事例記事

目的を明確にし、シンプルにデータを活用して高速PDCAを回す –コインチェックのデータ活用|コインチェック株式会社

CASE STUDY
コインチェック株式会社 マーケティング部
マネックスグループ株式会社 経営戦略室
岡田 尚悟 氏

少人数で創業し、事業が急成長したベンチャー企業にとって、ビジネスの成功は喜ばしいことである一方、組織作りや社内のワークフローが十分に成熟しないまま組織の規模が急拡大したことによって生じる様々な課題に頭を痛めることも少なくありません。こうした課題を解決していく手段として活用できるのが、ビジネスによって生み出されるデータです。実際、ベンチャー企業は急成長するビジネスをさらに勢いづけるために、データをどのように活用しているのでしょうか。コインチェック株式会社マーケティング部 兼 マネックスグループ株式会社 経営戦略室の岡田尚悟氏が、「マーケター全員がデータ分析できる組織の強みとは」と題した講演で同社の取り組みを紹介しました。

急拡大した組織が直面した、“データが活用できない”という課題

2014年8月に創業し、2018年4月にマネックスグループ傘下に入ったコインチェック。仮想通貨取引所「Coincheck」は現在200万人の会員が利用しているという。仮想通貨への注目の高まりとともに事業が急成長し、組織も拡大。現在社員数は168名(2019年3月末時点)になる。岡田氏は、同社のデータ基盤として「Treasure Data CDP」を導入した背景として、創業5年で急成長した同社が抱えていた課題を3点挙げた。

ひとつめは、創業時からエンジニア中心にビジネスを構築してきたが故に、組織の拡大とともに非エンジニア職が増加しても、マーケターなどが主体的にデータを参照できる環境が整っていなかったという点だ。そのため、マーケターなどはタイムリーなデータ活用ができない環境が続いていたのだという。

これと関連したもうひとつの課題は、データ分析用のデータ基盤が用意できていなかったという点だ。データを参照しようとした場合には直接それぞれのデータベースにリクエストを送信する必要があり、サービスの安定稼働に影響することを避けるため気軽に分析作業できない状況だったという。加えて、組織の拡大とマネックスグループへの参画に伴いデータ取得のリクエストも増加し、エンジニアへの負荷も高まった。

フェーズ・組織の変化により「データの民主化」が求められるようになった

こうした状況を「データを集めない、まとめない、把握しないという状態だった。最も重要なデータベースのデータがマーケティングやモバイルのチームに行き渡らない環境だった」と岡田氏は表現。実際、マーケティング部門では、広告の効果測定がインストールのコンバージョンまでしか把握できず、実際広告経由で会員になった人がどのような取引をしたかなどの行動履歴をもとにした利用促進のマーケティングはできなかったのだという。またモバイル部門もアプリのログデータを取引履歴に紐づけて分析できず、ユーザーインサイトの深い分析ができなかったのだそうだ。

こうした不自由なデータ環境を改善すべく、コインチェックでは「Treasure Data CDP」の導入。Treasure Data CDPをデータ基盤の中核に据え、広告データ、行動履歴データ、事業のデータベースを集約して、社内のレポート、広告の最適化、各部門へのデータ供給、BIツールによるアドホック分析に活用できるようにしたという。「Treasure Data CDPを導入したことにより、各部門に適切にデータが行き渡るようになったことが大きい」と岡田氏はその効果を挙げる。

特に社内で好評なのは、スプレッドシート自動出力機能なのだそうで、岡田氏は「スプレッドシートは皆が見慣れているため主体的な分析が各自で行われる。そのため各部門で自発的にデータ分析をしてPDCAを回す。データ活用の結果が出しやすい」と評した。

「Treasure Data CDPの導入によって、データを集約して各部門に行き渡らせて活用し、会員獲得と利益拡大に活用することができるようになった。今後は、データを用いたプロダクトの開発・改善を推進することで、他社に対して差別化をはかっていきたい」(岡田氏)。

