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日用品ECサイト「LOHACO」の購買データがメーカーのマーケティングに与える価値とは?|アスクル株式会社

CASE STUDY|アスクル株式会社
BtoCカンパニー プラットフォーム本部
ビジネスマネジメント&アナリティクス ECマーケティング マネージャー
梶井 健吉氏

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ECサイトは、単なる販売チャネルだけではなく、膨大な顧客の購買・行動データを蓄積して分析することで自社だけでなく、メーカーのマーケティング活動や商品企画を促進する上でも有効に機能します。そこに着目しているのが、BtoC向けの日用品販売サイト「LOHACO」を展開するアスクル株式会社(以下、アスクル)です。同社のBtoCカンパニー プラットフォーム本部 ビジネスマネジメント&アナリティクス ECマーケティング マネージャー梶井健吉氏が、膨大かつ多彩なデータを「Treasure Data CDP」でどう分析・活用しているのか、また、「LOHACO」のデータがもたらすメーカーにおけるマーケティングの効果を語りました。

利用者に「楽」「楽しさ」という価値を提供

注文してから顧客のもとに迅速に商品を届ける「明日来るサービス」を社名の由来とするアスクル。事務用品などのオフィス通販のイメージが強いが、近年では、BtoC向けの日用品通販サイト「LOHACO」も成長を続け、その累計利用者数は600万人以上を誇る。

LOHACOでは、日用品や消耗品を中心に販売しており、その顧客層は30~40代の女性が中心だ。日用品という特性上、1回買って終わりではなく、定期的にサイトに訪問し、まとめ買いを何度も繰り返すという傾向が強く見られるのが同サイトの特徴だという。アスクルにてLOHACOのデータアナリティクスを手掛ける梶井氏は、LOHACOの利用者が期待する価値について次のように説明する。

「LOHACOが重要視する2つのキーワードは『楽』と『楽しさ』です。検索の最適化や配送の工夫といった仕組みの面から『楽』という利便性を提供するとともに、LOHACOでしか売っていない商品との出会いや発見を通じて、新しいライフスタイルの提案としての『楽しさ』を提供します。これらを実現するためには顧客を深く理解する必要があり、そのためにデータ分析・活用は不可欠です」

「データドリブン」の企業ならではのきめ細かなデータ管理

では、LOHACOでは実際にどのようなデータを扱っているのだろうか。そこでは、年齢や性別といった顧客のペルソナの基本となるデータや、何の取引をどの頻度で行ったのかというトランザクションデータはもちろん、問い合わせやレビューのテキストデータといった買い物後の顧客のインサイトを得るデータまで、非常に細かい粒度でデータが管理されている。

梶井氏は「当社ではデータドリブンの文化が浸透しており、商品の仕入れ担当、データアナリスト、経営陣、物流管理、デザイナー、エンジニアなど、あらゆるスタッフがデータを活用しており、事業に関わるメンバーの約8割はBIツールを利用しています。だからこそデータはバラエティに富んだものでなければなりません」と強調する。

また梶井氏は、データの粒度についても「例えば、商品ページには写真が何点あればコンバージョンしやすいのか、商品写真は何枚まで見られたのか、そのうちどれが拡大表示されたのか。また購入商品は検索やレコメンドなど、どの経路でかごに入れたのかといったデータも分析可能です。」と明かした。

資料:商品画像の枚数とCVRの関係1
資料:商品画像の枚数とCVRの関係2

なお、こうしたデータのバラエティや柔軟性を確保するには、商品のマスタを適切に管理する必要がある。それを行うことができるのもLOHACOがモール型のECではなく、マスタ管理が厳格に求められる仕入れ販売の形態をメインとするECだからこそだ。

「扱う商品は5000以上のカテゴライズがあり、例えば『食器用洗剤』という商品では、メーカー、商品名、価格、個数、容量、成分、形状などのさらに細かいスペックデータまで管理する必要があります。しかし、これがあることで、その商品がなぜ手に取られているかを分析し顧客を理解することができるのです」と梶井氏は話す。

仕入先企業を巻き込んでECサイトを改善するユニークな取り組み

アスクルでは、ECサイトによって取得したデータを自社だけでなく、他社を巻き込みながら活用することでさらなるサイト改善に活かそうとしている。その取り組みを象徴するのが、LOHACOのビッグデータを活用してマーケティング手法の研究を行う「LOHACO EC マーケティングラボ」である。

「ラボにはLOHACOに商品を卸していただいている消費財メーカー140数社、約500名の方に参画してもらっています。弊社が使用しているTableauやAdobe Analyticsを開放しているので、各社は自由に自社商品のデータ分析を行うことができます。また定期的に事例発表の場を設け、競合企業がいる前で数字を含めた成果を報告していることもあります。」(梶井氏)

