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負担が増加する顧客サポート業務、データを活用してどう改善すべきか|株式会社ビービット|株式会社フェリシモ

CASE STUDY & LIGHTNING TALK|
株式会社ビービット 代表取締役 遠藤 直紀氏
株式会社フェリシモ 定期便MC統括グループ 部長 兼 マーケティングコントロールセンター センター長 兼カスタマー・マネジメントグループグループ長 橋本 和也氏

パソコンやスマートフォンを使い誰もが時間や場所を問わず気軽にネットショッピングやデジタルサービスの利用ができる現在、サービスを提供する企業にとって大きな課題となっているのが、顧客に対するユーザサポートです。

特に、コールセンターを設置している企業では24時間365日寄せられる問合せに対応できる体制が求められ、そのコスト決して小さくありません。一方、ユーザサポートは顧客と直接接点を持つことができる貴重な窓口であり、そこでの対応がブランドへの好感度や顧客満足度に直結する重要な役割を果たします。

こうした環境において、企業はテクノロジを活用してどのように顧客対応を効率化し、さらに顧客が満足するユーザ体験を生み出していけばいいのでしょうか。「顧客対応業務の課題を解決するUSERGRAM」と題した講演において、株式会社ビービット代表取締役の遠藤直紀氏が紹介しました。

コールセンターにおける悪循環、顧客視点で改善を

講演の前半では、企業が顧客対応窓口の課題を改善するために必要な視点やプロセスについて紹介した。

創業以来、UXデザインコンサルティングを手掛けてきたビービットが開発したUSERGRAMは、オンライン・オフラインを統合したデータに基づき様々な条件に合わせて顧客行動を可視化することができるとSaasサービスで、日々の運用の中でユーザ体験をダイナミックに最適化することを支援するものだ。2017年のリリース以来、幅広い業種で250社以上が利用しているのだという。5月にはトレジャーデータとの提携を発表し、Arm Treasure Data eCDPの計測タグをそのままUSERGRAMに使用できたり、蓄積されているデータをUSERGRAMに取り込めるようになった。

遠藤氏が語ったのは、このソフトウェアが必要とされる顧客対応業務が抱える様々な課題だ。

企業サイドに立つと、コールセンターの人材不足は慢性的に続いており、労働人材の減少から人件費コストも上昇しているのが現状で、コールセンターの業務効率化は経営に直結する急務と言える状況だ。加えて、これまでは、コストだけが集計され、収益は集計されない、つまりコストセンターだと言われてきたコールセンターは、顧客と向き合う窓口である立場を活かしてビジネスへの貢献が求められている。

「顧客の新規獲得が難しくなるなか、顧客とのエンゲージメントを構築して顧客満足度を高め、既存顧客のリテンションレートやライフタイムバリューを上げなければならない。人手不足の中で、より効率よく、より事業に貢献できる形で顧客対応窓口を運用しなければならないという難題を抱えている」(遠藤氏)。

他方、今度は顧客サイドに立つと、何かわからないことがあって商品やサービスのウェブサイトを調べても解決できないことが企業・ブランドへの不満になり、いざコールセンターに電話しても混雑でなかなか繋がらないことで不満が増大する。さらに、電話でいとも簡単に解決できてしまうと、「その程度、ウェブサイトで解決できたのでは」と釈然としない気持ちでさらに不満が増大してしまうのだ。

遠藤氏によると、約70%の消費者はコールセンターに問合せをする前にウェブサイトを調べて自己解決を試みるのだという。しかし、ウェブサイトはわかりづらく、コールセンターは電話が繋がらず、解決しても釈然としないという状況を生み出し、不満やストレスを生み出している現状は、企業にとっても、顧客にとっても、ハッピーな状況だとは言えない。

顧客対応業務をより高い品質で、効率的に提供していくには、コールセンターだけではなくデジタルチャネルもシームレスにつなぎ、顧客の視点で最適化していくことが重要だ。コールセンターとデジタルチャネルが連携して、より良いユーザ体験を構築しなければならない(遠藤氏)。
顧客対応業務が抱えている課題

顧客対応業務の改善、必要なのは顧客タッチポイントの全体最適

では、具体的にどのように顧客対応業務、コールセンターの負担を改善していくのが良いのだろうか。遠藤氏は「顧客体験全体を行動データでとらえることで、課題把握、施策の改善、効果検証のPDCAを回せるようにすべきだ」と語り、その成功に向けたポイントを3点挙げた。

一点目は、「部分最適から脱却し、顧客窓口のチャネル全体を捉えて考えていく」というものだ。「FAQを充実させただけでは、コールセンターの負担は減らない」と遠藤氏は語る。顧客対応業務の改善をコールセンター部門だけで実施すると、改善できる範囲は限られてしまう。顧客とのタッチポイントを、サービス全体を俯瞰的に考えることができるマーケティング部門がとりまとめながら、コールセンター部門、ウェブサイト運営部門、そして関連する製品部門、システム部門などが連携しながらタッチポイント全体の最適化を目指すべきなのだ。

