTBなど、すでに数多くの企業が導入している。

増加するコンテンツにデータ基盤が追いついていなかった

ナーブがArm Treasure Data eCDPを導入したのは2018年末のことだ。その背景として田村氏は、「コンテンツ数や利用店舗数が昨年から急上昇してきた一方で、データ収集や分析が追いついていませんでした」と明かす。

VR内見とVRトラベル、そしてVR端末のCREWLから送られてくる情報は、すべてVR Cloudのデータベース内に登録されている。一方、同社の営業担当者が各顧客のデータ分析やKPI設定のために利用していたのは、オープンソースダッシュボードツールの「re:dash」だ。これを同社では「Nurve BI」として運用していた。

一般的にBIツールは、本番のデータベースから完全に切り離し、BI専用のデータベースが存在するものだが、ナーブではVR Cloudのデータベースを直接re:dashで読み込んでいたという。その理由について田村氏は、「どのような分析をすればいいのかまだあまりわかっていない状況で、『VR Cloud上のこのデータが欲しい』といった要望がどんどん膨らんでいきました。その中で、Nurve BIのデータベースを分離するのは困難でした」と語る。

また、re:dashではアカウントの権限管理が可能なため、導入先の企業にアカウントを発行し、各社がデータ分析できるようにしている。これまで特に問題は発生していないが、導入企業が増え各社が一斉にクエリをたたくとアクセスが集中しかねない。

「re:dashには、ダッシュボードツールの中にクエリの結果をキャッシュする機能が存在します。ただし、何度もクエリが連打されるとキャッシュが効かなくなり、アクセスが集中してしまいます。アクセスが集中すると、クエリが原因となって本番システムに遅延が発生する恐れがあり、最悪のケースだとデータベースにアクセスできず本番データが停止することも考えられるのです」(田村氏)

こうした懸念点を払拭するために導入したのがArm Treasure Data eCDPだった。

BI用のクエリの多くが約3分の2の時間に短縮

Arm Treasure Data eCDPの導入に伴い、Nurve BIは廃止予定。VR Cloud内のデータもすべて一括してArm Treasure Data eCDP内に入れ、そこからクラウドでre:dashを動かし、ナーブの営業担当者や顧客企業がデータを参照できるようにする想定だ。

導入後、社内エンジニアからはすぐに喜びの声が上がった。これまでのNurve BIではデータが返ってこなかったような長いクエリでも、Arm Treasure Data eCDPを導入するとすぐ返ってくるようになったという。ほかにも「BI用のクエリの多くは速度がこれまでの約3分の2程度になりました。クエリが早くなると、さまざまなBI用のクエリを作り試すこともできます」と田村氏は話す。

また、これまで収集できていなかったVR端末CREWLからの詳細データも入手できるようになったという。「これまでデータが取れていたのは、VR CloudのAPIにアクセスしていた部分のみ。それが、CREWLで何を見たのか、視点の移動はどの程度あったのかといったようなデータも入手できるようになりました」と田村氏は話す。

機械学習によるさらなるサービス拡充も視野に

ナーブでは、蓄積したデータを他と連携させることでさまざまな未来を描いている。

例えば、同社の提供するVRコンテンツにパノラマ画像を埋め込む機能について、「マーケティングオートメーションを提供するマルケトと連携すれば、パノラマ画像の効果を客観的に評価できるようになるのではないか」(田村氏)と考えているという。

また、ナーブでは売上管理にSalesforceを活用しているが、「売上とVR Cloudの使用頻度の関連性を分析したり、特定の使い方をする企業は他にも追加投資する傾向があるといったようなデータを解析したりしていきたい」としている。

さらにナーブでは、サイバー・コミュニケーションズと共同で、VRコンテンツ内に動画広告を配信するVR動画広告プラットフォーム「VRトラベルAd」を開発し、提供開始している。なお、この分野のデータもArm Treasure Data eCDPを活用して解析する意向だ。

「これまでの画像広告や動画広告は、閲覧回数やその後クリックにつながったかどうかといった数値しか取れていませんでした。しかし、VR空間上に出る広告であれば、ユーザーがどこを見ているのか、視点の動かし方や細かく見た部分など、新たな情報が取得できると考えています。こうしたデータをうまく解析していきたい」(田村氏)

この分野で活用できるのが、Arm Treasure Data eCDPの機械学習ライブラリ「Hivemall」だ。「機械学習には、PythonやR、Scala、Javaといった言語が必要ですが、ナーブにはRuby on RailsやC#をメインに扱うエンジニアが多く、機械学習のために新たな言語を学ぶとなると学習コストがかかってしまいます。それがHivemallだと、SQLのみで機械学習ができるので、機械学習の導入コストが抑えられます」と田村氏は言う。

広告コンテンツ以外にも、機械学習を導入することでサービスの幅は広がる。「例えば、水まわりの撮影点数が多いと物件の成約率が上がるといった具合に、どのようなVRコンテンツがあれば成約率が上がるかといった情報も把握できるようになります」と田村氏。また、エンドユーザー自身でコンテンツを選ぶどこでもストアの場合だと、「過去に閲覧したコンテンツから次のコンテンツをお薦めするといったことも実現させたい」と田村氏は述べ、レコメンド機能の採用も視野に入れていることを明かした。

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