データを開放するのはメーカーとともにLOHACOを作り上げる狙いがある。それによってデータに基づいた仮説を立て、プロモーションや商品開発を手掛け、さらに反応をみるというPDCAサイクルの実践が可能になる。

梶井氏はラボでの研究成果として、実際にあるメーカーが開発した布用消臭剤を例に挙げた。その内容は、一般の店舗で販売しているような、商品名や香りがパッケージを一目見ればわかるような商品と、一見すると何の商品かわからないが、パッケージをおしゃれなデザインに変更して価格を上げた同商品を同時に展開したものだ。

「一般的に、店頭で手にとってもらうためには、商品名や効能がわかりやすくかつ目立つデザインにすることが必要ですが、ECの場合は、それが必ずしも当てはまるとは限りません。暮らしになじむ生活者視点のデザインが重要でないかという仮説のもと、このパッケージで商品を展開したところ、なんと通常版のパッケージよりも11倍も売れたのです。実際に、購入後のレビューからもインテリアになじむ洗練されたデザインが評価されていたことが明らかになりました」(梶井氏)

「連続性のあるデータ」がユーザーの姿を浮き彫りに

データをただ取得するだけで無条件に成果を挙げられるわけではない。その中で、梶井氏はデータに基づいたアクションを価値に転換するためのポイントとして「価値のあるビッグデータ」と「活用につなげられるプレイヤーが介入しているか」の2つが重要であると指摘した。

「ユーザーのライフスタイルを理解するには、『アクティブユーザー数×購買頻度』が重要です。アクティブユーザー数に関しては、直近利用している人がたくさん存在すれば良いと考える場合もありますが、我々は、『連続性のあるデータ』こそが、ユーザーの姿を浮き彫りにすると考えています」と梶井氏。実際に、連続して購入しているかという視点でみると、LOHACOの場合、直近1年間、毎月1回以上購入という条件だけでも10万人を超えるユーザーが存在し、これが分析への強みになっている。

さらに、こうしたデータを価値に転換していくには、もちろんアスクルだけでは限界がある。例えば商品作り側からの知見、マーケットの動向、競合製品などのさまざまな要素への理解が必要になる。それが、梶井氏がもう1つ指摘する「活用につなげられるプレイヤー」であり、具体的には仕入先メーカーとさらに強固に連携することである。

LOHACOのデータでマーケティングをさらに高度化

こうしたメーカーとのタッグを強固にするために、アスクルが新しくローンチしたのが、「LOHACO Insight Dive」である。このサービスは、連携企業サイトの利用者アカウントと「LOHACO」のアカウントを紐づけることで、自社サイトだけでなく、「LOHACO」における行動・購買データを活用できるというものだ。プライバシーの問題が懸念されるが、もちろん顧客に許諾をもらった上での連携だ。

このサービスによってメーカーにとっては、商品開発や市場投入後のプロモーションそれぞれのフェーズで大きな価値を得られる。例えば、前者の商品開発の観点では、従来のリアル店舗のPOSデータやアンケート、インタビューなど、顧客の情報はどうしても断片的になりがちであった。さらにデジタル化による市場の変化が激しい中で、顧客のインサイトをつかむのは困難だ。同様に、商品投入後のプロモーションのフェーズにおいても、施策の効果が見えづらく定量評価が難しいのがこれまでの課題であった。

資料:メーカーのマーケティング活動と課題 商品開発フェーズにおいては顧客の多様化、市場変化の把握が複雑化。また、オフラインでのテスト販売では詳細な検証ができない。市場投入後、プロモーションフェーズでは、自社顧客を理解できるデータがないこと、ブランディングの定量評価が難しいことが課題となる

それに対してLOHACOでは、「多彩なデータに基づく分析も、それによって出てきた仮説に対するアンケートやインタビューもすべて利用者IDベースで行うことができます。また商品投入後においては、ECサイトという商品の売り場を提供することはもちろん、広告の効果測定やLTVまで測れるとし、個別最適化された1to1のコミュニケーションも可能になります」と梶井氏は話し、LOHACOのデータを自社のマーケティングに組み込むメリットを強調した。

なお、アスクルが膨大かつ多彩なデータを、企業間で連携、活用するためのCDPとして利用しているのが「Treasure Data CDP」だ。梶井氏は、

導入企業数が多く、共通のcookieIDが存在し、他社とのデータ連携を容易に行えるという点が決め手になりました。またシンプルに利用できるので、簡単に企業間連携用のワークフローを構築できました。

と話す。

またアスクルでは、共通キー単位の販売、連携データを用いた分析代行、サンプリング・アンケート・インタビュー・ターゲティング広告のサポートも行っている。それを踏まえて梶井氏は最後に、自社ECのためだけでなく「社会最適のためにデータを活用する」という同社の考えを強調し、講演を締めくくった。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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