例えば、クレジットカード会社の場合、ポイントの問い合わせが非常に多いが、顧客はFAQではなくカード発行キャンペーンのページを見ていて、わからなくなる場合が多い。そのような顧客行動を理解して改善できればいいが、コールセンター部門で改善できるウェブ施策がFAQしかないという場合も多い。(遠藤氏)

二点目は、「顧客視点の改善」だ。コールセンターの負担を軽減したいと考えたとき、企業視点で考えるととにかくコールセンター全体の問い合わせ件数を減らそうと考えてしまいがちだ。しかし、コールセンターに来る問い合わせの中には、電話でなければ対応できないもの、電話で対応したほうが顧客満足につながるものも存在する。その見極めを顧客視点で考えなければならない。

例えば、購入直前に商品について確認したいことがある場合などは、ウェブで自己解決させるべきではない。コールセンターの対応で購入への迷いや不安を払拭して背中を押すことができる。顧客視点で考え、どこは自己解決できる、どこはコールセンターで対応する必要があるという最適化を顧客目線ですべきだ(遠藤氏)。

そして三点目が「データ統合によるPDCA基盤の構築」というものだ。ウェブサイトの行動履歴とコールセンターの対応履歴どちらかだけを見るのではなく、コールセンターに来る前にウェブサイトでどのような行動をしたのか、コールセンターで対応した顧客がどのようなアクションをしたのかといった、コールセンター対応の前後の文脈を理解することが、ユーザ体験の改善に繋がるのだ。ただ、遠藤氏によると「ウェブサイトのデータとコールセンターのデータを統合的に分析しているケースはほとんど見られない」のだという。

課題解決に向けて
デジタルを活用して顧客の自己解決を促進すると、顧客満足の創出になる。自己解決が拡大すると、コールセンターの負荷が軽減し、必要な入電への対応に集中したり、付加価値創出のためのアウトバウンドの対応ができるようになる。顧客視点で最適なユーザ体験を作り出し、事業の成長に貢献していこうというのがマーケティング視点で考えていくべきことではないか(遠藤氏)。
株式会社ビービット 遠藤 直紀氏登壇模様

データドリブンを推進するための2つのポイント

データドリブンによるユーザ体験の最適化。言葉で言うことは簡単だが、遠藤氏はデータ統合による顧客対応業務の改善を成功させるためには、ふたつの視点が重要だと説明する。

ひとつは、「数値だけでは改善サイクルは実現しない」というものだ。データドリブンというと、施策によって生まれた数字を見てものごとを判断するものだと考える人もいるかもしれないが、それはデータドリブンのひとつの側面にすぎない。結果のデータは見るが、その背後にある「なぜ成果が出たのか、出なかったのか」というところにまで踏み込んで分析していないのだ。

結果データを踏まえて次の施策改善を検討する際に、そこでデータドリブンになりきれていない。例えば、コンビニは参考になるのではないか。POSデータによって売上は細かく分析できるが、だからといって“ある日突然鮭のおにぎりが売れたから、次の日も大量に用意しよう”とはならない。結果だけではなく、売れた商品の背景にある顧客の状況、購買行動のプロセスを理解した上で次の施策を考えていく(遠藤氏)。

デジタルマーケティングでは、Googleアナリティクスなどのツールが生み出す結果データは見ているが、その結果に至ったプロセスまでにはあまり目を向けていないケースもある。結果データを起点に、顧客の行動、顧客の状況を深堀していく視点が重要なのだ。

もうひとつの視点が、「すべての顧客対応を一気に改善することはできない」というものだ。

改善施策を推進する際には、ウェブサイトを活用することで顧客対応が改善できる具体的なテーマを決め、その対象となるコールセンターの問合せ顧客を抽出。その対象ユーザの行動を分析してインサイトを理解して、最適な改善施策を考えて実行し、効果を検証するのだ。つまり、改善すべき課題に対してピンポイント対処し、その成功を積み重ねることで顧客対応全体の質を高めていくことが重要なのだ。

顧客対応最適化の基本的な流れ

「USERGRAMはこうした改善プロセスを簡単に回すことができるソフトウェア」と遠藤氏は語る。では、顧客対応業務の改善に取り組んだ企業は、どのような成果を生み出したのか。より具体的な成功事例を紹介する。