データ活用は“シンプルイズベスト”、手段を目的化してはいけない

岡田氏は、マーケティング領域におけるデータ活用について「プロダクトに即したターゲティングと、適切な集客チャネルの選択と集中しか行っていない。データを用いて顧客を分析してどのような人が有力な見込み顧客なのかを分析することに尽きる」と語る。つまり、シンプルに重要なテーマに集中してデータ活用を推進しているのだ。その結果、2019年6月時点で会員獲得数は昨年11月と比較して5倍に増加、アプリのダウンロード数は国内の仮想通貨取引アプリにおいて1位を獲得したのだという。
また最新の発表において、2019年度アプリダウンロード数NO.1を公表しており、成果が継続していることが伺える。

プロダクトに即したターゲッティングと適切な集客チャネルへの選択と集中の結果

例えば、アプリの会員獲得をしようとしたとき。多くの企業は、まず使えるチャネルは何でも使い、ターゲティング対象となるユーザーも広く設定し、広範囲に広告を展開することでコンバージョンを積み重ね、成果の高いチャネルを見つけ出そうと考えがちだ。しかし岡田氏の視点は、会員を獲得したあとに実際にサービスを活用してくれることも見据えて、有望な見込み顧客の属性をデータ分析によって絞り込み、適切なチャネルにピンポイントにターゲティング広告を仕掛けている。つまり、データを活用してコインチェックとユーザーの“出会いの必然性”を生み出そうとしているのだ。

岡田氏は、こうした自社の成功事例を踏まえて、Treasure Data CDPを中心としたデータ基盤活用のポイントを次のように挙げている。

  • データはあくまでもトップラインを最大化させるための手段であり目的化しないこと
  • データはシンプルイズベストであること
  • データ分析そのものに夢中になりすぎないこと
  • データの先にいる顧客を常に念頭に置き、データの意味を考えること
  • マーケティングに必要なのは結果の再現性。「なぜこうなったのか」をしっかり考えること。
  • 現場の社員であっても常にPL視点、長期視点で考えること

「データは目的ではなく手段」と語る岡田氏は、データの価値について、人、モノ、カネ、情報、時間、知的財産といった企業のリソースをどこに配分するかを考える手段であり、またビジネスを展開する中で生じる様々な異常値を早期発見手段であり、施策の高速PDCAを推進するための手段であると指摘。そして、データを用いた論理的な説明によって、各部署を巻き込んだ施策の円滑な推進が可能になるとした。

「ひとつの中核サービスでビジネスを展開しているので、何をやるにしても他の部署の協力なしにはできない。人に動いてもらうためには、理由と期待できる効果をデータを用いて説明することが大事だ」と岡田氏。ちなみに、こうしたデータの価値は、個人の仕事にも生きているのだそうで、人の主観が入りやすい部分をデータによって考えることができるようになったという。「成果を生み出すための仕事に集中的に自分のリソースを使い、利益を生み出そうという意識を持つようになった」と岡田氏は語る。データを活用することで、マーケター自身がデータドリブンで行動できるようになったのだ。

マーケターは、会社の利益に責任を負わなければならない

最後に岡田氏は、マーケター全員がデータドリブンの姿勢になるとどうなるのかについて語った。岡田氏は「マーケターは広告を回すだけでなく、会社の利益が伸びることに責任を負わなければならない」と語り、広告コンバージョンなど目先のKPIを追うだけではなく、その先で企業の業績にインパクトを与えられるマーケティングをデータに基づいて考えていくことが重要だと指摘した。「マーケター全員が分析視点を持てば、顧客ニーズ=事業へのインパクトに沿った施策を提案でき、しっかりと人を巻き込んで施策を推進することが可能になり、スピーディにPDCAを回せるようになる。その結果、トップラインが上がるのではないか」(岡田氏)。

ちなみに、岡田氏は文系出身の非エンジニアだが、「マーケターがトップラインを向上させるために必要なデータ分析のスキルを身につけることは難しくない」と語る。(岡田氏は個人ブログにて、SQLの基礎知識などを公開している。)重要なのはスキルよりもデータを活用する目的を明確にすることだと指摘して、次のように締めくくった。

「なぜデータが必要なのかを自分が納得感をもって理解しなければ、周囲を説得できず、また実際に分析業務をしても何を分析したいのかわからなくなり成果を生み出せないのではないか。重要なことは、まずなぜ今の会社や業務にデータが必要なのかをしっかり理解することだ」(岡田氏)。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
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