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オウンドのその先へ。キリンの「新・データ戦略」|キリンホールディングス株式会社

CASE STUDY|
キリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティグ本部 鈴木 章吾氏

キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンなどの事業会社を抱えるキリンホールディングス株式会社(以下、キリンホールディングス)。2014年からデジタル専門組織を立ち上げ、キリンDMPを軸に新しい戦略のもとデータ活用を加速させています。2019年に開催された「Treasure Data PLAZMA 2019 KANDA」にて、同社デジタルマーケティグ本部 鈴木章吾氏が、同社が抱えていた課題と、新たに掲げる「新・データ戦略」を解説しました。

2019年からデジタル活用を前提とした組織強化

「よろこびがつなぐ世界へ」をコーポレートスローガンに、ビール・スピリッツ・飲料、医薬・バイオケミカル、海外飲料などの事業を展開するキリングループ。従業員数は3万464人、連結売上高は1兆9305億円で、キリンホールディングス傘下にキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンなどの事業会社を抱える。デジタルマーケティング部は、経営企画部やR&D本部、人事総務部、経理部などと並列し、各事業会社の取り組みを支える存在だ。

2014年にデジタル専門組織を立ち上げ、基盤整備と試行錯誤を続けてきた。基盤整備フェーズでは、デジタルの可能性を探索するところから始まり、オウンドメディアの運用や自社EC「Drinx(ドリンクス)」(https://drinx.kirin.co.jp/)の立ち上げ、キリンDMPの構築を行った。また、試行錯誤フェーズでは、デジタルプラットフォームの強化や事業会社のデジタル業務支援を実施。2019年からは組織的なデジタル活用を目的として、機能強化を図っている。

デジタルマーケティング部は、食領域グループ(酒類・飲料)、オウンドメディアグループ、健康領域グループ、デジタルプラットフォームグループという事業や領域ごとに編成される。「デジタルマーケティング部のミッションは、お客様のインサイトを深く理解し、食と健康の領域において、デジタルによりお客様との接点を最適化すること。その結果として事業の収益に直接的に貢献することです」と鈴木氏は説明する。

キリンにおける様々なデジタルタッチポイント

食領域グループの主な取り組みとしてはデジタルR&Dやデジタルシフトの推進がある。また、オウンドメディアグループではオウンドメディア運営や企業ブランドの浸透を、健康領域グループでは新規・健康事業のオンライン売上拡大を、デジタルプラットフォームグループでは、データ活用、オペレーション業務集約、IT・インフラ管理、セキュリティ対策をそれぞれ主なミッションとして推進している。

主なオウンドコンテンツとして、会員プログラムである「My KIRIN」、メールでのコミュニケーションでは「キリン・メルシャン NEWS」などがある。

また、EC・ダイレクトチャネルとしては、直営オンラインショップのDrinxや生ビールのサブスクリプションサービス「Home Tap(ホームタップ)」(https://hometap.kirin.co.jp/)が、ソーシャルの取り組みとしては、76万超のフォロワーを持つキリンビールやキリンビバレッジのTwitterアカウントや、投稿を通してさまざまな企画を実施している公式noteがある。また、LINEと共同でLINE Payでの支払いが可能な自販機「Tappiness(タピネス)」の展開なども行っている。

壇上の鈴木 章吾氏と満員の会場

Arm Treasure Data CDPをデジタルエクスペリエンスプラットフォームの核に

デジタル施策の中でデータ活用を推進するために取り組んだのがDMPの構築だ。2015年に初代DMPを構築し、スモールスタートで取り組みを拡大してきた。2016年から2017年にかけてArm Treasure Data CDPへの移行を行い、2018年までにオウンデメディアを対象にしたデータ活用の取り組みを本格化。

2019年からは、データ活用の本格フェーズに位置づけ、さまざまな取り組みを行っている。テーマとしては、データ活用の民主化、事業に貢献するためのデータ活用、外部企業やパートナーとの提携・協業、デジタル領域での活用深化などだ。

キリンDMPは、施策実現および効果最大化のための装置だと捉えています。現在は約650万IDを保有しており、このうち約4割がロイヤルないしアクティブなユーザーです。システム構成としては、大きくArm Treasure Data CDPによるプライベートDMP/CDPとSalesforceのMarketing Cloudがあり、これらがデジタルエクスペリエンスプラットフォームの核となる存在です(鈴木氏)

オウンドメディアやキャンペーン、リアルな接点などから収集した自社データをArm Treasure Data CDPとMarketing Cloudでデータ統合・コミュニケーション設計を行う。外部のパブリックDMPなどのセカンド/サードパーティデータを活用しながら、広告・CRMコミュニケーションを行い、その結果を検証して、改善サイクルを回していく。

ただ現状は大半がデジタル行動データでありお客様との真の接点を捉えられていません。お客様との真の接点をデータで捉えてお客様や事業に対して直接的に貢献するにはどうすればいいか。そこで取り組んだのがデータ活用における新たなチャレンジです(鈴木氏)

IDベースでの継続的なコミュニケーションが可能に

これまではオウンドメディアなどの「デジタル接点をつないで」統合コミュニケーションを実施していた。しかし、この考えを改め、「購買(買う)、飲用(飲む)、リアル(参加する)を加えたコミュニケーションデザインとすることで、顧客や事業への直接的な貢献を目指す戦略とした。

また、キリンDMPのリニューアルを行い、データソースにデジタルデータだけでなく、リアル購買データ、意識データ、リアル接点などの項目を加えた。さらに、ウイスキー・クラフト・ノンアルなどの強化カテゴリーのフラグを新設し、購買・飲用・リアルの各接点を個人別にフラグ化した。

これにより、例えばクラフトビールのコミュニケーションでは、新設したクラフトフラグを活用して、号外メールを新創刊。通常メールと比較して開封率3倍、クリック率2倍の成果を出した。「クラフトユーザーとして初めてIDベースでの継続コミュニケーションが可能になったのです」と鈴木氏は話す。

また、イベント「カンパイ展」(http://kanpai.kirin.co.jp/)では、予約やID登録が不要であるため参加者の属性が把握しにくく、態度変容に寄り添う仕掛けがないことが課題だった。そうした中、リアルイベントによる態度変容を捉えた外部EC購買への転換スキームのPoCを実施するといった取り組みを続けている。

このほかにも、キリンシティスタンプラリー施策においてIDベースで自動プッシュ配信することでキリンシティへの継続的な来訪を促進した事例や、ワイナリー来訪価値向上の取り組みとして、顧客ごとのカルテを用意してワイナリー訪問をより特別な体験として提供する取り組みを行ってきた。

濃い体験の大量生産はできません。しかし、多数存在するお客様との接点をデジタルによって濃くすることはできます。新・データ戦略で目指しているのは、お客様への価値提供と、売り上げ・利益への貢献です。デジタル投資のROIを本気で高めていきます(鈴木氏)

最後に鈴木氏は、今後のデジタル強化の方向性として「デジタル接点の多さを生かして顧客のインサイトを深く理解することで濃い体験の創出、それを実現するソリューションやサービスの開発につなげていきます」と話し、講演を締めくくった。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
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