コールセンターに電話問合せする契約者の行動を分析し、改善点を探る

まず遠藤氏が紹介したのは、ダイレクト型自動車保険を提供する保険会社の事例だ。

保険商品は契約に至るまでの検討時間が長く、解消したい不明点も多いため店頭窓口を持たないダイレクト型保険の場合は問い合わせ件数が多くなる傾向がある。特にこの企業では、1件の問い合わせあたりの通話時間の長さが課題で、長時間通話によるスタッフの負担や問合せ窓口の混雑解消をしたいというニーズがあったという。

そこで、USERGRAMを活用して通話時間の長い問合せ顧客を抽出。長時間通話にはどのような傾向があるのか、インサイトを分析したのだという。すると、1度目の電話問合せを経てウェブサイトを回遊し、再び電話を掛けてきた2回目の電話が長時間になることが多いという発見があったのだそうだ。

保険は条件によって見積額が大きくことなる。最初の電話でオペレータが作成した見積りをウェブサイトで自分自身で再現しようとしても見積額が変わってしまい、不安になったり憤ったりしてしまう。その結果、次の電話が長時間の答え合わせになってしまう(遠藤氏)。

こうした傾向の顧客が少数派であれば、窓口対応方法の改善など軽微な軌道修正で済ませる場合も考えられる。しかし、同じような顧客がどの程度いるかを分析したところ、年間対応コストが推計1億円を超える規模のボリュームで存在していることがわかり、オペレーションを根本的に改善することにした。

改善事例1:ロングコールを少しでも短縮したい!
コールセンターで見積りを作成したあとに顧客の電話番号を確認して、ショートメールで問合せ時の見積もりを反映させた手続き画面のURLを送付するようにした。加えて、契約手続きに関するFAQを改善したことで再入電率が7割削減、手続の完遂率や顧客満足度の向上につながった(遠藤氏)。

ちなみに、このダイレクト型自動車保険の企業では別の課題もあったという。それは、通話時間は短いが同種の問い合わせが非常に多いケースの改善だ。その問合せ内容とは、「うっかり契約期限が切れた場合に再契約できるのか」というもの。当初は、セルフ解決ができるはずだという考えからウェブサイトのFAQを改善したが、それでも問合せ件数は減少しなかった。

そこで、USERGRAMを活用してユーザインサイトを分析したところ、問合せする電話の前にウェブサイトを見ていないことが判明。運転の直前に契約終了に気付き、とっさに電話してきていたのだ。これでは、ウェブサイトのFAQを改善しても、問合せ件数は減らない。ちなみに、自動車保険は契約がうっかり終了しても一定期間は更新契約が可能だ。

そこで、プッシュ型で情報を提供したほうがよいという判断から、契約終了が近い契約者に対してメールやダイレクトメールなどウェブサイト以外のチャネルで更新契約の呼びかけを行うようにした。その結果、電話の問合せ量が減り、再契約率も高まった。適切なタイミングで適切なコミュニケーションを取ることで業績に貢献できた事例だ(遠藤氏)。

なお、こうした事例を踏まえて、遠藤氏は改善効果の検証について「全体のコール数だけで判断してしまいがちだが、それでは説得力のある効果検証ができない。具体的な施策について対象ユーザユーザの動きにどのような変化があったか、その因果関係で成果を評価すべきだ」と指摘した。

株式会社ビービット 遠藤 直紀氏と株式会社フェリシモ 橋本 和也氏対談模様

講演の最後には、創業以来54年に渡り、ファッションや雑貨など幅広い商品をウェブサイトやカタログで販売している大手通販会社「フェリシモ」の事例が紹介された。株式会社フェリシモで定期便MC統括グループ 部長、マーケティングコントロールセンター センター長、カスタマー・マネジメントグループ グループ長を兼務する橋本和也氏が登壇し、実際の改善事例について具体的なお話を伺った。橋本氏は

コールセンターとのデータ統合なども推進しながら、ロイヤルカスタマーの分析をさらに進めていく。より充実した顧客体験を生み出せれば

と今後に向けた抱負を語り、講演を締めくくった。

USERGRAMとArm Treasure Data eCDPは、以前より両サービスの利用企業から連携に関する要望が多くあったことをうけ、データ連携を開始。もともとはArm Treasure Data eCDPでトラッキングを行っている場合でも、USERGRAMにもタグの設置が必要だったが、この連携によりトラッキングはArm Treasure Data eCDPで行い、そこに蓄積されているデータをUSERGRAMに取り込むことができるようになった。また、すでにArm Treasure Data eCDPに顧客属性情報や店舗データ、購買データ、コールセンターの通話履歴などを蓄積、統合的にデータを管理している場合、自動でUSERGRAM上でそのデータを扱うことができる。(詳しくはプレスリリースへ)

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。クラウド型データマネジメントソリューションを提供しています。日本では2013年から本格的に事業を展開し、デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメションの根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングに導入いただいています。
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